ORF1日目のプレミアムセッション「全国自治体ICTサミット」では、自治体によるICTを利用したデータの運用・共有をテーマとし、全国の自治体から首長を招いての議論が行われた。


■パネリスト

・本田敏秋氏(遠野市長)

・武田勝玄氏(河南町長) 

・堀内茂氏(富士吉田市長)

・竹内昰俊氏(会津坂下町長)

・阿部裕行氏(多摩市長)

・服部信明氏(芽ヶ崎市長)

・布施孝尚氏(登米市長)

・桑原真琴氏(瀬戸内副市長)

・岸本英雄氏(玄海町長)

・國領二郎総合政策学部教授(司会)

・飯盛義徳総合政策学部准教授


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 自治体の運営は多くのデータを把握し、運用する必要がある。今日では、コンピューターを使いデータを処理することが多いが、そのソフトウェアを巡って課題があるようだ。

 武田氏は、現状について「メーカーが次々と出してくる最新の情報処理ソフトに自治体側が振り回されている。使用しているソフトについても自治体ごとに違うため、情報の共有が難しくなっている」と説明した。他の首長達も共通のソフトが必要であると口を揃える。各自治体が共通のソフトでデータをまとめていないと、円滑な情報共有は難しいということが浮き彫りになった。加えて、堀内氏は「合併が起きた場合、別のソフトで作成されたデータを再構築するには多額の資金がかかってしまう」と語った。

 そこで、自治体でも基盤となるシステムを作ろうという動きがある。セッションでは、SFC研究所と富士吉田市が共同で開発している「教職員業務支援システム」が紹介された。これは、今まで手作業が主であった教員による帳票作成を、コンピューターによって支援しようという計画だ。指導要録、出席簿等がクラウド化され、事務作業の効率化を図る。

 堀内氏は、「先生達の職務を助け、生徒と向き合える時間を増やしてあげたい。いじめの防止にも繋がると思う」と、期待を寄せた。


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 一方、新しいシステムの開発には多額のコストがかかる。布施氏は、先駆けて開発・実行した自治体がコストを被ることになる現状では、足踏みしてしまう自治体も多いと指摘。他の首長からも、国からの支援が必要で、もっと自治体同士でまとまって行動したいとの意見が出た。

 優れたシステムを作り、それが各自治体で共有されれば業務の効率化、円滑な協力が可能だ。そのためには中央省庁の協力も不可欠だろう。「新しいシステムのメリットをしっかり発信していき、最終的には総務省が各自治体へ統一されたシステムを供給することが理想」と桑原氏は語った。



 今回の議論で、各自治体とも問題点や解決の糸口は見えているものの、なかなか足並みをそろえた行動ができていない様子が伺えた。

 新しく効率的な自治運営を行うには、多くの自治体が声を大にし、中央省庁も巻き込んだ抜本的な改革が必要になってくるだろう。ICTを活用したシステムの構築にSFCも動き出している。今後の発展に期待したい。