シラバスだけではわからない研究会の実情を、SFC CLIP編集部が実際に研究会に赴いて調査する「CLIP流研究会シラバス」。第16回は、脳の本質に迫る、青山敦研究会(以下、青山研)を取材した。

脳科学の最先端

 青山敦研究会(以下、青山研)では、脳科学に関して脳情報の計測と数理解析の観点から取り組んでいる。これまで、人間の脳を研究しようとした場合、脳波や脳内処理後のアウトプットである行動結果、脳障害の知見などを分析してきた。
 しかし近年、人間の脳を詳細に計測する脳磁界計測法(MEG) 、磁気共鳴画像法(MRI)、高精度の脳波計などが登場。脳の機能をより詳細に研究することができるようになった。
 青山研では、それら最先端の計測手法を使い、脳のメカニズム解明の研究を行っている。さらには、脳の情報を使用した通信技術の実現や医療・福祉への応用など、発展した内容も視野にいれているそうだ。

青山研究会1


 研究会の前半では、学生が自身の研究分野に関する論文を要約し、プレゼンテーションを行う。同時に、プレゼンテーションの内容について議論することで、発表者の習熟と、研究会全体の情報共有を行っている。
 研究会の後半には、脳データの解析について講義を行ったり、グループ研究のディスカッションを行ったりしている。研究活動は、自分たちで自由に計画した内容をもとにグループと個人で行っており、研究会の時間外に実験などを行っている。
 具体的には、脳の中で感覚情報としていったんバラバラに入力された世界が組み立て直される仕組み、脳データからの感情の読み取り、連想時の脳活動、言語としての手話理解のメカニズムなど、多岐に亘って研究しているそうだ。

青山研究会2


研究会の雰囲気は?

 青山敦環境情報学部専任講師(以下、青山先生)に、研究会の雰囲気について伺った。

青山研究会3青山敦環境情報学部専任講師


 「脳科学は、生理学、数理学、工学、心理学、医学などさまざまな知識が必要で、非常に学際的。その点で、SFCらしいとも言えるかもしれません。研究会には様々なバックグラウンドをもった学生が集まっているので、ディスカッションの中で様々な視点を持つことができます」

青山研究会4グループ研究のディスカッション中


 「大変意欲の高い学生ばかりで、聴講で参加している学生や1年生も多くいます。メインとなる自身の研究以外にも、自主的にサブゼミを開いたり、色々なアイディアを学生側から出してサブプロジェクトに取り組んだり、熱心に研究を行っています。メンバーの仲も非常に良いです」

青山研究会5脳を3Dプリンタで印刷するサブプロジェクト。これも学生のアイディア


 取材の最後に、研究会に関心のある学生や受験生は、どんな文献を読んで来れば良いでしょうか? と青山先生に伺ったところ、「脳科学に関する書籍を読むことも重要だが、『マトリックス』や『2001年宇宙の旅』などのSFが好きな学生にとって楽しい研究会かもしれない」と笑顔で答えてくれた。
 たとえ今、脳科学に関する知識が足りなくても、真摯に学んでいく情熱がある学生こそ、青山研に向いているということだろう。青山研は今年4月にできたばかりの新生研究会。今後の活動にも注目だ。