14日(金)、三田キャンパスにてWorld Wide Web Consortium(以下、W3C)とSFC研究所共催のイベント、W3C Day Japan 2003が開催された。この中で、ワールド・ワイド・ウェブの生みの親である、ティム・バーナーズ・リー氏が「Semantic Web:そのコンセプトと現状」という題目で講演を行った。W3C Day Japan 2003は、20日(木)、21日(金)に行われるSFC Open Research Forum2003のプレイベント。

バーナーズ・リー氏は講演の冒頭で、セマンティックウェブの分野で用いられる、RDF(情報についてのメタデータを表現する方法の枠組み)についての紹介を行い、「これはコンピュータにとって、エキサイティングな言語である」と述べた。データの表現方法として、テーブルというメタファや、ツリー構造というメタファを組み合わせたものが使われており、データ構造を自然に表現できるものとして有用であると述べた。

RDFを使う利点として、例えば「郵便番号」「Zip code」「Postal code」という単語が同じ意味であるという関連を定義して、異環境にあるデータベースの間で、同じURI(インターネット上の情報資源の場所を指し示す記述方式)を使うことによって、データベース間の連携が容易になり、ビジネスなどでのメリットが出てくるという。
 また、多分野のアプリケーション間をRDFによって、連携させることができるようになる。例えば「時間」という同じURIで共有することによって、写真のRDFに記述された撮影時間を読み込み、カレンダアプリケーションの中に、写真が載せられるようになるなど、一般ユーザにも利便性が出てくる。このように、今後RDFは各アプリケーション間で、ハブの役割を果たしていくだろうと述べた。

これらの、応用例を述べた後、今後セマンティックウェブが重要になる分野として、学術分野を超えた統合、eコマースでの使用、個人情報の管理などを挙げた。
 
 その一方で、普及に当たり解決していかなければならない課題として、標準化のコストや、現状のウェブに満足している人に、いかにセマンティックウェブの魅力に気づかせるかという点を挙げた。それに関しては、現状のウェブの発展の際も人々は最初は懐疑的であったが、時間をかけながら徐々に浸透していった、という流れを紹介し、セマンティックウェブも同様な経緯を辿るだろうという見通しを述べた。
 
 また、RDFデータが様々な場所で使われるようになり、データの信頼性・セキュリティの問題が出てくるだろうとも述べた。