SFCでは、国内にとどまらず海外でも活動をしている研究会が数多く存在する。今回は梅垣理郎研究会で行われている、ベトナムの枯葉剤障害児を支援するプロジェクト「Dream Class」を取材した。

障害児達に「交流の場」を提供

学んだ理論を実践する共同研究プロジェクト

梅垣研のテーマは「開発や近代化が進むなかでの合理的な選択」だ。理論を身につけるための輪読のほか、学んだ理論を実践する共同研究プロジェクトも行っている。その共同研究で現在行われている二つのプロジェクトのうち一つが「Dream Class」だ。

障害児達が社会性を身につけるきっかけに

ベトナム戦争で使われた枯葉剤の影響で、現在もベトナムでは障害をもって生まれてくる子どもが一定数いる。多くのベトナムの障害者は、子どもの頃から障害を持っていることがわかると、家に隔離され外の環境からシャットアウトされてしまう。ベトナムにおける障害児教育の制度や支援はまだまだ不十分であり、障害者は健常者と同じ教育を受けることができないのが現状だ。

そこで梅垣研は、障害児が家の外に出て他人と交流できるクラスを2012年に開設した。それが「Dream Class」である。このクラスの目的は、一般的な学校の教育を行なうのではなく、障害児達に「交流の場」を提供することで、彼らがソーシャルリテラシーを身につけられるようになることだ。

「日本では障害者教育としてノーマライゼーションを掲げているが、私たちはソーシャライゼーションを考えている」と強調する梅垣教授。一日が終わったらそれで終わりなのではなく、明日という続きがあることを意識、そして期待させることにより障害児が社会性を身につけるよう後押しするプロジェクトだ。

プロジェクトの今後について意見を交わす プロジェクトの今後について意見を交わす

ベトナムの障害児のために持続可能なプロジェクトを!

このプロジェクトについて、梅垣教授にお話を伺った。

—— Dream Classプロジェクトを始めた経緯はどのようなものですか?

私はリスク評価や意思決定論について研究しています。その過程でベトナムに注目するようになりました。ベトナムでは障害をもった子どもを産む親が多くいます。「1人でも障害児をもつ両親はどのような意思決定で次の子どもを生むのか」ということが気になり10年ほどかけて調査しました。

調査の後、帰国する日を迎える度に、ベトナムでお世話になった人たちに「もう帰ってこないのか」と言われ続けていました。研究成果という掛け替えのないものを得たお返しに、なにができることはないかと考えるようになり、障害児を対象にした学校をつくることを思いついたのです。

地元の資源を使った持続可能なプロジェクトを目指して、休日だけ障害児用の学校として利用できる場所を探し、ある小学校校長とのつながりでボランティアの先生を数名集めました。それが「Dream Class」の始まりです。

—— 今後のDream Classプロジェクトの展望を教えてください。

このプロジェクトは、将来的には梅垣研がコミットせずとも動くものにならなくてはいけません。ですから、これから必要になるのは地元の積極的な関与です。そして、今後は外からもDream Classプロジェクトを支えられるシステムを作りたいと思っています。

そのシステムの一部が、夏休み中に行う予定のクラウドファンディングです。他にも、ORFへの出展で認知度を高めたり、七夕祭や秋祭への出店などで資金を集めようと思っています。

プロジェクトへの支援の今後について話す梅垣教授 プロジェクトへの支援の今後について話す梅垣教授

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