9月まで財務大臣を務めていた塩川正十郎氏が、18日(木)2限予算編成論の授業にて講演を行った。テーマは、塩川氏の財務大臣としての経験から語られる「就任当時の財務省を中心とした日本政府の経済財政に対する考え方」。塩川氏は、教室に入るとまず学生達に対して力強い声で挨拶をし、気さくな語り口で塾生時代の経験を話すなど、その人柄によって講演を聴きにきた学生の心を引き付けていた。


 1時間弱の講演の後には質疑応答の時間が設けられ、担当教員である加藤秀樹総合政策学部客員教授の「先日塩川氏が早稲田大学で講演をされた際は、学生たちが50以上も質問した」という言葉に刺激されてか、授業時間を延長するほどの質問が投げかけられた。
 講演の中で塩川氏が主に触れたのは、国から地方への税源移譲を基本とし、地方分権を進めていこうとする「三位一体の改革」について。
 構造改革をなぜ行う必要があるのかという点や、三位一体の改革において問題になっている国から地方への補助金システムが、そもそもなぜ出来上がったのかを、自治大臣を務めていた頃に研究した明治以降の地方行政の知識を交えつつ説明。「この国から地方へ渡される補助金20兆円の内訳を見ると無駄があり、それをなくすことが大切」「反発意見も多いが、政界を引退した後も積極的に、小泉純一郎首相に協力を行いたいと思っている。そのために改革の趣旨や事業について、あちこちで説明している」と語った。
 質疑応答の時間は、学生の質問に対して塩川氏がまず答え、それに加藤教授が話を付け加える形で、公務員の人数・給与に関する問題や、農業に関する政策や自由貿易協定、中小企業支援など幅広い話題が取り上げられた。
 中でも、政党内における人材養成システムに関する話では、「日本の政党ではイギリスなどと比べ養成システムが十分に機能していないために、国家や公共のことを考えられる『政治家』ではなく私利私欲に走る『政治屋』が増えている」と説明。「政治家は芸術家などと同じで、政治を生活の糧になどしようとせず、自分の信念を持ち情熱を傾けて生きている。だから、定年など関係ない」と、引退後も小泉首相の改革に協力を続ける、その姿勢通りの熱さを見せ語った。
【塩川 正十郎(しおかわ・まさじゅうろう)氏・プロフィール】
 1921年10月13日生まれ。1944年3月に慶應義塾大学経済学部を卒業、1946年9月三晃株式会社を設立、代表取締役となっている。1964年には布施市(現東大阪市)助役となり、1967年に衆議院議員に初当選、通商産業政務次官や内閣官房副長官等の職を経て、1980年運輸大臣となる。その後も文部大臣や内閣官房長官、自治大臣など政界での活躍を続け、2001年4月から2003年9月までは財務大臣を務めていた。現在は以前理事長をしていた東洋大学の総長、(財)日本武道館会長となっている。
 趣味は観劇と旅行、座右の銘は「以徳為政」。