竹中研究会では、実証経済分析の基本的手法を身につけた上で、経済政策課題に関するプレゼンテーションとそれに基づくディスカッションを行なっている。 7大学9研究会が集うインゼミも盛んだ。竹中研究会の信濃伸明くん(総合3年)、伊藤綾子さん(環境3年)、真鍋雅史さん(環境3年)に話を聞いてみた。


● 活動内容を教えてください。
 竹中研究会の活動は、主に二つあります。一つは、年二回春学期と秋学期の終わりに行なっているミニカンファレンスです。これは研究室のメンバーそれぞれが独自の問題意識に基づき、計量経済の手法にしたがい、政策提言を行なうというものです。二つめは、週一回の通常ゼミです。ここではディスカッションが主体です。先生がハーバード大学の出身ということもあり、アメリカのポリシースクールで行なわれているような経済政策分析を目指しています。
● どのように研究を進めていますか?
 たとえば「平成不況による消費の落ち込みの原因は何だろう」という問題意識を持ったとします。そうすると、財務省や日銀などでの先行研究を読み、自分の研究に沿った分析方法を探して、E-Viewsなどのソフトを用いて、統計学的に計量経済分析をします。理論を立てて、客観的なデータ・モデルを用いて実証し、検証するわけです。
 竹中研の最終目標は、日本経済・世界経済のニーズに応じ研究し、政策を提言することにあるので、純粋な経済学とはすこし違いますね。
 竹中先生は、学生にはいつも「スタディではなくリサーチを」と言っておられます。すでにあることを知るのがスタディで、今まで誰も知らなかったことを明らかにするのがリサーチ。私たちはリサーチを通して、付加価値を生み出すことが大切なんです。
 研究は個人で取り組んでいる人もいれば、2~3人のグループで取り組んでいる人もいます。
 話題の小泉内閣メールマガジンやタウンミーティングは、4期生の井庭崇さん(政メ博士3年)のアイディアなんですが、それも竹中研の自由な雰囲気があってのことだと思います。
● 今後のビジョンは?
 日本国内の政策論議のレベルは、国際的に見て決して高いとは言えない。だから、私たちのように学生のうちから関わって学び、日本の政策論議のレベルをもっと上げていきたいと思っています。
● 問題点は何だと思いますか?
 統計学的なモデルを回すのがシンドイので、推計し終わった時点くらいで、いつもタイムリミットで終わってしまうことが多い。そこから理論を組み立てていかければいけないのですが、なかなか政策提言まで手が回らないことが問題点かもしれません。
 また、研究をひとつ仕上げるのに、学生は2ヶ月くらい研究室にこもるんですよ。そうすると、周りの人から、「あいつら、何やってるんだろう」と怪しい目で見られる。友だちが減って恋人とも別れて、気がつくと携帯電話の着信履歴が竹中研ばかりになってて(笑)
● 研究発表の場/メディアは何ですか?
  学期末のミニカンファレンスです。今学期は7月13日(土)、14日(日)を予定しています。昨年度秋学期は12月下旬でした。当日、学生はみなスーツ着用で参加します。
● 主な就職先は?
 都市銀、投資銀行、証券、政府系機関など、やはり金融が多いですね。日本銀行に就職している人もいます。日本銀行と竹中研究会でやっていることはそんなに変わらないんですよ。商社・メーカーは少ないです。
● 竹中研イチ押しの本はありますか?
小林慶一郎・加藤創太 著「日本経済の罠」(日本経済新聞社)です。
竹中先生も推薦された本で、今年は小泉内閣発足もあって、この本をきっかけに不良債権処理をテーマに研究している学生もいます。
● 他研究室や他企業とのコラボレーションはしていますか?
 ISFJ(Inter Seminar for Future of Japan :21世紀の日本を考える会)http://www.foj.kutc.kansai-u.ac.jp/ で、慶應SFC竹中ゼミの他、慶應三田の島田ゼミ・塩澤ゼミ、東大伊藤ゼミ、横浜市立大藤野ゼミ、中央大横山ゼミ、阪大本間・跡田ゼミらと、インゼミでの交流があります。
 ポリシーネットの学生版といったところでしょうか。竹中研4期生の中室牧子さん(現:日本銀行)が始めたのがきっかけです。昨年度は、1月に政治家の方もお呼びして政策提案会議を行ないました。
● どんな実績がありますか?
 数々の懸賞論文の入選などがあるほか、日本銀行政策担当者など、日本経済を担う重要なポストへ人材を輩出していることでしょうか。
● どんな知識/スキル/人材が欲しいですか?
 経済学・統計学は必須です。「データ分析」は大切な科目ですね。
 新聞を読む人。また、これから勉強する意志のある人に来てほしい。
● 気になる研究会を教えてください。
 統計やモデルに特化した研究をおこなっている点で、小坂研でしょうか。
 竹中研では経済政策をベースに、西岡研で環境、森平研で金融、曽根研で政治など、他の研究会と掛け持ちしている学生も多いですね。
● どこにアクセスすればよいのでしょう?
 研究室はo508です。直接来てくださってもよいですし、信濃伸明[email protected]までメールをいただければお答えします。
● ひとことおねがいします
 今学期は、変則的に土日を使って、三田かSFCで週1回集中講義の形式を取っています。来期の開講なのですが、正式には授業として開講はしないことになりました。今後どうするかに関しては現在ゼミ内で話し合っている最中です。竹中先生は2~3週間に一度ゼミを開いても良いといってくださっているので、非公式にやるという状況もありうるといった感じです。いずれにせよ、私たちは、竹中先生のもとで来期以降もぜひ研究を続けたいと思っています。
● 最後に、研究会のトレンドは
 「恋は非線形」「残留関数」の用語が流行っているかなぁ(笑)