「サイバー法」―多くの人にはあまり聞きなれない言葉かもしれない。「サイバー法」(情報法)とは、インターネットを利用する際に関わる様々な法律問題を扱う法分野のことを指す。そんなサイバー法をテーマに、インターネットで起こる様々な法律問題を多角的・多面的に考察し、そこに潜む問題を可視化した上で実際に解決策を追求しているのが、ORF2014のネットワーク社会コーナーに出展している新保史生研究会(以下、新保研)だ。

身の回りのネットに関する法律問題にアプローチ

新保研は個人研究が基本であるが、今回のORFでは興味分野の近い学生がここのテーマ毎に集まり、各グループがそれぞれプレゼンテーションを完成させている。その分野は多彩だ。行動ターゲティング広告(顧客の行動履歴を用いて効果的な広告配信を行う手法)についての考察、Twitterに投稿されたツイート情報からツイートした本人を特定する実験、クイズを通して来場者にサイバー法とネットリテラシーを伝えるものなど、どれも身近な内容ばかりだ。この多彩な展示について新保史生総合政策学部教授に話を聞いた。

各班のプレゼンは設置されているタブレット端末から見れるようになっている

ネットの法律問題を多角的に―SFCだからできる分野横断的研究

— なぜSFCでサイバー法を研究するのでしょうか?

サイバー法プロジェクトの目的は、ネットワークにおける法律問題を、あらゆる側面から見て考えることです。サイバー法と聞くと、曖昧な印象を受けると思います。私の研究会は情報法をテーマに研究していますが、情報法とサイバー法は基本的に同じ意味です。
 ネットワーク上における様々な問題は非常に分野横断的です。個人の権利利益の保護や損害賠償などの法的責任は民法、電子商取引などの商取引は商法、犯罪は刑法。全部関わってくる。このように様々な分野をカバーできる研究や講義は従来の法学部にはなくて、SFCだからこそできる研究だと思う。
 

身近に潜むサイバー法をわかりやすく解説

— 展示の見所を教えてください。

サイバー法が扱う問題は非常に身近な話ですが、実感した経験があまりなかったり、一見難しく見えたりするものが多くあります。それをわかりやすく見えるようにしているのが、このサイバー法プロジェクトの大きな特徴です。
 繰り返しますが、インターネットは私たちの生活と密接に関わっているものの、実際に自分自身がトラブルに遭わない限り、ちゃんと考えることがありません。だからこそ、現実に起こり得る具体的な事例を取り上げ、様々な見方から捉えて考えることで、難しいと思われがちな法律問題を来場者の方々に理解してもらえたらと思います。
 

法律って難しい……と思われ敬遠されがちなネットの法律問題。しかし、実際は私たちの生活に広く深く結びついている。ますます身近になりつつあるインターネットをフィールドに、そこに潜む法律問題への理解を深め、きょう遭うかもしれないトラブルへの対処方法を知るチャンスだ。
 来場者からは「(ネットリテラシー)クイズを通して、ネット上で法律的に合法か違法かよくわからなかったことがはっきり線引きできた」「ツイッターなどSNSを利用するにあたって、個人情報の管理を大切さに改めて気づいた」などの反響があったという。
 ORFはあす22日(土)も開催される。この機会にぜひ新保研究会のブースへ足を運んでみてはいかがだろうか。