11月22日(金)、ORFにてセッション「『日本研究概論』と『MOOC』」が行われた。今期より開講された「日本研究概論」の理念やその目的、また「MOOC(Massive open online courseの略、WEB上で無料参加できる大規模講義)」の概念についてディスカッションを行った。


■パネリスト

中山俊樹 株式会社NTTドコモ執行役員

山内祐平 東京大学大学院 情報学環 学際情報学府准教授

國領二郎 常任理事/総合政策学部教授

加茂具樹 総合政策学部准教授


問われる日本の発信力

[セッション]MOOC3


 セッションは、國領教授の問題意識についての説明から始まった。國領教授は、現在日本の存在感が世界の中でどんどん希薄化してしまっていることを指摘。しかし一方で、世界中の大学が、自国以外の国に目を向ける流れが広まっているため、日本にチャンスはある。今、日本がきちんと日本のことを発信していくことが重要だと語られた。

 続いて中山氏は、この「日本研究概論」にドコモが関わる意義について説明。ドコモはこれまでの通信事業に加え、新たに「学び」など、生活により踏み込んだサービスを展開していきたいと中山氏は言う。クラウドやモバイル環境などを利用し、リアルとオンラインのハイブリッドな学びの場を提供していきたいと語った。
 「日本研究概論」は、この新しい学びの形を模索する場でもあり、後述する「MOOC」の実現にドコモが協力をすることをプレゼンを交えつつ説明した。


「反転授業」とMOOC

[セッション]MOOC2


 東京大学の山内氏は、アメリカで普及し始めている「反転授業」という取り組みについて説明。従来の授業では、導入となる基礎の学習を学校の講義で行い、宿題などで応用問題を学習させてきた。「反転授業」では、事前にオンラインで基礎部分の学習を配信し、実際の対面授業ではディスカッションなどを行い理解を深める学習方法だ。
 この「反転授業」の概念が広まると同時に、注目されているのが「MOOC」だ。 MOOCとは、Massive open online courseの略であり、WEB上で無料参加できる大規模講義のこと。「反転授業」の取り組みを、大学で実現する場合には、「MOOC」が大きく活用されると期待されている。

[セッション]MOOC1


 加茂准教授は、「日本研究概論」の授業発足までの経緯と、これまでの授業での模索について話した。
 従来の、源氏物語や歌舞伎等の古典を通じた日本研究と異なり、新しい日本研究を模索する狙いと同時に、あらかじめ10分ほどの授業映像を配信し、「反転授業」の実験をしていることを説明した。


「日本研究概論」の今後の展望は?

[セッション]MOOC5


 ディスカッションでは、今後の展望について議論が及んだ。國領教授は「『日本研究概論』は現在はSFCでの実験だが、今後は世界展開していきたい」と語る。「反転授業」を根付かせる為には、形式を揃えるだけでなく、コミュニティが育っていかなくてはならないことを指摘した。
 また、途中から参加した村井学部長は「教育をオンライン化することは、多くの人が無料で学習者になれること以上に、その際に全く新しい知恵が生まれる可能性につながる」と語った。
 さまざまな実験が行われる「日本研究概論」。今後の取り組みに期待したい。