SFC独特の存在である研究会を、SFC CLIP編集部員が突撃取材する「CLIP流研究会シラバス」。シラバスだけでは、伝わらない研究会の実情を調査する。第3回は武田圭史研究会を取材。情報セキュリティとWEB技術を用いた身の回りの問題解決をメインテーマとしている。武田圭史環境情報学部教授と研究会の学生、恩田優さん(環4)、有馬怜文さん(環4)に話を聞いた。

何をしている研究会?

 武田圭史研究会(以下武田研)は、情報セキュリティを研究して3年目の研究会だ。「実現するためのセキュリティ」という観点から、WEBサービスやユーザーインターフェイスなど、幅広い研究テーマを扱っている。昨今、政治学的にも社会学的にも情報セキュリティの関心が高まっている。武田研はそこを、セキュリティの可視化・可聴化などを通して悪意あるプログラムへの対策を、技術的に解決する。

(無題)武田圭史環境情報学部教授

活動の仕方 -始めるのに遅過ぎることはない-

 武田研に加わったならば最初の学期は4つの目標を通して、基礎レベルを身につけることになる。

  1. Wikiというソフトウェアをサーバーに設置、利用可能な状態にする「Wikiのセットアップ」
  2. サーバーの通信記録の文字列を解析する「テキストデータ解析」
  3. 暗号化されたファイルをバイナリとして見て、法則を見抜く「バイナリ解析」もしくは「WEBアプリケーションの作成」(どちらかを選択)
  4. 「ネットワークの知識試験」

 この4つをクリアすると、来期も継続して履修することができる。先輩が手厚いサポートをしてくれるので、真面目に取り組んでいればクリアできる課題だそうだ。

 元々技術力の高い学生は1ヶ月でこれをこなして次のステップに進むこともできる。だからと言って、プログラミングなどの経験の無さに履修を気後れする必要はない。「やりたいと思った時が、始める時。始めるのに遅過ぎることはない」と武田教授は語る。

 今学期は「ランゲージマラソン」という取り組みを、研究会の時間の中で行っている。同じ機能のソフトウェアを、毎週違う言語で決められた時間の中で書くという。この活動を通して、新しい言語への抵抗感、ハードルを下げている。

 また、研究会の活動とは別に、研究会のメンバーが「SFC HACK」というプロジェクトに取り組んでいる。ブラウザからアクセスできる、SFC発着のバス時刻表など、SFCの生活をより便利にすることを目指したプロジェクトだ。

 武田研の学生の活動は、研究会の範囲内外に及ぶ。どれも、武田研で得たスキルをベースに、社会にある問題を技術的に解決することを目指している。

武田研の学生 -WEBユーザーインターフェースデザイン-

(無題)7日(木)にプレゼンテーションを行った恩田優さん(環4)

 恩田さんはユーザーインターフェイスの研究をしている。「アートとデザインは違います。一概に全く違うとは言えませんが、デザインはアートよりも他人に目的を理解される必要があります。私がやりたいのはWEBでのデザインです。人を誘導する指標をWEBデザインにおいても確立させて行きたいです」と恩田さんは語った。

 情報セキュリティからユーザーインターフェイスまで、技術を軸に幅広く研究テーマとして取り上げられている。

卒業後の進路

 卒業後、3分の1は大学院に進み、3分の2は就職する。ほとんどの学生がIT業界、WEB業界に就職する。有馬怜文さん(環4)は「稀に、別の業界に進む学生もいるが、就職活動の時には、自分の技術力を何らかの形で活かそうとしていると思う」と語る。

武田教授と学生の距離

(無題)武田教授の印象について語る有馬怜文さん(環4)

 有馬さんは、武田教授の印象について「最初は『教授』ということで距離を取ってしまいがちですが、教授は積極的にサポートしてくれます。学生を引っ張ってくれるので、学生からの尊敬も厚いです。ただし、常におんぶだっこの関係ではなく、学生も自立して研究を進めて行かなければと思っています」と語った。

 WEB技術を習得したいと思うならば、未経験者でも歓迎される研究会だ。最低限の知識は最初の学期の4つの課題は習得できる。問題解決へ技術的にアプローチをしたい学生にとって最適な研究会だ。