2003年度優秀卒業制作(SFC AWARD)受賞の卒業生Aさんの論文が剽窃(ひょうせつ)であったことから、受賞を取り消す措置が取られたことが、8月26日(火)、SFCオフィシャルサイト上で発表され、環境情報学部長・熊坂賢次教授の名前で、関係者に対しての謝罪が行われた。サイト上にはAさんの実名とともに、この事実が一年間掲載されることになっている。


 また、同時期に、小熊英二研究会WEBサイト上に掲載されていた03年春学期のAさんのレポートも削除された。
 
 作品が優秀であると評価された人に贈られているはずのSFC AWARD。それが卒業後に取り消されるという最悪の事態に陥ってしまったのはなぜか、どのような経緯で剽窃が明るみに出たのか、環境情報学部長・熊坂賢次教授にお話を伺った。
卒業制作が剽窃であるということが解ったのは、いつごろ、どんな経緯でだったのでしょうか?
 最初に私が今回のことを聞いたのは、6月の末頃です。
 今回、論文を剽窃された人、(以下Bさん)が小熊研のWEBを見、あまりにも自分の論文と似ていて、おかしいと気づいたことが始まりだったようです。その後、卒業制作の担当教員であった濱田先生へも、Bさんから連絡が取られ、それが事務を通じて私のところへ来たというのが経緯でした。
 両方の論文を取り寄せて、学習指導でチェックをした結果、許容範囲を超えるほど似通った部分がかなりあったので、剽窃であると認めるに至りました。
A君自身もその事実を認めています。
その結果、SFCとしてはどのような対応をされたのでしょうか?
 まずBさんを初め、関係者に組織として謝罪しました。また、SFC AWARD取り消し、これはすぐに決まりました。これはWEBにも載せましたし、次号のSFC REVIEWにも載せます。
 また、剽窃の場合にはその学期のすべての単位が剥奪されるというのが本来の決まりですが、卒業取り消しという措置は取っていません。一度卒業させてしまった学生に対して取り消しということはできません。それは慶應の規則でもあり、世の中すべてそういう法則なので仕方がないことです。
 Bさんはその点について甘いのでは、と不満を持っているようです。われわれも心情としてはわかるのですが、これ以上のことは学校はできないです。
とはいえ、WEBで実名を公表するというのはかなり厳しい措置ではと思うのですが?
 それはA君自身も覚悟しているようですし、このくらいは仕方のないことではないかと思います。
卒業制作が受理された時点で、指導教官は剽窃と気づかなかったのですか?
剽窃の元となったBさんの論文は、実はpublicなものではないのです。大学の研究室に提出されただけの論文で、公になっていたり、出版されたりしたようなものとは違います。それで、Bさん本人からの指摘があるまで気づかなかったのでしょう。
卒業制作以外でもSFCでは度々レポートの剽窃が問題になっています。
 今現在、SFC GUIDEに書いてあるようなガイドラインをもっと目立つ形で学生皆に知らせるようなものを作ったほうがいいと思っています。
 引用と剽窃は違います。たとえ公になっていないものであっても、書いた人の文章に対しては最大の敬意を払う必要があります。そのリスペクトを表明するのが、引用という形で、それは長い学問の歴史の中で育ってきたものです。それを知って欲しい。
 
SFCは特に卒論を学内だけですがWEBで公表しています。そのことに対して、もっと覚悟を持って臨んで欲しいですね。
どうもありがとうございました。
※「剽窃」=盗作