強みを活かした"住み分け"と"協力"を SFC3大メディア鼎談企画
メディアを運営するSFC生が集まり、これからのSFCにおけるメディアのあり方を議論する鼎談企画「SFCのメディアを考える」が、6月21日にKEIO SFC REVIEW主催で行われた。
登壇者(敬称略)
■ KEIO SFC REVIEW編集長 藤吉賢(環4)
■ SFCnow! 発起人・管理人 土肥梨恵子(総3)
■ SFC CLIP編集長 坂井祥仁(総3)
この鼎談企画では、異なるメディア活動に携わる3人の学生が議論を交わした。
KEIO SFC REVIEW(以下、REVIEW)はSFC公認の広報誌で、1997年に創刊されて以来、年に4回発行されている。制作にあたっては、大学職員や教員の協力のもと、有志の学生が記事を執筆・編集しており、学内外に広く配布されている。17日(木)に最新号となる55号が発刊された。
一方、SFCnow!(以下、now!)は、Facebookグループをプラットフォームとして様々な情報を共有・交換する情報コミュニティだ。2013年2月に、当時1年生だった土肥さんが発案、運営を開始した。SFCの教員や卒業生を含む1200人以上が参加している。講義内ゲストスピーカーや、SFC関連のイベントなどの情報を、参加者ら自身が互いに投稿している。
そして、SFC CLIP(以下、CLIP)は、有志の学生によって運営されている非公認の学生WEBメディアだ。毎週金曜、SFCに関するニュースやコラムを配信している。もともとはジャーナリズムを学ぶ研究会から生まれたプロジェクトで、担当教授の退任後も有志の学生によってサークルとして引き継がれ、今に至る。
頼ってる? 羨ましい? それぞれのメディアの思いとは
3人はまず、それぞれの活動の概要について自己紹介と併せて解説したのち、互いのメディアに対する思いを述べた。 土肥「以前から、情報があまり学生に届いていないのではないか、という問題意識を持っていました。そこで、now!では速さと伝播力を持つFacebookグループのタイムラインを使って、いろいろな情報を流すようにしています。ただ、結局は引用や拡散だけに終わってしまっているので、CLIPやREVIEWのように個人やものごとを深く掘り下げることができないのがnow!の弱みだと感じています」 坂井「やはりnow!でシェアしていただけるとアクセス数が違いますし、その意味ではいつも助けられています。一方で、私達CLIPが1週間単位でプロジェクトを進めているのに対して、REVIEWは3ヶ月じっくりかけて企画から取材、執筆までを行っている。CLIPではなかなか出せない深みとクオリティだと思います」 藤吉「now!の強みは、土肥さんをはじめとする投稿者が、引用するコンテンツに対して『こんな人に読んでもらいたい』といった推薦のコメントを添えて発信していることだと僕は考えます。これからさらにコミュニティとして成長していくと、あの人が推薦している内容だから見てみようかな、なんてことも起きるんじゃないでしょうか。一方、CLIPはREVIEWがやっていることもnow!がやっていることもなんとなくすべてやっていて、なんだか憎いですね(笑) 」SFCの大問題「諦めムード」と「情報の偏在化」
藤吉さんによれば、最近のSFCにはある傾向があるという。CLIPにおいて問題提起型の記事が少なくなったことを指摘しながら、その原因を追求する。 藤吉「SFCの創設から20年以上経った今、SFC全体で、何か問題があっても『僕・私が解決しなくてもいいよね』という妥協の雰囲気が蔓延しているように思うんです。その現状を明らかにした上で、今のSFC生のあり方へ疑問を投げかける、というのが『ジャーナリズムを実践する』という大義を掲げているCLIPの役目なんじゃないでしょうか。これがされていないのはなぜなのでしょうか」 坂井「CLIP内部でのリサーチ能力の低さも、原因の1つのように思います。CLIPに関わる学生のクラスターが偏っていて、なかなか情報がまんべんなく集まらない。その意味では、now!のようなメディアを上手く巻き込みながら活動をしていくのも良いのではないかと考えます」 藤吉「とはいえ、now!もfacebook内でしか展開されていない上、グループに参加していない人には見えないようになっていますから、now!の参加者にも偏りがあるように僕は思います」 土肥「そうですね。私はこれまで、now!の参加希望者についてプロフィールを確認したりメッセージを交換したりしながら、コミュニティを大事に温めてきました。ですから、誰でも参加できるオープンなコミュニティにはしたくないんです。確かに広げたい思いはあるんですが、それは参加希望者と私が互いに思いを理解した上での話です。信頼できる人の実名と共に、確かで有益な情報が飛び交うようなグループであってほしいと思います」SFCnow!のトップページ
藤吉「場の質を高めるため、ある程度偏りが出るような場の設計をされているんですね。ただ、now!にしても、CLIPにしても、アクセス数やSNSで、ユーザというか、自分のメディアを使っている人たちの反応を見ることができていますよね。そういったインタラクティブなメディアであるという意味で、now!やCLIPはとても羨ましいです。REVIEWは紙媒体なので、なかなか読者の姿や反応が見えてこない」 坂井「REVIEWって、本当に中身が練られていて、素晴らしい記事ばかりなんですよ。CLIPとしてはそれをきちんと広めた上で、感想や議論を見える形で取り上げたい。『家に帰るまでが遠足』ではないですが、情報を届けてこそメディアなわけです。CLIPの理念として、まさに『情報流通の円滑化』が掲げられています」 藤吉「情報流通の円滑化、に関してははnow!の方が適しているのではないでしょうか。CLIPがはじまったとき、facebookは存在しなかった。理念に口を出すのは申し訳ないのですが、時が経ち、新しいメディア媒体が登場すると、それまでのメディアの役目や特殊性は変わらざるを得ません。私たちの目的やあり方も、その変化に適応してフレキシブルに変わっていかなければいけないのではないでしょうか」 坂井「確かに、CLIPも以前はWEBと併せてメールマガジンを配信していましたが、1年ほど前に取りやめました。これはサークルとして活動しているCLIPの強みですよね。媒体を変えながら、自分たちの方向性を自分たちで決めることができる」過去を知る…アーカイブの重要性
藤吉「僕は、SFCにいろんなメディアがある一方で、アーカイブの機能を持ったメディアが足りていないと感じています。SFCは『実験キャンパス』を自称していますが、どのような実験をしても、その記録を残しておかないと意味がありません。失敗した試みも成功した試みも等しく記録して伝えていかないと、いつまで経っても同じ過ちを繰り返すのではないでしょうか」 坂井「アーカイブは、過去を楽しめるという側面もありますが、楽しむ・知るだけではなく実際に行動を起こすことも重要ですよね。過去から気づきを得て、それを生かして自ら動いていくことで、初めて進歩することができます」 土肥「実は最近、now!にSFCの卒業生が多く入ってくださるようになりました。now!はアーカイブには弱いのですが、そういった卒業生との関わりを再構築することで、今まで断絶されていた過去との繋がりを作り出せるようになってきました。また、卒業生からの情報を元に検索してみると、CLIPの記事が出てくることがよくありますよ」 藤吉「でも、昔の記事だとリンク切れを起こしているものもありますよね。その意味では、検索可能性というのも課題になってくるかと思います。一方、REVIEWは検索というよりは『探索』をしてほしいと考えています。気が向いた時にぱらっとめくったら、こんな記事があった、というふうに、探している情報に辿りつくためのメディアではなく、おもしろかったり興味深い情報にぶつかるメディアでありたい」KEIO SFC REVIEW最新号のテーマは「新カリキュラム」 学生事務室前で無料配布されている