23日(水)14:40-15:30、Ω21にて、安西祐一郎・慶應義塾塾長の講演が行なわれた。「SFC学生諸君に期待する」という演題で、学生・教職員などおよそ150名が訪れた。


 安西塾長は、「私のライフワークは、SFCが目指しているものと軌を一にしている。」と講演を切り出し、理系・文系を横断してきた、自らの研究経験を披露した。慶應義塾大学工学部時代、科学者を目指し化学を専攻していたが、人間そのものに関心を持つようになり、大学院では、人間工学の研究を進めた。その後の研究活動についても、「文理を行き来しながら、常に、自分自身のやりたい研究に真剣に取り組んできた」と振り返り、慶應義塾の他、海外の大学・民間企業・国立大学での自身の経験を紹介した。
 そして、「塾長を務め様々な学問分野の人々とやりとりをする現在、それらすべての経験が、大いに役立っている」と述べ、SFC生へのメッセージとして、「SFCでは、伝統的な枠組みにとらわれすぎず、自分で自分の道を切り開いていってください」という言葉を残した。
 講演後の質疑応答では、学生から、「『慶應の凋落、早稲田の台頭』という最近のマスコミの報道について、どう思うか」という質問が投げかけられた。安西塾長は、この質問に対し、「マスコミとは、『出る杭』を打つもの」と、冷静な姿勢を示したうえ、「早稲田が数年前同じように叩かれ、内部で努力し変革した。慶應義塾も同じように、成果を出す準備をしているところ」と答えた。
 また、この講演のなかで、過去に2度、SFCで教授職に就く可能性があったことを明かしている。
【学生による質疑応答】
—–SFCでは、「問題解決・発見型」という理念が謳われていて、教員・学生の間ではある程度共有されているが、事務職員には意識されていないと思う。教員・学生・職員などSFCに関わる全ての人々が、共有するべき理念であるが、この点に関して塾長としてどう思うか?
【安西塾長】 「問題解決・発見型」という理念は共有するべきであると思う。ただ、社会には、いろいろな役割があることを理解してほしい。学生の見えないところで、職員や清掃作業の人たちも、自分自身で考え、学生のために精一杯やっている。
—–SFCは、学問を横断的に研究する場であり、三田の各学部が持つ専門性があってこそ活きるものだと思う。しかし、現状では、SFCと他学部との連携は非常に乏しい。もっとキャンパス間で連携していくべきであると考えるが、この点に関し、何か案はあるか?
【安西塾長】 その通り、キャンパス間の連携はもっと積極的に行なわれるべきである。この講演の前に参加した教員会議でも述べたが、キャンパス同士が交流する機会や仕組みを作っているところ。「慶應義塾大学21世紀グランドデザイン」を具体化したい。
—–最近マスコミで、『慶應の凋落、早稲田の台頭』という報道が増えているが、このことについて、塾長自身はどう思うか?
【安西塾長】 マスコミとは、「出る杭」を打つもの。だから、過剰に書かれている部分は、そう受け止めている。ただ、数年前まで、早稲田が同じようにマスコミから叩かれていたなか、内部で努力し変革した。その成果が今出始めている。慶應も同じように、今は、次の「波」を準備しているところであり、慶應義塾に関わる全員で盛り上がっていきたい。
 《プロフィール紹介》
 【安西祐一郎(あんざい・ゆういちろう)氏】
 1946年生まれ。1974年慶應義塾大学院工学研究科博士課程管理工学専攻修了、工学博士。1981年 カーネギーメロン大学客員助教授、88年 慶應義塾大学理工学部電気工学科(現所属 情報工学科)教授。93年 同大学理工学部長・大学院理工学研究科委員長、2001年より、慶應義塾長。著書に「シリーズ『認知科学の新展開』」(岩波書店)など多数。