昨年12月に行われた塾生代表選挙の不適切な運営。3人の候補者の1人だった荒井暢史さん(総3)が、当選挙を通して考えたことについて語ります。

第3回では、そもそもの全塾協議会の成り立ちや過去の選挙を振り返りながら、「上部7団体」に注目して全塾協議会の問題点を改めて考えます。

昨年12月12日(月)-16日(金)に行われた塾生代表選挙に立候補しておりました、総合政策学部3年の荒井暢史と申します。

第1回では、塾生代表選挙における不正の問題について、騒動の経緯とその詳細を投票期間の前後の事柄を中心に書かせていただきました。第2回では、投票後に行われた内部監査の実態をふまえ、選挙管理委員会や全塾協議会の現状、特に慶應義塾大学の塾生自治を謳う団体としての問題について扱いました。

第3回では、今回の塾生代表選挙の一連の問題に加えて、過去の選挙運営からみた全塾協議会の問題の総括を行います。

全塾協議会の成り立ちとその機能不全

第1回の冒頭において「全塾協議会は全塾生が学費と一括で徴収(年間1人あたり750円)されている自治会費、総額2100万円強をもとに加盟団体への交付などを行う機関である。その運営は、全塾生から徴収される自治会費から交付金が拠出されているといった性質から、公平性と透明性を備えたものである必要がある」と説明しました。また、全塾協議会の公式HPでは、全塾協議会は慶應義塾大学塾生の最高意思決定機関であり、自治会費の公平な分配と監査を通し、それらの塾生への還元と塾生自治の基本方針の決定を目指すと謳われています。

しかし、現在の運営状況を見るに、協議会が上記の要件を満たして塾生自治の場として十分に機能しているとは言い難いのが現状です。

全塾協議会の成り立ち

現在の全塾協議会の形態は、その前身にあたる全塾自治会が1969年に未成立となったことに始まります。それを受け、暫定的に徴収された自治会費で組まれた予算に、全塾協議会が承認を与えるといった形が採用されました。そのため、そもそも協議会は交付金の分配を暫定的に扱う為の機関だったのです。

前身の全塾自治会の再建は幾度となく試みられましたが、それらは結局頓挫したままです。一方で暫定的に予算案を協議するためのものであった協議会が、その意味合いを変え塾生自治の役割を担うという旗印を掲げるようになりました。しかしその成り立ちをふまえると、協議会は塾生の意見を集約し、それらを代表する立場として協議に望むことが想定されていたとは考えづらいものです。

上部7団体の機能不全

協議において、議案に対する議決権が与えられているのは、上部7団体の代表者です。上部7団体とは、文化団体連盟・体育会・全国慶應学生会連盟・全塾ゼミナール委員会・四谷自治会・福利厚生機関本部・芝学友会の7団体を指します。この上部7団体はその規模や影響力から選出され、本来は「塾生の意思決定の協議に参加するものとしての役割」を担うことを求められています。自治会費からの交付金の額を決定する協議を行うのも、この上部7団体の代表者なのです。

しかし、上部団体は"塾生の意見を集約し、それらを代表する立場"という意識では参加しておらず、"自治会費分配・交付の協議に参加出来る力をもつ団体"という認識でしか協議会に参加していないのが現状だと思います。要するにその予算協議の場は「限られた予算の取り合い・折半」としてしか認識されていないということです。そして、そうした自身の代表を務める団体の(予算を確保する)為に協議に望むといった感覚の延長で協議会が運営されています。そのため、自身の団体のこと念頭においた意見や協議がもっぱらとなり、"唯一の塾生自治の場"を掲げながらもその実は形骸化していると言わざるを得ません。

