SFCにはあらゆる分野の研究会が存在する。シラバスだけでは分からない研究会の実情を、SFC CLIP編集部が実際に研究会へ赴いて調査する「CLIP流研究会シラバス」。第7回は上山信一研究会「パースペクティブ2050–未来への洞察(以下、パースペクティブ2050)」を取材した。

2050年を洞察するパースペクティブ


 「パースペクティブ」とは先を見通す力のことだ。研究会では、アリストテレス、マキャヴェリ、ルソーなどの古典や梅棹忠夫などの戦後日本の名著を読み、2050年に向けてすべきことを歴史から学ぶ。
 研究会では毎回一冊指定された本を事前に読んで来て、レポートを持ち寄る。当日には、チームでディスカッション、そして全体討議という流れだ。古典は解説本ではなく、原典の日本語訳を読む。当時の歴史背景の解説をあわせて読むこともある。
 上山信一総合政策学部教授は、「これは脳の筋トレ。最初は皆、本を読むだけで精一杯だと思う。しかし、ディスカッションを重ねるにつれて、レポートのレベルがどんどん上がる」と語る。

(無題)上山信一総合政策学部教授


チームワークがポイント


 学期後半には通常のディスカッションに加えて、研究会中に読んだ本に基づいたグループワークが行われる。毎回の研究会で読んだ文献にとどまらず、テーマを深める文献をグループのメンバーが分担して分析、発表する。この日は「ルソーが米英日仏に与えた影響」「ソクラテス・プラトン・アリストテレスが近代西洋思想に与えた影響」の2つのグループの発表があった。このグループワークでは、内容だけでなく他のチームが採点して競う「チームワーク」が、評価で大事な対象となっている。

(無題)プレゼンテーションの様子


上山教授は「大阪出身のアメリカ人」


 履修者の木村尚美さん(総4)は上山教授について、「各回のレポートにも丁寧に評価をつけてくれますし、手厚いケアをして下さる教授です。就職活動の相談にも熱心に乗ってくれます」と語る。「シラバスを見ると厳しいと感じるかもしれません。最低限のルールには厳しいですが、基本的にはとても優しくて明るい方です。教授は『大阪出身のアメリカ人と仕事をするつもりで研究会に来い』と仰います。快活な性格をよく表してると思います」と言う。

(無題)木村尚美さん(総4)


実践的な哲学


 「実際に人々を動かし、歴史を動かした本に書いてあることは今でも未来でもパワフル。自分の中で、これはスゴい考えだ! と思いついたことでも、大部分はどこかの古典の中で既に語られている」と上山教授。「この研究会で学ぶのは改革論。古典や哲学の解釈だけではない」と語った。上山教授は秋学期月曜2限目の「パブリックガバナンス」をこの研究会の入門コースとして勧める。近年、大学教育でリベラルアーツが大切とよく言われる。パースペクティブ2050は、その典型とも言える研究会だ。

(無題)


 過去を学んで未来を創造するという、「実践」に重点を置く学びが行われていることをひしひしと感じた。