いよいよ来週末、20日(金)・21日(土)、六本木・東京ミッドタウンでSFCの研究発表の場「Open Research Forum 2015」(ORF)が開催される。今年のテーマは「次世紀の芽」。100年後に社会に浸透しているであろう技術や制度、産業につながる芽を「次世紀の芽」と呼び、SFCにおける「芽」を探っていこうという意気込みだ。ORF2015実行委員長を務める中澤仁環境情報学部准教授に話を聞いた。

ORF2015公式ページより ORF2015公式ページより

ORF会場は100年後の世界―「次世紀の芽」を考える

ORF実行委員長を務める中澤仁准教授 ORF実行委員長を務める中澤仁准教授

—— ORFのテーマ「次世紀の芽」にはどのような思いが込められているのですか?

今年でSFCは25周年なので、節目としての意味合いをもたせようと考えました。いまの社会には、コンピュータや携帯電話などの技術、社会保障などの制度やそれに付随するさまざまな産業がありますよね。そのほとんどは100年前に原型がつくられています。コンピュータが開発されたのは1940年前後。ある瞬間にメジャーになる技術や制度の芽というのは、100年前にすでに存在していると思うのです。

SFCは「未来創造」を掲げているわけですから、ここで研究されている技術や制度は100年後にはメジャーになっているはずです。そして、現実にそうなってほしいという想いを込めて、「次世紀の芽」というテーマにしました。ORFの会場がそのまま100年後の世界ですよ、ということにしたかったのです。

—— こうしたテーマは、セッションにも反映されているのでしょうか?

セッションはたくさんの先生が未来志向で企画していますが、そのなかで「次世代の芽」に直接つながっているセッションが2つあります。

一つ目は、「Computer 22.0~25年目に100年後のコンピュータを考える~」というセッションです。 いまは当たり前のように利用されているコンピュータですが、100年後にそのまま使われているかはわかりません。例えば、石油は100年後にはなくなっているかもしれませんよね。そうしたとき、オイルフリーコンピュータをつくれるかどうかという課題があります。また、将来的には「飲む」「着る」「飛ばす」といったコンピューターが生まれてくるかもしれない。22世紀にはどんな利用形態があるのだろうかという論点もある。そうしたビジョンがあってはじめて、そこにベクトルを向けた研究が可能になるわけです。

このセッションに登壇する方の一人にバンミーター・ロドニーさん(環境情報学部准教授)がいます。彼は量子コンピュータが専門領域です。コンピュータのなかにあるCPUは、信号線の幅を狭くすればするほど省電力になり、一定の面積のなかにたくさんの回路を組み込めるため処理が速くなります。ところが、いまはその幅の距離が原子レベルになってきていて、これ以上狭くするのは難しい。サイズの縮小による高速化・効率化は限界にきているのです。そうしたときに、まったく新しいコンピュータの考え方が必要ですよね。そうしたことを議論するのが「Computer 22.0」というセッションです。

二つ目は、「Internet 22.0〜25年目に100年後のネットワークを考える〜」というセッション。いまの大学生は小学生のときにはインターネットに触れていますよね。眼球や脳に電極を入れて視力を回復させるという実験があるように、近い将来、人体のなかには当たり前のようにインターネットが入ってくるでしょう。すると、一人あたりのIPアドレスがいくつも必要になります。そんなとき、22世紀にIPアドレスは足りるのかという問題が出てくる。「Internet 22.0」ではこのようなインターネットの将来について議論します。

セッションも「諸科学横断」

—— セッションのラインナップはどのように決められているのでしょうか?

セッションは2種類あって、まずは先生が「こんなセッションやります!」と手を挙げて企画する「一般セッション」。もう一つは実行委員会が企画して行う「プレミアムセッション」です。一般セッションだけだと分野の偏りが生じるかもしれませんし、必ずしも今年のテーマに即したものになるとは限りません。なので、3つほどキーワードを定めて、バランスよくプレミアムセッションが並ぶように構成しています。

一つ目は「健康・スポーツ」です。SFCのコンセプトの一つは「諸科学横断」。総合政策学も環境情報学も学問としては確立していないものですが、「諸科学横断」というキーワードは共有しています。これはSFCが欠かしてはいけない原点です。特に「健康」というテーマは、いろいろな問題が複雑に絡み合っています。医療、政策、スポーツ、さっき話した「飲むコンピュータ」も絡んできますよね。

このテーマに関連するセッションの一つが、「スポーツが育む「次世紀の芽」」です。2020年にオリンピック・パラリンピックが国内で開催されるのは大きなチャンスです。スポーツをいかに人間の生活に溶け込ませていくかが大事なのですが、2020年だけで済ませてしまったらもったいない。どうやってその先につなげていくかということを議論していく必要があるのです。

二つ目は「教育・グローバル」です。SFCは頻繁にカリキュラムが変わりますが、次世代を担う人材を育成するという目的は変わりません。そのためにどのような教育が望ましいのかということは、ITしかり、言語教育しかり、密接に関わってきます。このキーワードのセッションには「SFCコスモポリタン多言語入試と多言語教育」があります。
 
最後のキーワードは「政策」です。これら3つのキーワード・テーマがまんべんなくカバーされるようにセッションは構成されています。ORF会場で学生にみてもらいたいのは、学生・教員・研究会がどのぐらい未来的なことをやっているのかということ。それぞれの研究が未来ではどのように活用されるかを、ぜひ自分自身で考えてほしいです。

ちなみに、今年のセッション会場は東京ミッドタウン4階のカンファレンスフロアです。昨年のニコファーレ(nicofarre)に比べて、今年は会場の大きさも広いため、セッションの数と一つあたりの時間も増えています。

会場で使用した木材は未来創造塾へ

—— 今年の展示にはなにか特徴はありますか?


展示会場は、昨年の新たな試みと同じく木造の軸組によってレイアウトします。ただ、今年は未来創造塾の骨組みと同じ木材を使うんですよ。そして、ORFで使い終わった木材を、SFCまで持ち帰って、EAST街区の第2練の建設に使用する予定です。

ウェブサイトが見やすくなった

—— ORF2015のウェブサイトが見やすくなったという声があります。昨年まではキーワード検索ができませんでしたが、今年はできるようになりましたよね。

ORFのウェブサイトは、毎年とんがったものをつくろうという気合いが先行して、一般的に満たさなければいけない要件が後回しにされてしまう傾向がありました。昨年も見た目はかっこよかったんだけどね(笑)。今年のウェブサイトは不便をかけないようにアクセシビリティに配慮してつくりました。

四半世紀の間育ててきた種を、次の100年を見据えた「次世紀の芽」として紹介するORF2015。その「芽」をあなた自身の目で確かめてみてはいかがだろうか。

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