「SFCらしさ」を再発見し、激変する社会におけるSFCの役割を見出す「復刻! CLIP Agora」。第6回は、2013年に彗星のごとく現れた、現代を歌う歌謡エレクトロユニット、「サテライトヤング」を取材した。


 80年代のアイドルサウンドに現代のSNS社会を歌う歌詞をのせた楽曲は様々な人の心をつかみ、その活動をTwitterなどのSNSを通じて知っているSFC生も多いだろう。

 そんなサテライトヤングを構成する、草野絵美、ベルメゾン関根はともにSFC生である。iTunesで配信された楽曲はJ-POPランキングの18位を記録するなど、今波に乗っているサテライトヤングの2人にお話を聞いた。


satelliteyoungサテライトヤングの2人(サテライトヤングより提供)


— どうして80年代のアイドル風の楽曲に現代のインターネット社会を風刺するような歌詞をのせた楽曲を作られているのですか?

草野さん「私は80年代の東映の特撮が好きで、なかでも美少女特撮の『魔法少女ちゅうかなぱいぱい!』(1989年・フジテレビ系列)が特に好きなんですよ。80年代の映像って、突っ込みどころが満載で、かつデジタル技術もそこまで発達していない時代であったため、ダサくて、安直な映像が多いのですが、その雰囲気がとても面白くて。この時代の映像をなんとかして再現したいなと考えていた時に、映像製作も音楽製作も出来る関根さんに出会いました。関根さんと私はお互い80年代が好きという共通点があって、関根さんと音楽を作ることになりました。『フェイクメモリー』の歌詞にもあるように、行ったこともない場所のことを知っているような、今の情報社会にはずっと違和感を感じていました。この違和感を80年代のサウンドに載せてみたらどうなるのだろうという思いつきでサテライトヤングが始まりました」



関根さん「僕も80年代が大好きで、コンピューターやシンセサイザーを使った音楽をよく聞いていて、自分でも作っていたりしました。10年くらい前は、マニアックでディープなサウンドを追求していたのですが、ここ2、3年で、80年代のポップできらきらしたサウンドへの変化が生まれました。時代的にも、みんな元気を求めている気がして。草野さんは90年生まれだけど、僕は80年前半生まれなので、80年代のことは濃厚な記憶として残っています。時代も一回りしていますし、80年代のサウンドは、当時子供だった僕ら世代には懐かしく、今の若者世代にはどこか新鮮に響くのだと思います。ただ、サテライトヤングでは、単に懐古主義にならないように音楽的に工夫していますね」


— 実際の楽曲製作の作業はどのように行われているのですか?

草野さん「最初の時点でのサウンドは、私がボイスレコーダーに鼻歌で録音して作っています。私は、音楽は聞くのが専門で、楽器を演奏したり、歌を習ったりといった経験はないのですが、それでも曲が作れました!」



関根さん「草野さんの原曲をもとに、コンピューターで曲を作っていきます。お互いに忙しいため、実は一緒に顔を合わせて作業することはほとんどなくて、作成中のデータをオンラインで共有して、意見を言い合って作りあげています。草野さんから曲作りに関して核となるフィードバックをもらうことも多々あって、草野さんのセンスにはいつも助けられています。作る課程も、曲の歌詞も、配信もすべてインターネットが不可欠ですね。レコーディングはSFCのレコーディングルームを使うなど、SFC生であることのメリットを活かして作業しています」


— 2曲を発表されて今はどのような活動を行われているのですか?

草野さん「今は新曲を製作しています! 私は音楽とファッションが大好きです。小さいころから、60、70、80年代と時代を分けて研究するのが大好きで、最初はファッションから、そして音楽へと興味の幅を広げてきました。一口に80年代アイドルと言っても、いろいろな種類のアイドルがいます。1曲目の『ジャック同士』は、80年代後半のアイドルたちも大人っぽくなり、少しグレ始めた頃の、憂いのある歌謡ポップ、2曲目の『フェイクメモリー』は、80年代前半のさわやかな王道アイドルチューン、そして今製作中の86年ごろの変なカタカナを多用する当時のアイドル楽曲がイメージになっています」



関根さん「楽曲のイメージに特定の年代のイメージが強くあるため、その当時の機材の方式などを徹底的に調べるようにしています。その後のものは方式が変わってしまい、その時代の楽曲がもつ特有のエッセンスのようなものが抜けてしまうからです。80年代アイドル風の楽曲というのはアイデアとしてはありふれているため、本当の意味で作りこむために、ディテールにはこだわっています。学部生時代に岩竹研(岩竹徹研究室)で音響系の勉強をした経験が活きていますね」



草野さん「私は感性で時代をはかりますが、関根さんは機材に関する知識を通して、裏打ちされた80年代を作りあげてくれます」


— 今後サテライトヤングはどのような活動を展開されていくのでしょうか。

草野さん「これから新曲を発表しつづける中で、80年代の様々な側面をお伝えしていきたいと考えています。そして楽曲が増えたらライブをやりたいですね。ライブではサテライトヤングの楽曲はもちろんなのですが、洋楽を日本語訳にカバーした曲などをやってみたいです」


— 今後のサテライトヤングの新曲やライブの発表を心待ちにしています!

感性と知性で80年代の世界観を作り上げ、その世界を通して現代の情報社会を歌うSFC生ユニット、サテライトヤングの今後の活動から目が離せない。