「私自身は食いしん坊なので、SFCのキャンパスを食環境の面から広く見ることが必要だと長く主張していました」そう熱く語ってくれたのは、食環境改善プロジェクト代表、村井純教授。


 SFC設立当初から営業していた湘南リージョンが、学生ラウンジ、カフェテリア、ファカルティラウンジから順次撤退した。新学期から新しく営業するのは、学生ラウンジではサンドイッチチェーン「SUBWAY」、元カフェテリア・ファカルティラウンジではイタリアンレストラン「タブリエ」に決定。これは、2月8日の常任理事会にて最終決定された。新学期より変化する食環境は、それだけではない。自動販売機のリニューアル、食設備の電子マネー化と、SFCの食環境に大きな変化が訪れようとしている。
 そんな食環境変化を裏で推進してきたのが、村井純教授を代表とする、「食環境改善プロジェクト」。SFCの食環境に関する問題提起をし、新業者選定の決定の土台となるアンケート調査を7月と11月に実施してきた。そのアンケート結果に基づき、業者、教職員、学生間の要求の策定・調整、業者面接を事務の専門部門と共に行ってきた。SFC CLIP編集部では、食環境改善プロジェクト代表の村井純教授にインタビューを行った。
 今回の食環境特集第1回では、新業者決定の経緯をお伝えする。
 
 今回、海外出張中だったために村井純教授へのインタビューはメールで行った。以下、実際のインタビュー内容を掲載する。
7月に湘南リージョンが学生ラウンジから撤退したときに、「学生ラウンジの活用方法に関するアンケート」が行われたと思います。その回答にはどのような傾向がみられたのでしょうか。
 みなさんアンケートに答えていただいてありがとうございました。学生ラウンジのアンケートは極めて高い解答率と熱心なご返答に、このテーマへの関心の高さをうかがうことができました。
 ラウンジの利用方法に関する質問では、食事や喫茶などに加えて、談話やサークルなどの学生がすごす「場」としての要求が多かったですね。また、ちょっとちらかってるとか、もっと清潔にとか環境的な意見も多かった。肝心の食事環境としては、おいしくて安いものという要求は当たり前として、スターバックスのようなちょっとおしゃれな場所の希望と、ピザ、サンドイッチ、牛丼というようなファーストフード系への要求が多かったですね。そして、時間。SFCでの食環境の時間に関して、とまったときや早出の朝、そして、残留の夜の食生活の改善を望む声がすごく多かったのが印象的です。
また、11月に行われた「ファカルティクラブの今後に関するアンケート」(教職員向け)にはどのような傾向がみられたのでしょうか。
 こちらのほうは、教職員を対象にアンケートをお願いしました。やはり外国、他の大学や他のキャンパスのファカルティクラブと比べた意見が多くて、ビジターの接待や打ち合わせなどプロフェッショナルにふさわしいレストランを望む意見が多かったですね。かなり高級志向で、改善に対する要求が極めて強かった。
新しく入ることになった業者の決定には、7月と11月に行われたアンケート結果がどのように反映されているのでしょうか。
 可能な限りほとんどそのまま反映されています。上記のように、このアンケートは、1)要求事項を洗い出す項目として反映され、2)食改善のチームだけではなく、学生生活の場、と施設環境の場、などの視点で対応すべきとだ、いうプロセスを実現する原動力として反映されました。熱心なご回答本当にありがとうございました。
新しい業者の選定には、食環境改善プロジェクトの皆様は、どのように関わっていらっしゃるのでしょうか。
 食改善プロジェクトは、大学の教職員、中高の教職員、学生、現役の食堂関係者で構成されています。ラウンジは、アンケートを取った結果、生活空間としてのさまざまな要望が高かったので、学生生活や施設の視点を含めた別のチームを作り初期の業者候補選
定をしました。カフェテリアはファカルティと厨房が一緒なので一つの業者なのですが、対象が、教職員と学生とに別れるので、学生を対象にしたアンケートと教職員を対象にしたアンケートを基にして要求事項を作り、候補業者を決めました。
上記のように、問題提起、アンケートの実施などに基づいた、業者、大学教職員、中高教職員、学生、の調整、要求の策定、業者面接を、管財などの事務の専門の方と一緒に務めました。
新業者選定は、誰の発起で、行われたのでしょうか。またいつから選定を始めたのでしょうか。
話し合いはどこで行われたのですか。

 私自身は食いしん坊なので、SFCのキャンパスを食環境の面から広く見ることが必要だと長く主張していました。一方、SFCの初期の食環境はキャンパスの創立当時に地元に無理にお願いして作ったものです。当時は学年もそろっていなく大変苦労をして経営をされたと思います。平成14年度ごろから、さすがに状況も変化したキャンパスで見直しの声が高くなっていたのですが、当時の業者の方も経営の困難さを実感されていて、次第に見直しに合意されるようになりました。結果として、現在の地下食堂、ラウンジ、ファカルティと順番にプロセスを進めたわけです。発起というか起源はこんなところ。
 選定そのものは、アンケートベースの要求で行うことにしました。議論の責任は「食改善プロジェクト」+「ラウンジチーム」の二つです。会議とメールによって進めました。でも、実際には地下食堂は夏休み、他の3つは新年度に間に合わせなければならなかったので、デッドラインベースの厳しいプロセスでした。
その業者に決定したのはなぜですか。
 最も深刻な理由は健全な経営プランでしょう。現在は慶応において住人がキャンパスで食事をする比率のもっとも低いのがSFCだったのです。周辺に食環境があまりないことを考えると異常ですが、これがマーケット分析として前提になります。するとかなり積極的な業者か、コストを別の理由でおさえることができる業者が強い提案ができることになります。経営の破綻を生む選定はできませんからね。失ったマーケットを取り戻すためのリスクのある挑戦が始まるわけです。
 これに加えて、もちろんアンケートからの強い要望があります。これに合致するのは典型的な学食モデルだけでは満足を得られないでしょう。そのためには、キャンパス内全体でそれぞれの個性が補完できるようにしないといけない。学食風、バイキング風、カフェ風、ファーストフード風、レストラン風、とかね。これらが決定の2大要素でしたね。
 これらの合計は9社になりました。SFCでの食堂経営は他のキャンパスとちがって、近所のお客さんとか見込めないし、どの業者も必死の提案をしてくれたと思います。これらをあわせて、経営的な現実性から5社に絞ってプレゼンを受けました。プレゼンは、専門の職員と、食改善とラウンジスペシャルチームの教員と学生が受けました。
 結果として、ファカルティとカフェテリアは銀座のイタリアンレストラン、ラウンジは有名なサンドイッチのチェーン店にお願いすることになりました。(教職員が一週間イタリアンを食べ続けられるかは心配ですが、「しょうゆとだしはどこ行った?」と言わないように教職員にはお願いしているのですが。)
 あと、「ファカルティ」「ラウンジ」「カフェテリア」という名称も、業者の意見を尊重して新しくなると思いますし、サインの立て方など施設環境的な視点もありますのでこれにも関心をもってください。
決定は最終的に誰が行ったのでしょうか。
 内容的にはアンケートに答えた皆さんだと思います。実質的には、上記の食改善プロジェクト+ラウンジチーム、のメンバーでしょう。つまり、大学教職員、中高教職員、学生のチームです。職員には経理や管財などこの件に関するそれぞれの責任担当がありますので、この方たちが職務的な責任を持って対応してくださっています。そして、公式には、この提案をキャンパスの合同運営委員会承認後、慶應義塾の常任理事会において承認後最終決定しました。