マイクロソフトが3月30日(水)に開催した学生向けイベント「The Student Day」の学生向け技術コンテスト「Imagine Cup 2005」ソフトウェアデザイン部門の国内最終予選会で、SFCの大岩研の「あしあと」チームが第3位に入賞した。Imagine Cup はマイクロソフトが主催する全世界の学生を対象とした技術コンテスト。SFC CLIPでは、「あしあと」プロジェクト、プロジェクト・マネージャの武田林太郎さん(政・メ)にメールにてインタビューを行った。


「携帯とGPSを応用したシステム「あしあと」はどのようなソフトウェアでしょうか?
 あしあとは、あなたが現在いるその場所に思い出や発見を書き残し、その場所に誰かが書き残した思い出や発見を見つけてくれる、携帯電話のアプリケーションです。
 例えば、桜木町でたまたま見つけた丸秘夜景スポットを、その場所の周辺を訪れた人だけに教えたい時、"この角をまっすぐ行った丘から見える夜景がきれい"と残します。これが、他の誰かにいつか発見されるかな,という期待感があります。
 また、近所を歩いていたら、携帯電話が振動するので開けてみると、"ここの公園で芸能人の○○さんが犬の散歩しているの発見"といった他人の驚きを共有できます。
 あしあと以外で、場所にメッセージを残す既存のサービスはありますが、それらとあしあとが大きく異なる以下のような点です。
1.ネタが振る感覚
 日常の生活のふとした時に、ちょっぴり楽しいネタが降ってくる感覚があります。携帯電話を持ってさえいれば、移動をすると自動的に携帯電話が振動して新しい他人の思い出や発見を見つけてくれます。いつどこで、発見できるか分からない緊張感がある所があしあとの特徴です。あしあとでは、どこに情報があるのか分かる地図はありません。
2.場所が意味付けされていく
 あしあとでは、人の思い出が場所に残ることで、場所に色々な意味付けがされていくと考えています。湘南平がデートスポットになっていった事がその一例です。見つける情報が、"今このお店の料理が半額"というような商用で、一時的にしか価値のあるものであってはなりません。
3.情報検索システムではない
 あしあとは、何かを探そうという明確な目的意識を持って利用するものではありません。また、場所をナビゲーションするものでもありません。何気なくぶらぶら歩いている時に、楽しみを生んでくれるものですので,検索システムなどと、利用する場面が異なります。
「「あしあと」プロジェクトはどのような経緯でたちあがったのでしょうか?
 あしあとプロジェクトは、2004年秋学期の大岩研究会の1プロジェクトとして発足しました。研究会の場では、各々が欲しいと思っているアプリケーションを出し合って、興味を持った人同士でグループを組みます。グループは3-4人で組になり、それぞれのグループにプロジェクト・マネージャ(PM)として、大学院生や、継続履修者を配置します。
 あしあとプロジェクトのメンバは、以上のような経過から、立案者として渡辺、そのアイデアに賛同した津田、藤原、そしてPMとして武田になりました。
「具体的に、どのようなプロセスを経て「あしあと」が完成したのでしょうか?
 授業がある期間は、研究会の最終発表を目標にして、あしあとの企画、設計、実装を行いました。2月から3月にかけての2ヶ月間は、Imagine Cup用の準備を行いました。具体的には以下のようなスケジュールで進行しました。
[2004年10月-2004年11月]
あしあとの概要、ユースケース、シナリオを作成
[2004年12月-2005年1月]
携帯電話エミュレータ上で動作する、あしあとのプロトタイプを作成
[2005年2月]
Imagine Cupに提出するために、.NETフレームワークを
サーバアプリケーションに適応
[2005月3月]
Imagine Cupのプレゼンテーション資料を作成
「「あしあと」の制作期間はどれくらいでしたか?
 
2004年10月から2005年3月の6ヶ月間です。
「創作の過程で特に苦労した点を教えてください
 企画の段階で一番苦労しました。グループ内での意見をまとめる事、そして、企画内容を他人に説明する事が難しかったです。
「Imagine Cupに参加した理由と経緯を簡単に教えてください
 Microsoftの関係者が大岩研究室の様子を見学する機会があり、その時に、あしあとの企画をImagine Cupに出すように勧められました。
「受賞を知ったときのお気持ちを教えてください
 まず、3月上旬に入賞した時はメールによる連絡もあったせいで、冷静に受け止められました。ほっとした心境でした。3月末の受賞時には、1位から3位のどれかであったため、3位と知った時は、正直なところメンバは落ち込んだ様子でした。ただ、自分達の最大限の結果を出したので満足です。
「「あしあと」プロジェクトの今後の予定と目標を教えてください
 現在、一部のauの携帯電話上でしか動作しません。多くの人に利用してもらえるように、他社の携帯電話上で動作できるようにしたいです。
「ソフトウェアデザインに興味を持つSFCの学生にアドバイスをお願いします
 大岩研究室で私が注意している点は、他人に分かりやすく、シンプルにする事です。
 ソフトウェアの外見、インターフェースの面では、初めてソフトウェアを利用する人が容易に使えるようにするためには、どうすればいいか考えます。ただ見た目を良くするために、かわいいアイコンを付けてしまうと、利用者が困惑する原因になります。アイコンの意味、色の意味、そこに配置する意味をしっかり考えます。
 ソフトウェアの設計の面では、実装者以外の他人が容易に理解できる設計を心がけています。UML(Unified Modeling Language)等で文書化したり、ソースコードにコメントを書くなど、基本的ですが、しっかりと行います。