奥田敦研究会はアラブ世界から日本を学ぶ学生を招く、第10回アラブ人学生歓迎プログラム(APS2011)を23日(日)よりSFCにて開催している。期間は11月6日(日)までの2週間。日本とアラブ世界の掛け橋ともなるこのイベントに、SFC CLIPは取材を行った。

(写真は関係者様からの依頼により削除させていただきました)

ASPは今回で10回目。奥田敦研究会の活動の一環として行われている日本語短期研修プログラムだ。日本人学生との交流を目的に、アラビヤ語現地研修をサポートしているアラブ人チューターを日本に招聘している。
 来日してもらったアラブ人チューターはSFCの学生と一緒に、日本語ビデオスキットの制作や、日本語による個別の研究レポートの作成、日本文化体験、アラビヤ語によるディスカッションなどを行う。
 今年度のテーマは「SFCから始まるジハード~実践型学術交流の10年目~」。「ジハード」とは、元来、信仰や価値観の異なる人々の間に、良好な関係を築く不断の努力を意味している。参加者のひとりひとりが互いの違いを乗り越える自分自身の変化を通じて、新時代の日本とアラブ・イスラーム世界のさらなる関係構築を目指すプログラムである。
 招聘者たちは、出身国も研究テーマもそれぞれ異なる。日本人の愛情表現、俳句、はたまた日本の医療システムについて調査している学生もいる。
 日本人の印象について彼らに聞いてみると、返ってきた意見は一様に「仕事を真面目にする」ということだった。レポートの中間発表の中でも「モロッコが発展するには仕事に対する考え方の変化が必要」「日本人は宗教についていつも考えているわけでもないのに、ムスリムの礼拝のように、働くのが当然みたい」と語り、労働観に特に大きな隔たりを感じるようだ。
 学生の就職意識について聞くと、「(アラブ世界の)学生は勉強している間に仕事のことを考えない」と、当たり前のように返す。その背景には、不安定な政治情勢の中で、就職活動よりまず大学での勉強を大切にする意識を垣間見ることができた。

(写真は関係者様からの依頼により削除させていただきました)

10年間継続されてきたプログラムだが、今年の開催には例年とは違う意味があるようだ。ASP2011の実行委員長の佐野圭崇さん(総3)に話を聞くと「今年は日本で大震災、アラブ諸国では政治的な多くの騒乱があった。開催できたこと自体が喜ばしいことだ」と語った。
 アラブについて反政府デモやテロリズムの影響でネガティブなイメージを持っている人もいるのではないだろうか。そのような偏見を払拭する意味でも、このASPは大きな意義を持ったプログラムだ。日本もアラブ諸国も混乱の最中だからこそ、SFCでの学術交流が極めて重要な意味を持つ。
 招聘者たちは、11月6日(日)まで湘南藤沢キャンパスで勉強している。彼らは皆、日本語を学ぶ学生なので、見かけたら気軽に声をかけてみよう。