シラバスだけでは分からない研究会の実情を、SFC CLIP編集部が実際に研究会に赴いて調査する「CLIP流研究会シラバス」。第10回は藁谷郁美研究会「ラーニングデザインプロジェクト」「メディア比較研究」両研究会を取材した。

学習環境を作る「ラーニングデザインプロジェクト」


 ラーニングデザインプロジェクト研究会は、藁谷郁美総合政策学部教授とラインデル・マルコ・カイ総合政策学部訪問講師の2人によって開講されている。この研究会では、外国語学習環境をよりよいものにするために、外国語の学習教材作成から実践された教育の効果測定まで幅広い活動を行なっている。開発している学習教材には、ITが活用されている。具体的にはWEBで学べるプログラムやスマートフォンアプリなどが開発されている。
 研究は個人個人で行なわれ、各々の学生は秋学期のORFの発表を念頭に研究を進める。藁谷教授は「メディア環境は刻々と変化していくので、何が一番学習効果があるのかもまた変化します。私たちの研究会では変化の中で最善の学習環境をデザインすることを目指しています」と話す。

(無題)研究会の様子


多角的な視点で「メディア比較研究」


 メディア比較研究のゼミでは、異なる言語で同じ事象について取り上げた新聞、雑誌などのメディアを比較することによって、それぞれの言語の特性を明らかにする。同じ事柄を扱った文章でも、言語の特性によって視点が異なるため、取り上げる内容や表現も異なる。学生はそれぞれが使用できる言語で書かれた文章を比較することによって、視点の違いの理由や背景を考察する。
 履修者は学期始めに三田キャンパスの図書館で資料検索の方法などを学んだのち、研究計画を提出する。学期末には成果発表以外に、どんな文献や資料を使ったのかを共有する発表があるのも特徴だ。
 藁谷教授は「言語はよく窓に例えられるのです。多言語になるほど一つのことを様々な視点で見れるようになります。これによって本当にグローバルな情報を集められるようになります」と話す。

(無題)プレゼンテーションの様子


楽しむ力、勇気、寛容


 履修者の佐藤友紀子さん(総4)、花野沙也香さん(総4)、榎本明生さん(環4)に研究会について聞いた。「藁谷教授は、履修を決めると、その前に必ず面談をしてくれますし、履修してからも相談があれば時間を割いて個人面談をしてくれます」と佐藤さん。また、両研究会の履修に際して、外国語やITの技術力の必要性について聞くと「翻訳は辞書があればできるので完璧である必要はありません」「教材開発に使えるプログラミング等ができるわけではないけれど、学べる環境が藁谷研究会にはあります」と、特別心配はいらないとのこと。また、研究会から得たことについて「研究会を通して発表することや仲間から批評をもらうことの楽しさを知ったし、勇気、寛容さも養われたと思います」と語った。

(無題)佐藤友紀子さん(総4)花野沙也香さん(総4)榎本明生さん(環4)


SFC特有のネットワーク


 「SFCは、研究会に1年生から大学院生まで在籍しているので学生は様々な先輩から影響を受けながら、育っていくことができる」と藁谷教授。「例えば、留学に行くには何年生ぐらいから準備すれば良いのか、など先輩を見れば学べます。SFC生には、この環境を最大限に活用してほしいです」と語った。

(無題)藁谷郁美総合政策学部教授とラインデル・マルコ・カイ総合政策学部訪問講師


 両研究会とも、言語というテーマについて学生一人一人が多角的に取り組んでいる。SFCのネットワークを活かし、言語教育のノウハウが蓄積された研究会だと感じた。