20日(火)、先端生命科学研究所が、遺伝子にデータを書き込み保存する新技術を発表した。これは遺伝子に人工的なデジタルデータを書き込むと、その生物が本来持っているゲノム配列と共に遺伝されていくことを利用して、長期間のデータ保存を可能にしたもの。


 今回の研究では枯草菌という細菌のDNAに対して書き込み・読み取りを行ってきた。また、コンピュータシミュレーションで、数百年から数千年に渡って保存できる可能性も示した。
 書き込みには、「ジャンクDNA」と呼ばれる、遺伝子の中でも生命活動への影響が小さいと考えられている領域を使用している。一般に生物の遺伝子配列は世代交代の際に徐々に変化してしまうが、遺伝子の複数個所に同じデータを書き込み、さらにエラー検出やパリティチェックも行われるため、高い信頼性が確保される。
 この技術では、CD-ROMやハードディスクといった従来の記憶媒体に比べ、遥かに長期間の保存ができるため、様々な応用が考えられる。植物で広く利用できるようになれば、品種改良した植物のライセンスを、電子署名として植物そのものに保存することも可能になる。
 同研究所所長の冨田勝環境情報学部長はSFC CLIPの取材に対し、「これは3人のSFC生が中心になって行った研究です。『デジタルデータを微生物に長期間保存する』という型破りな発想と、それを実際に実験で実現した行動力と、それを可能にした分野融合的な研究環境は、SFCの誇りです」とコメントした。
 また、品種改良した植物のライセンスを電子署名として書き込んだ場合、遺伝子組み換え植物になるのではないかとの質問には「いわゆる『遺伝子組み換え』と比べて安全性に与える影響は格段と小さいです。いずれそのことが消費者に理解されると思います」と答えた。