先日開設し、SFCのオフィシャルWEBからリンクされた「慶應義塾大学点検・評価のウェブサイト」をどのように読めば良いのか。おそらく、学生をふくめた全ての大学関係者にとって、直接関わりがある情報が詰め込まれているであろうウェブサイトを「読み解く」術、さらには「批評する」ことをめざして識者に意見を問う。
 第1回は、大学評価を専門とする、総合政策学部非常勤講師 米澤彰純氏に「慶應義塾大学点検・評価のウェブサイト」をみてもらい、(自己)点検・評価とは何か、一般の学生が特に注意して読むと良い点、一般の学生にとって特に関わりが強いと思われる点の3点について聞いた。なお、SFCの評価については、17日(火)4限の「教育評価論」の講義で取り上げられる予定だ。


(1)(自己)点検・評価とは何か?
 「慶應義塾大学点検・評価のウェブサイト」は、慶應義塾大学の自己点検・評価活動、そして、外部からの評価委員を招いていることで、慶應義塾大学の外部評価の機能も併せ持っているものとなっているのかなと思います。
 自己点検・評価の目的は、大学の活動の「改善」と「説明」です(点検・評価規定)。「改善」を行うためには、日々の活動を、なるべく多くの構成員が関わって、詳細に検討し、何がうまくいっていて、何がうまくいっていないのか、無駄な部分はどこで、どの部分は伸ばすべきなのかを詳細に検討する必要があります。
 大学の活動は、複雑で、かつそれぞれ専門性が高いですから、膨大なものになります。それでも、自分が直接関係するところ、例えばSFCや学生支援などを拾い読みすると、つっこみ不足な気がされるでしょう。他方、「説明」は、あくまで簡潔に、わかりやすく、というのはプレゼンテーションの基本ですね。
 しかし、ここでの説明は、いわば、オーディット(監査)のためのもので、「慶應義塾大学が自らのことをきちんと正確に把握し、外部の人の意見も聞く耳を持ち、改善に取り組んでいる」ことを「説明」するという性格のものになります。
 慶應義塾のウェブサイトの「慶應義塾について」をおりていくと、「慶應義塾大学点検・評価」は、下から三番目(あとは個人情報とBLSのみ)に出てきますね。つまり、全部を熟読するといった性格のものではなく、慶應義塾大学の全体、それぞれの部署や活動が、きちんと仕事をして自己改善にも取り組んでいるかを、関心があるところにいつでもずばっと入ってチェックする、という目的の文書だと思ってください。
(2)一般の学生が特に注意して読むと良い点
 第1に、読む視点を、今の自分だけに固定しないで、多面的に見てみると面白いと思います。大学にとって学生は大切な、人数で言えば最大の構成員です。学生は、学費を支払う「顧客(カスタマー)」であり、学術や研究活動の担い手であり(もしかしたらあなたが未来の教授になるかもしれません)、卒業すれば、慶應義塾大学の成果を社会に示す「プロダクト(商品)」としての役割と、同窓生として生涯慶應義塾の後輩たちを支援する「サポーター」としての役割を期待されます。
 大学の活動は、実際に学ぶという立場でみるよりも、ずっと広い文脈のものになっています。自分の視点を多様にもつことによって、大学にはこんな面もあったのか、という新たな発見があると思います。
 第2に、今度は逆に、ある特定のテーマに絞って、その部分だけを横断的に取り出して見るといいと思います。次の項目(特に関わりが強いと思われる点)と重なりますが、各学部の「学生生活の配慮」という項目を比較して読んでみると、学部によって非常に態度の違いがはっきりわかります。
 その上で、全学組織である学生総合センターをみてみましょう。そうすると、全学の体制と学部の体制は、本当につながっているのか、など、慶應大学の全体を知らない者にもすぐに理解できます。外部委員の先生も、慶應義塾は分権的だと指摘されていますが、では、この分権的であるということが、本当に機能しているのか、といったことも検証できると思います。
 第3に、学生としての自分自身の経験や実感と合うかどうかをチェックしてみてください。自己点検・評価は、第一義的には慶應義塾大学の教職員が、自分たちの活動をきちんと点検し、実態を把握した上で外部の意見も聞きながら自己評価し、改善策を含めて社会に説明するというものです。
 当然、実態とずれていてはいけませんし、慶應義塾の教職員が、どれくらい学生とコミュニケーションをきちんと取れていて、現実を直視して、その上で問題解決の道筋をつけて解決に着手しているか、が学生からみたチェックのポイントです。
 SFC CLIPの編集部では「課題への具体的取り組み内容に関する記述が少ない」と感想を述べていらっしゃいますが、そういう感覚を学生に与えているとしたら、そこはうまくいっていないととらえるべきでしょう。また、社会に公表する以上、まったく無防備に自らの姿をさらす、何の解決策も打たずにただ問題点をさらけ出すのは、むしろ無責任な態度です。
 ただ、ここでの責任がある態度というのは、「パンフレットのような文言」を列べることではなく、厳しく現実を直視し、外部が納得する解決策を示し、かつ、すでに着手していることころを見せることよって行うべきでしょう。
(3)一般の学生にとって特に関わりが強いと思われる点
 以下のところを中心に、全学、各学部を見比べながら読まれると良いのではないかと思います。
a. 理念・目的・教育目標
 
 これは、学生として「知っているか」、教職員が「知っているか」というチェックがまずできますし、この目的・目標と各活動がロジカルに組織だって一貫してつながっているか、というチェックもできます。
b. 教育研究の内容と条件整備
 ここは、教育を実際に受ける立場にある学生として、事実なのか?、本当か?、学部ごとにばらばらではないか?、問題点をきちんと認識しているか?、解決しようと本気でしているか?、を厳しくチェックされたらよいと思います。
c. 学生生活への配慮
 ここも厳しくチェックしてみてください。私の率直な感想は、学部や部署によって、ずいぶん熱心さにばらつきが大きい、というものです。
d. 卒業生との関わり
 ここは、多くの皆さんが本当にすぐに、直接関わるようになる部分ですし、慶應義塾の「売り」でしょう。慶應義塾の全体的な目標やプラン、各学部の活動と、本当に密接に関わっていますか? 厳しくチェックしてみてください。