先週のお伝えした、「仕事」についての書籍を出版したSFC卒業生2人、渡邉正裕氏と三神万里子氏に、SFCCLIP編集部は、それぞれ著作の内容や見所、自身の現在の仕事、SFC生へのメッセージなどの取材を行った。


 「これが働きたい会社だ -社員が教える企業ミシュラン」を出版した渡邉氏は、著作の見所について、「既存の書籍では得られない本当の情報を書いたこと」と語る。企業の広報部や人事部を通した取材を一切せず、約100人のインタビュイー(編集部注:インタビューされる人)に、独自の人脈で直接コンタクトをとって取材をした点が本書の強みだ。
 一方、「これからはこの仕事! -時代を先取る24の新市場-」を出版した三神氏は、「本書は一見、単純な転職本のようなタイトルになっていますが、従来の日本の『社会経済システム』では存在しなかった難解な知的サービス業をとりあげています。漫画によって業界全体像を示し、各種法改正や現状は本文とデータで解説しています」と語った。また、「私のジャーナリストとしての人脈をフルに生かし、情報を集めましたため、本文中にご登場になる方や、名前を伏せて漫画部分でご登場の方、各種情報をご提供下さった方々は、通常であればこのような『ギャグ漫画』には出てこないような一級の方々ばかりです」とコメント。
 
 両著作とも、自身が築いてきた人脈を生かし、新しい切り口で取り組んだ力作だ。渡邉氏はさらに、1月にマスコミ編、2月に分析編という続編を出版する予定で、三神氏も3月に新著を出版する予定。2人の今後の活躍にも注目したい。
以下、SFC CLIP編集部の質問に対する2人の著者のコメント
■渡邉正裕氏 「これが働きたい会社だ -社員が教える企業ミシュラン」
—「これが働きたい会社だ -社員が教える企業ミシュラン」の内容、見所は?
 SFCとの関係でいうと、この本は、SIV(SFCインキュベーションビレッジ)が主催する「Executive Summary Contest 2003」で1位になった事業プランを実現した、ネット新聞「MyNewsJapan」の第一弾連載企画を出版したものです。

内容や見所は、既存の書籍では得られない本当の情報を書いたこと。なぜかというと、企業の広報部や人事部を通した取材を一切せず、約100人のインタビュイーに、独自の人脈で直接コンタクトをとって取材をしたからです。類書は、どこにもありません。
—渡邉さんの現在なさっているお仕事は?
 上記のネット新聞社(今年2月設立)の代表取締役、および、ノンフィクション作家です。9月に外資系コンサルティング会社を辞め、独立しました。ビジネスモデルは、ネットに連載したコンテンツを月刊誌や書籍に配信することで原稿料や印税を得ることです。すでに、月刊誌「WILL」にコーナーを持っています。1月(マスコミ編)と2月(分析編)にも続編の本を出す予定です。
サイトの方は誰でも記者登録して記事を送れますので、学生の方々にも、是非とも記事を書いてもらいたいと思っています。
—これから就職活動を控えているSFC生に一言お願いします
 企業への就職を考えている方は、ぜひ本書を読んでみてください。企業を評価する「軸」が分かるのと、基礎的な情報が分かるはずです。そのうえで、とにかく直接、OB・OGに話を聞くことが重要です。
■三神万里子氏「これからはこの仕事! -時代を先取る24の新市場-」
 現役の皆様、12月8日のメディアビジネス論ではありがとうございました。ご質問やメールを多々いただき、大変嬉しく感じております。 授業では知識・情報が流通する社会で雇用され続ける人材になるために、という視点でお話をいたしました。この中で最も重要な、情報の価値創出つまりお金を払っていただけるレベルの情報加工とは何か、については時間の都合でお話し切れませんでした。
 詳細は3月末に光文社新書より本を出版いたしますのでご参照ください。
—「これからはこの仕事! -時代を先取る24の新市場-」の内容、見所は?
 本書は一見、単純な転職本のようなタイトルになっていますが、従来の日本の「社会経済システム」では存在しなかった難解な知的サービス業をとりあげています。漫画によって業界全体像を示し、各種法改正や現状は本文とデータで解説しています。
 政策コンサルタント、安全保障プロフェッショナル、病院経営コンサルタント、大学経営者、コンテンツプロデューサー、ウォーターサプライヤー、ターンアラウンドマネジャ-、知的財産コンサルタント等、24種類登場します。まだ一般メディアには体系的に出ていない情報ばかりです。
 私のジャーナリストとしての人脈をフルに生かし、情報を集めましたため、本文中にご登場になる方や、名前を伏せて漫画部分でご登場の方、各種情報をご提供下さった方々は、通常であればこのような「ギャグ漫画」には出てこないような一級の方々ばかりです。
 連載時から反響が大きく、日経新聞、幻冬舎、ほか複数出版社から単行本化の依頼が来ましたが、タッチの差で幻冬舎からの刊行となりました。
 慶大で新しく来年から関連講座ができる職種や、東大ほか各種国立大学で専門大学院が新設される分野、"ニセ資格"の見分け方や「どうすればなれるのか」等も読むことが出来ます。個々の職業は地下茎で繋がっており、誰と誰がどう繋がるとどんな風に市場が膨らむのかは立体的にご理解いただくため、展開図の付録をつけました。是非組み立ててみてください。
 知識情報サービス産業が世界レベルで拡大し、今後数年の間に競争環境は急激に増すことが予想されます。本書によって、笑いながらサバイバルに必要な情報武装をしてみてください。就職先としてばかりではなく、就職後に取引先や投資先となる企業、新規事業立ち上げの際のヒントにしていただければ幸いです。
—三神さんの現在なさっているお仕事は?
 経済分野のジャーナリストと、国立情報学研究所の研究員を兼務しています。

米国TIMEグループの経済誌や、国内ではテレビの経済番組企画、『世界(岩波書店の国際政治経済誌)』、『文藝春秋(月刊・文藝春秋)』、『金融ビジネス(東洋経済新報社)』等にて、金融・経済・情報・組織の関連から署名記事やコラム連載を執筆しています。
 また、各種メディアに取材の切り口や企画の方向性について助言サービスをさせていただいたり、コンサルティング会社等からの依頼でレクチャーをしたり、ブレスト会議への出席をさせていただいたりもします。私はおそらく、以下の点で国内でも特殊な位置にあると思います。
1.情報を提供しているメディアの幅が広い
2.最初からフリーランスという中立の立場で各種論考をしている
3.学術・実務・ジャーナリズムを横断した取材手法をとり、三者の情報ギャップの橋渡しを志向している
4.米国のジャーナリストのように、署名記事執筆のキャリアで媒体の難度を上げていくキャリア形成をしている
 また、「5.経済分野の専門書を書きつつ漫画家業務も兼務している」という点を加えると、海外でも極めて珍しいと思います。

過去の著作には『合併人事(翔泳社)』『メガバンク決算 日・米・欧、どこが違うのか?(角川書店)』があります。いずれも著作発売後に、内容とリンクした大事件が勃発していますが、これは内部告発等を基にした「スクープ」とは異なります。事件・事故の事後報道ではなく、事前の予兆、構造の分析から精度の高い伝達を目指すことで世の中のリスクを減らせたらと考えているため、取材・調査のアプローチが違うのです。
 
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—これから就職活動を控えているSFC生に一言お願いします
 知識・情報産業で生き残るための腕力を、SFCは気づかないうちにつけてくれる学校です。卒業して10年経ってやっと気づきました。短期的な視野で終わらず、社会に対し理性とバランスを提供できる知の山脈を各分野で形成して下さい。