過去の選挙運営問題の対応にも現れる、上部7団体による協議の限界

上記の全塾協議会の構造的欠陥は、過去の選挙運営においても浮き彫りになっています。

今回2016年の選挙運営における問題を扱った第1回と第2回で「塾生自治の場が成立するためには、それに対する塾生の意思表明の機会としての公平性・透明性が備わった選挙が必要」「選挙の監査やそれを受けての協議会の場においても何ら有効な対応を協議することもしない、自浄作用を発揮出来ない全塾協議会では、今後の慶應義塾大学における塾生自治の場の存続が危うい」と指摘しました。

同様の問題は、過去の選挙でも繰り返されています。2012年12月の選挙では投票用紙への改竄が[※1]、2015年4月の選挙では今回と同様の不適切な運営[※2]が取り沙汰されています。全塾協議会の交付金運営における重要な役割を果たす事務局長を公選するものでしたが、いずれの選挙も、現状の協議会や上部7団体と近い関係にある候補に利する不適切な運営が確認されています。協議の場においても、2012年は協議の紛糾に際して「当該の案件以外に審議すべきことがある」とし関連の議案は全て否決のまま不適切な運営の下での投票結果が採用されました。2015年も「申し立てのあった改竄や投票教唆の事実は認められず、一部不適切な行為があった」とそのまま選挙結果が同様に採用されています。

そして今回においては、たった424字書面1枚の監査報告書で「複数の不正行為が発生したが、公正妥当」となんら問題の詳細も公開せず、一部の関係者へのメールによる聞き取りのみによる調査によって問題が解決した[※3]とされる有様です。いずれの件においても協議によって必要な対策が講じられるこことはありませんでした。これは上段の項において協議の参加者である上部団体の代表者がその本来の立場であるところの"塾生の為の協議への参加者"を放棄しているからにほかなりません。

このように、全塾協議会がその構造に問題を抱えていることは明らかです。そしてその状態は2012年、2015年、そして今回の件につれて深刻なものとなっています。2012年においては事実解明の調査がある程度なされましたが、議会の構造的問題により有効な協議を持つことが出来ませんでした。2015年においては、私が実施した聞き取り等で当時申し立てのあった教唆等の事実を証言する方が確認されていますが、当時の選挙管理員会はメールでの関係者への聞き取りのみといった不十分な調査のみで問題を処理しました。そして今回の件においては、言わずもがなといったところです。このように近年低迷を見せる投票率に対して有効な手立てを講じるどころか、選挙の運営問題において再発を防ぐこともせず場当たり的な対応に終始し、さらにはそのたびに不適切な運営状況もそれへの認識の薄さも悪化し続ける一方です。

[※1]全塾協議会事務局長選「中止」 選挙管理の公平性や不正投票疑惑などが原因か、を参照 [※2]全塾協議会事務局長選挙 不適切な投票方法を誘導 選挙ルールにも曖昧さ残る|塾生新聞、を参照 [※3]わずか400字余りの監査報告書 自浄作用の無い全塾協議会の現状 / 荒井暢史(総3)【第2回】、を参照

現状への憂慮

こうした事態が全塾協議会の運営状況や構造が塾生自治の場として問題点を抱えているために生じていることは明らかです。上記の3件の選挙はいずれも、立候補者が複数人いる選挙でした。そして、それらの選挙において確認された不適切な運営は、全て上部7団体や全塾協議会の現行の体制に近い立場の候補に利するものでした。このように選挙が競合の形式となるたびに、不適切な運営が明らかになると言った事態は塾生自治の機会、そして自治への塾生からの関心ならびに信頼の喪失につながります。

不適切な選挙運営の常態化や上部7団体による協議運営の硬直化を受けて、今回の選挙においては投票の呼びかけや広報において本来は禁止されているネガティブキャンペーンや強引な投票の呼びかけがあったということも確認しています。こうした現状を改善しなければ、塾生自治の喪失につながるだけではなく、“義塾の創造及び塾風の宣揚”といった慶應義塾大学が掲げる大学としての矜持そのものまでもが損なわれるのは明らかです。

次回は、設立当初から現在に至るまでの湘南藤沢キャンパスにおける塾生自治の現状について書かせていただきます。

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