近い将来、湘南台駅からSFCまで鉄道がつながる可能性が見えてきた。神奈川県、藤沢市、相模鉄道および慶應義塾の間で設立されていた「いずみ野線延伸の実現に向けた検討会」が、延伸の実現に向けた具体的なプランを発表した。

いずみ野線の延伸経緯

 現在、湘南台駅まで延伸開業している相模鉄道いずみ野線(以下、いずみ野線)は、相鉄本線の二俣川駅から南に分岐し湘南台駅までを結ぶ鉄道路線である。この路線は、開発時点で二俣川から茅ヶ崎方面を経て平塚までを結ぶ計画となっており、相鉄側は平塚市までの延伸免許も取得していた。

 しかしながら湘南台以西の区間は、接続すべきターミナル駅が平塚駅までの間に存在しないことや、事業採算性が見込めないなどの理由から、具体的な着工予定などのないまま膠着状態が続いていた。

 その後、2004年度に神奈川県によって設立された「いずみ野線の延伸研究会」の研究結果に基づき、湘南台以西の第一期区間として、茅ヶ崎方面へ一気に開業するのではなく、まずはSFCまでの延伸を目指すとして、2010年度に新たに神奈川県、藤沢市、相模鉄道および慶應義塾の間で「いずみ野線延伸の実現に向けた検討会」が設立され、延伸について具体的な検討が行われてきた。

10両編成がSFCまで直通

 今回の検討会でとりまとめられた案は、湘南台駅からSFCまでの約3kmの区間に単線の鉄道を敷設する計画である。

 現在、いずみ野線は湘南台駅の地下2階に乗り入れているが、計画ではそのまま地下から西に延伸し、単線で引地川の下をくぐって南大山周辺に地下駅であるA駅(湘南台駅から1.9km地点)を建設し、その先の斜面から地上に出て高架線を通りSFC周辺の高架駅であるB駅(湘南台駅から3.3km地点)までを結ぶものとなっている。なお、その西側に相鉄の車両基地を建設することとされている。

 いずみ野線には現在10両編成の車両が直通しており、1編成あたりの定員は1400人である。SFCまでの区間も、この編成を車両の増解結なしでそのまま直通させる計画だ。つまり、横浜方面からいずみ野線で通学している学生は、電車を降りることなくSFCまで来られるようになる。

大幅な時間短縮

 計画ではA駅・B駅ともに待避線が整備され、どちらの駅でも上り方面と下り方面の列車の交換が可能となるが、単線であるため、現行のいずみ野線と同密度での運行は不可能であるとのこと。

 運行本数はピーク時1時間あたり5本、オフピーク時1時間あたり3本とされ、単純に算出すると朝夕の通学時間帯には12分に1本、それ以外の時間は20分に1本の列車が運行されることになる。

 バスより運行頻度は落ちるかもしれないが、輸送能力が段違いであるため、バス待ちの列に並ぶ時間を差し引けば、通学時間も確実に短縮されるだろう。

SFCから渋谷・目黒、さらに日吉・三田へも直通

 相鉄では現在、都心直通プロジェクトとして、JR線武蔵小杉駅方面と東急線日吉駅方面への直通計画が進行しており、JR線とは2015年に、東急線とは2018年に直通開始予定である。

 これとともにいずみ野線の延伸が実現すれば、SFCから電車にのり、新横浜や渋谷・目黒へ乗り換えなしで向かうことができることになる。

 なお、延伸案ではSFCから渋谷駅まで乗り換えなしで56分と試算されている。現在は、SFCからバスで湘南台駅まで向かい、湘南台駅で横浜市営地下鉄ブルーラインに乗り換え、戸塚駅でJR線に乗り継ぎ渋谷駅まで向かうのが最短ルートであり、これは合計85分かかることを考慮すると、大幅な時間短縮が期待される。

 また、相鉄直通線が乗り入れ予定の東急目黒線は、都営三田線への直通運転が予定されているため、将来的には、SFCと日吉・三田が乗り換えなしでつながる可能性がある。

新線に期待される、新しいまちづくり

 藤沢市は湘南台駅周辺を北部の中核の1つとして都市開発を進めてきたが、いずみ野線が湘南台駅から延伸すれば、これまで交通の空白地帯であった地域にも新たな拠点性が生まれる。

 いずみ野線の延伸が早期に実現し、藤沢市や周辺地域に多くの良い影響を与えることに期待したい。