学生や教員、卒業生や海外からの訪問者などがSFCに滞在し、共に生活しながら半学半教を実践することを掲げている未来創造塾。今秋の完成を目標に進められていたが、建設費の高騰などを理由に予定通りの完成が難しくなり、学生が未来創造塾の設計・使い方を考える新たな試みが始まっている。未来創造塾スチューデント・ビルド・キャンパス(SBC)計画だ。

未来創造塾は2007年に構想が発表されて以来、2009年のハウス(寮)構想実験、2013年秋学期から開講されている「未来創造塾入門」など、ソフト面では着々と準備が進んできている。一方、ハード面では建設費高騰などの影響により、当初の計画タイムライン通りには完成しないことが見込まれている。
 

未来創造塾は私たちのもの 学生が主体となって創る街へ

そもそも未来創造塾に込められた思いやイメージが、当事者である学生の間で認識・共有されていないという問題がある。そこで昨年11月末、未来創造塾を自分たちの学びの場として積極的に考えていくことを目的に、SFC-SbC(Self-build Campus)プロジェクトが発足した。未来創造塾のうち、研究棟や宿泊棟が入る「EAST街区」を対象に、学生が主体となってイメージやアイデアなどを共有し、未来のキャンパスを思い描いていく取り組みだ。
 第1弾として、アイデアなどを考え出すトークセッションと、それを実際の設計に反映させるデザイン会議が行われた。1月19日には成果発表会が開催され、集大成を迎えた。

アイデア・イメージなどを共有し、設計に反映させる。

テーマは「未完のキャンパス」 大学公認のプロジェクトへ

今、この試みは新たなステージに突入しつつある。1月末、SFC-SbCは大学の公認を得て、SFC-SBC(Students Build Campus)と名前を変え、未来創造塾のみならずSFC全体の未来を考えるプロジェクトとして再スタートを切った。
 新生SBCのテーマは「未完のキャンパス」。学生や教職員、卒業生。全ての関係者が分野の垣根を越えて考え語れる場所として、毎週水曜日、DNPハウス(ν棟)で「カンカンガクガク会議」が開催されている。4日(水)に開催された第1回では、井庭崇研究会で開発した「Future Language Workshop」(理想の未来とそれを実現する方法を言語化する手法)を利用し、未来のSFCの理想像が語られた。学生が多く参加し、「畑を作り農作物を育てる」「24時間営業のレストラン」など、様々なアイデアが出された。
 11日(水)の第2回では、池田靖史環境情報学部教授(建築学)が登壇した。未来創造塾構想に初期から携わっている池田教授を囲み、お酒やお菓子などを交えた終始カジュアルな雰囲気で話が弾んだ。

池田靖史 環境情報学部教授

共同生活を送る意義

日本では今となっては珍しい学生寮。未来創造塾では、学生が共同生活をするという学生寮に近い施設を作ろうとしている。なぜ今あえて「学生寮」を作るのか、池田教授はこう語った。
 「なにかを学ぼうとしても、短時間に得られる知識には限りがあるが、インテンシブな体験から新しい『きっかけ』は生まれる。教員は頑張っても1人あたりの学生に1日30分ぐらいになってしまうけど、学生同士はそれより遥かに長い時間を共に過ごしてる。そこから生まれる仲間との繋がりや、『きっかけ』が大事なんだと思う」

SFCを中心とした街づくり

未来創造塾・SFCを中心としたキャンパスタウン構想にも触れた。
 「未来創造塾をきっかけに、SFC創設当初からのビジョンの一つでもある『キャンパスタウン』構想を、つまりSFCを中心とした街づくりを進めるという意図もある。未来創造塾は、SFC関係者だけでなく地域の人も参加できるような形がいい。今の学事カレンダーを見ると、大学は年に26週間しかない。じゃあ、残りの26週間で何かできないか。そういうところに滞在型教育施設をはじめとする未来創造塾の特性を活かしていけるのではないか。そして、キャンパス創設以来の悲願である鉄道延伸の実現にも繋がっていくんじゃないかな」

このほか、池田教授は研究棟や宿泊棟などが並ぶ予定のWEST街区の計画にも携わっており、EAST街区での「実験」で得られたフィードバックなどがWEST街区にも生かされる可能性にも言及した。

ボクらのキャンパスを、一緒に考えてみませんか

SFC-SBC以外にも、未来創造塾に向けた様々な試みが行われている。卒業生有志による寄付企画「失敗伝説」もその一つだ。また、14秋の「未来創造塾入門」に続き、15春は未来創造塾でのライフスタイルを考え実験する「スチューデントビルドキャンパス(SBC)実践」が開講される。
 「カンカンガクガク会議」は、毎週水曜日18:00からDNPハウスで開催されており、参加は自由。自らの手で自分の学び舎を「創る」ことができる、またとないチャンスだ。興味がある人はぜひ参加してみよう。