セッション「イスラーム世界との対話 文明衝突を乗り越えて ポスト・ユニラテラリズムの世界を占う」が行われ、奥田敦総合政策学部助教授と野村亨総合政策学部教授が対談した。また、阿川尚之前総合政策学部教授がビデオレターという形で参加した。

今回のセッションは、単なる教授同士の対談というだけでなく、それぞれイスラム教徒、仏教徒、在米日本国大使館公使という、それぞれ異なる立場からの出演ともあり、議論は多岐に渡り、戦後日本の教育、そしてSFCに対する期待などにも話が及んだ。
 中でも、議論が白熱したのは、イスラームの現実と、それに対する我々の誤解で、野村教授はイスラームに対する誤解の一例として「ジハード」を挙げ、「本来ジハードは武器によるものは認められていない」と説明した。

そのような誤解を生むような原因として、日本における宗教に対する考え方があるとして、マルクシズムにこだわる戦後教育、偏向したマスコミ報道により、我々の正しい理解が阻害されていると、非難した。それ故に、日本人の宗教に対する免疫がなく、カルトとリリジョンの区別ができない人が増えているのが、カルトに引っかかる日本人が増えている一因だとした。
 これからの世代に向けて、野村教授は「寛容の精神、文明の対話、自分の考え・主張を持ってほしい」と説いた。
 奥田氏はそれに付け加え、「シャリーア(イスラム法)の理想とムスリムの社会の現実がかなり乖離している」として、イスラームにおける理想が、うまく社会に実現していない現状もあると述べた。シャリーアの機能不全により、ムスリム社会地域が、多様性に飲み込まれており、誤解が増幅しており、「我々はそれらを見分ける努力が求められる」とした。

最後に、奥田氏は「宗教というテキストは今までの知恵、すなわちコンテンツの塊」であるとして、テクノロジーを重視してきた戦後日本のコンテンツに対する軽視に警鐘を鳴らし、SFCという場はコンテンツとテクノロジーの融合の絶好の場であると、セッションを締めくくった。