10日(水)、『異端の系譜-慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス-』が中公新書ラクレ発売された。著者は読売新聞記者の中西茂。


『異端の系譜』というタイトルからもわかるように、開設から20年を経てなお「異端」として扱われるSFCだが、本書にはその誕生から草創期を支えてきた人々の系譜が綴られている。現両学部長の話はもちろん、加藤寛初代総合政策学部長の退任演説など、SFC関係者ならだれもが知っている人物や団体、エピソードが随所に散らばっている。
 著者の中西茂氏は早稲田大学出身の読売新聞記者。記者としてのキャリアの半分以上を教育問題の追究にあて、同紙の長期連載企画「教育ルネサンス」のデスクを長く務めたその分野の専門家である。つまり本書は慶應社中「外」の方による執筆で、日本の大学の現状にまで踏み込んだ内容となっており、単なるSFC20周年企画とは一線を画すものとなっている。
 なぜ筆者はSFCについて本を執筆しようと考えたのか。あとがきにはこうある。

 本書の出発点は、読売新聞の長期連載「教育ルネサンス」で「慶大SFC20年」というシリーズを取材したことにある。それを本にまとめたいと思った大きなきっかけの一つは、この取材で会った卒業生たちの、あまりのおもしろさだった。

その「あまりのおもしろさ」と表される卒業生たちへの緻密な取材は、本書の中核を担っている。「途上国から世界に通じるブランドを」をテーマに活躍するマザーハウスの山口絵理子さん(04年総卒)や、NPO法人カタリバの今村久美さん(02年環卒)など、多様な選択肢をもてるSFCらしい卒業生が多く登場する。
 これからのSFCはどうあるべきか。20周年という節目の年にその問いを考える上でも、必読の1冊と言えるだろう。