10日(日)、角川書店より、SFCの創立からこれまでの経緯を綴った著作「慶應義塾大学SFCの挑戦」が発売された。SFCの1期生である歌人・田中章義(あきよし)氏(国連WAFUNIF親善大使)によるもので、様々な出来事や研究内容を紹介しながら、設立当初のキャンパスの様子から、SFCが果たす社会的役割・その意義について触れられている。


 本文の中で田中氏は、「一ゼミ一NPOであれ」とSFCに提案しているが、このことを受けて、田中氏は、SFC CLIP 編集部にコメントを寄せ、「大学時代でなく、その豊かな可能性を社会全体の財産として活用してほしい」とSFCの学生にメッセージを送った。
 なお、田中氏は、4月4日(木)に行なわれる、2002年度のキックオフレクチャーに、講師として参加する予定。

■■■メッセージ
—この本を通して、現在/これからのSFCの学生に対して、どのようなメッセージを伝えたいとお考えでしょうか。
今でこそ当たり前になっている
「総合政策学部」「環境情報学部」ですが、
立ち上げに際して、
様々な先生の尽力があったこと、その大志を
一人でも多くの人たちに
知ってもらえたら嬉しいな、と思っています。
一つのキャンパスが誕生するまでの
ドラマ、情熱、熱意etc・・・。
世界に目を向けると、今、
十五種類のクラスターの向こうに
両親と離れて暮らさざるを得ない孤児たち、
学校に通いたくても通えない人たちなど
様々な問題を抱えている人がいます。
すべての魚類の三種類に一種類が絶滅危惧種に
なっているという国際データもあります。
そうした実状に対して、
学問や研究分野を超えて、
SFCはどんなことを実践していけるのか。
すべてのゼミや研究プロジェクトが
一つ残らずNPO法人格をもつようなキャンパスは
まだこの地球に例がありません。
そんな、
地球で最初の歴史を立ち上げていけるような
優しくて、あたたかな、
”社会への千手観音”そのもののキャンパスで
あってほしいと思っています。
そのために
先生や現役学生はもちろん、
卒業生も含めて
今後いい潮流を創出していけたらいいですね。
研究分野や集う人々は変わっても、
SFCには
いつの時代も
この星の希望工場であり続けて欲しいと
願っています。
決して自分たちだけのための
大学時代でなく、
その豊かな可能性を
社会全体の財産として活用してほしいです。
—また、日本/世界の大学ひいては社会全体に対して、どのようなメッセージを伝えたいとお考えでしょうか。
仕事で地球各国をまわるようになって、
学校に行きたくても通えない子供たちの多さに
驚きました。
政治的な理由で
親と離れ離れに生きなくてはならない子供たち。
臓器を取られて捨てられてしまった子供たち。
目の前で家族を殺された子供たち。
少年兵として
今も紛争地域に送られている子供たち。
そんな子供たちが
一日も早く武器を捨て、
安心して暮らせる社会が
実現して欲しいと思います。
そのために
各国の高等教育機関も
何が出来るのでしょう。
どんなNGOよりも
NGO的な役割を果たす大学が
新世紀のこの星に
生まれてもいいと思いますが、
いかがでしょうか。
どこかの国の大学が
現地の政府や自治体と手を取り合って、
計画的に教育プログラムのある孤児院を
建設していく等が実現できたら、
素晴らしいと思います。
そんな地球規模で語れる
あたたかな伝説作りに寄与できるキャンパスが
この星の未来を
豊かに輝かせることができるのだと私は思います。
未来に語り継がれるまごころ伝説。
時代も国境も超えて、大学が
そんな素敵な伝説の発信拠点となれますように!
田中章義