他学部の友人と話していたときの忘れられない一言がある。「SFC生の研究とか活動って似たり寄ったりじゃない?」という言葉だ。社会への実践知を掲げ、多分野の授業やプロジェクトを持つSFCを、SFC生は活かしきれているのだろうか。履修や自らの方向について考えるこの時期に、改めて考えたい。

創設から20年、ここでしかできないものは何か


既存の学問分野を解体し、実践を通して21世紀の実学を作り上げることが私たちの目標です。
SFC公式「極端のススメ」より

 既存の学問分野でなく、実践を通して新たな学問を作る、それがSFCの公式WEBサイトで書かれている目標の一つだ。SFCの強みとして、多分野の授業が用意されている事、研究会に学年を問わず所属できる事が挙げられる。
 授業や大学生活、研究会で発見・興味をもったテーマに向けて学生が解決・取組みをするとき、このSFCの学びの形は強い。取り組もうとするテーマに必要になる横断的な分野の授業がキャンパスにあり、多くの教授や他の学生の存在も、大きな助けとなるだろう。
 しかし、「横断的なテーマ」「横断的な解決」も20年前とは異なる新しい角度を常に模索していかなければならない。創設当時は先進的だった情報技術・ネットワークの設備、国際性・AO入試等の多様性へ試みは今や一般的になった。「横断的なテーマ」が、一般的なテーマになっていないか、今一度点検する必要がある。

「実践」で見えにくくなったものはないか


一連の政策過程を体感できる環境を提供しているのが総合政策学部です。フィールドワークやインターンシップなど、問題解決の現場体験を通じて、皆さんの学びを支援していきます。
SFC公式「総合政策学部理念・概要」より

 総合政策学部の理念として掲げられているように、問題解決に対して飛び込む、実際に取り組むことがSFCでは推奨される。
 実際にSFC生を見渡せば、自らイベントや活動を企画する者が多く、絶えず新しいものが生み出されている。SFC CLIPでも様々な活動をする学生を取り上げているし、実際に話を聞くと多くのひとは熱心に答えてくれる。
 もちろんイベントや調査、制作でまず手を動かすことで、思わぬ知見や問題解決方法が生まれることも多い。
 しかし研究として「実践」を行う時には、研究としての「新規性」が見えづらくなることはないだろうか。自らの研究として活動する場合には、常に新しさや目的を頭に置いて「実践」しなければならない。手を動かす事だけに必死になってしまっていないだろうか。

コラボレーション、できてますか


 SFCではグループワークやコラボレーションという言葉をよく聞く。授業の中でも、複数人で課題に取り組み、発表するプログラム等があり、メンバーは頭を捻らすことになる。良いコラボレーションというのは、ただ専門知識や力を持っているメンバーが集まるから良いのではない。コラボレーションでは、単に自分の知識や主張が必要なのではなく、お互いを引き出す技術や姿勢が必要とされる。これは授業・研究会問わず同様だ。
 コラボレーションを中心として研究に取り組む、というのには大きな醍醐味がある。メンバーの人数以上の結果を生み出し、実社会に影響を与えることも可能だろう。ただし、それはメンバーが創造的なコラボレーションができている場合だ。
 お互いがお互いのアイディアを引き出すようなコラボレーションをできていますか。胸を張って、自らがやっている事の役割・目的を言えますか。

SFCで「個」の輝きをもっと!


 研究だけに留まらず、多くのプロジェクトが動くSFC。ただそれだけに、自らが流されることや見失うこともある。誰もがリーダーシップを取ったり、目立たなければならない訳ではない。しかし自らが取り組んでいる事を、自分だけにしかできない事や強烈な個性にしていけたら、SFC生一人一人が輝いていける。SFC全体の力も高まる。
 秋学期の履修に悩むこの時期、取り組む問題を探す時、取り組んでいる時、SFCの原点に立ち返りたい。