3月18日(日)より、鉄道・バスで利用できる非接触型ICカード乗車券「PASMO」がサービスを開始する。湘南台駅に乗り入れている鉄道3路線のほか、ツインライナーでも利用が可能に。バス利用に限っては、ポイントが還元されるシステムだが、従来のバス共通カードより還元率で劣ることがわかった。


●関東の交通網を覆う新たな電子マネー
 PASMOはSuicaやEdyと同様の非接触型ICカード。3月から鉄道23・バス31の合計54の事業者で利用が可能になり、将来的には101の事業者が参加する予定。電子マネー機能も持っており、駅構内の売店や自動販売機など1000ヶ所以上でも利用でき、これも急ピッチで増える見込みだ。この他、WEBサイトでの履歴照会サービス(登録ユーザのみ)、クレジットカードからの自動入金サービスも持つなど多機能さも売り。小田急のように、乗車による独自のポイントサービスを開始する事業者もある。
 また、Suicaとの互換サービスも同時に開始。Suica対応の鉄道事業者での利用はもちろん、Suicaでの決済が可能な店舗でのPASMO利用も、逆にSuicaをPASMOとして使うことも可能だ。また、SuicaもしくはPASMOの双方にまたがる区間の鉄道定期券も購入できるようになる。これにより、Suica・PASMOのいずれかを持てば、関東やその周辺での鉄道・バス利用は事足りることとなる。
●湘南台駅は準備完了 バスはツインライナーから
 鉄道各社では自動改札機・自動券売機等の改良・交換でPASMOに対応しており、この作業はかなり進んでいる。湘南台駅の各社改札口には1月26日(金)現在で既に設置済み。利用法はSuicaと全く同じで、改札機上部にタッチするだけ。サービス初日から不自由なく利用できそうだ。

一方、バス車両への導入は鉄道よりは遅れる見込み。主要事業者でも、都バス(東京都交通局)のように初日から大半で導入される例は稀で、一部路線でのサービス開始から順次拡大していく例が多い。神奈川中央交通も3月時点では、ツインライナー及び戸塚営業所管内の路線(SFCには乗り入れていない)だけで利用できる。ツインライナーには既にPASMO対応機器が設置されてるが、バス共通カードも利用できる。
●複雑な還元額計算
 バス乗車時のみ、PASMOでもバス共通カード同様に「おまけ」がつく。ただし月毎の利用状況をバスポイントとして蓄積し、それに応じた額を還元する仕組みで、期限のないバス共通カードに比べ計算方式は複雑になる。1000ポイントから10000ポイントまで、1000ポイント単位で以下のように還元額が算出されるが、端数は切り捨ててられる。また、11000ポイントを超えた場合は、リセットされて10000ポイント+1000ポイントという計算になってしまう。

バスポイント還元額
1000ポイント100円
2000ポイント200円
3000ポイント300円
4000ポイント400円
5000ポイント850円
6000ポイント1020円
7000ポイント1190円
8000ポイント1360円
9000ポイント1530円
10000ポイント1700円

なお、神奈川中央交通では利用額10円につき10ポイントが貯まるが、これは事業者によって変動する。
●月400円の差額が出る場合も
 上記の還元額を元に、慶応大学-湘南台駅西口間の210円の月間の利用回数による還元率を60回までの範囲で算出したところ、下図のようになった。バス共通カードは期限がなく翌月以降も使えるため、利用回数に関係なく一定とした。

図のように、PASMO利用での還元率は5000円のバス共通カードに及ぶことはない。5000円以下、つまり23回以下の利用では1000円のカードの還元率10%にも及ばない。また、1000円単位の切り捨て計算のため、還元率の変動が激しい。さらに、10000円を超えるとリセットされてしまうため、極端に還元率が落ちていく。

回数毎のPASOMOと5000円カード利用時の還元額の差額を計算すると上図のようになった。月間の利用が24-48回の範囲以外では、かなりの差がつくことがわかる。最大では、23回利用時に421円の差がつく。バスでのPASMO利用で「得する」可能性は存在しない。
●バス共通カードは当面利用可能
 PASMO導入はパスネット・バス共通カードの利用可能事業者を中心に行われるが、今後のサービス継続は両陣営で対応が分かれる。パスネットは「PASMOの普及状況を見ながら、お客さまにご迷惑のかからない時期にパスネットの発売を中止する方向で検討」と中止が前提であるのに対し、バス共通カードは「PASMOの普及状況を見ながら、バス共通カードの今後の扱いについて検討」という表現で発表が行われている。
 もちろん、電車定期券とまとめられるなどのメリットはあるが、バスの全車両でPASMO利用が可能になるのはまだ先。結局はバス共通カードも併せ持つ利用者が殆どだろう。それならば、鉄道はPASMOで快適に利用しつつ、バス利用はバス共通カードで貫くというのが、当面の賢い使い方となりそうだ。