11月25日、軟式野球サークルの塾内大会決勝戦が大田スタジアムで行われ、SFCの「Slayers」が前回優勝の「丘の上ヒルズ(日吉キャンパス)」を1-3で破り、初優勝を果たした。

先制されるも、チャンスを活かし勝利

 1回戦から3回戦にかけて日吉キャンパスの強豪チームを倒し、決勝戦では前大会優勝チーム、丘の上ヒルズと戦った。
 Slayersは後攻。2回表、2死から四球でランナーを出すと、そこにセンター戸村友亮(環3)のエラーが重なり相手に先制される。
 しかし、5回裏、1死2・3塁の場面で投手小林徹也(環2)が適時打を放ち、2点を入れて逆転。続くチャンスに戸村がセカンドゴロで小林をホームに還し、さらに1点を追加した。2回表の自身の失点を挽回する戸村のこの1点が決め手となり、1-3でSlayersが初めて慶應1位を勝ち取った。

 Slayersは50人ほどのメンバーを抱え、毎週水曜日に藤沢市の女坂スポーツ広場野球場で練習している。初心者や途中入部者も多く、仲間づくりを大切にする柔らかい雰囲気が特徴だ。秋祭でミスターSFCに選ばれた熊木俊輔さん(環3)も、その一員である。
 今回の決勝戦の様子やこれまでの道のり、そして仲間づくりについて、代表の戸村友亮さん(環3)、副代表の宮坂航亮さん(環3)、下田卓也さん(環3)に話を聞いた。

“Slayersの色”を出して勝利へ

 「Slayersの色が出た試合だった」と宮坂さんは決勝戦を表現する。Slayersはゆるい雰囲気のサークルで、ガチガチの体育会系というわけではない。そのため、いざ試合が始まると緊張のあまりチームの歯車が狂い出し、そのまま負けてしまうことが多いという。
 戸村さんは「決勝なのでみんながすごく緊張していた。自分が普段の柔らかい雰囲気を出していかなければと思った」と振り返る。

Slayers1(戸村さん)代表の戸村さんはチームの柔らかい雰囲気を大切にしている。


 結果的に、戸村さんのエラーがチームの張り詰めた空気を和らげることにつながった。試合中も柔らかい雰囲気を作っていくことがSlayersの色として選手たちを落ち着かせ、彼らの力を発揮させることができたというわけだ。
 「”良いプレー”だったよね」という宮坂さんの冗談に「別にエラーしようとしたわけじゃないって」と戸村さんが笑顔でツッコミ。そんなところからもチームの楽しい雰囲気を読み取ることができる。

 一方、下田さんは「先制されたときは負けを予感した」という。代表の戸村さんのプレーがチームの勝敗を左右する。戸村さんが落ち込めばチームも落ち込み、逆も同じとのこと。
 また、これまでの試合では、先制されると負けるという傾向があり、下田さんは今回もその流れを危惧していた。その上で「1失点で凌げてよかった。それから点を取り戻そうという空気がチーム内に生まれ、逆転に持っていくことができた」と冷静に分析した。

アクシデントが起こるも、逆に天気に恵まれた

 決勝戦の前にはアクシデントもあった。3回戦で戸村さんが肉離れを起こし、彼の決勝戦への出場が危ぶまれたのだ。このピンチにメンバーの気持ちはとても沈んだ。
 そんなとき、お天道様は見ているのだろうか、雨天で2度も決勝戦が延期になった。

Slayers2(宮坂さん)副代表の宮坂さんは執行代のバランスを保つ存在だ。


 「戸村も出られるぞ」とチームは喜び、天気に逆に恵まれる形となった。「野球の神様はいるなと思った」と宮坂さん。下田さんは「チームを引っ張っているやつは最後には報われるんだ」と笑顔を見せた。

「戸村を胴上げしたい」というチームの想い

 「戸村を胴上げしたい気持ちが強かった」と下田さんは切り出す。下田さんは2年生の夏からSlayersに入った。同じ高校の先輩らに誘われたのがきっかけだ。そのきっかけを作ってくれた先輩や、自分を受け入れてくれた仲間たちへの感謝の気持ちをずっと持っていたという。

Slayers3(下田さん)下田さんはチームを勝たせようと練習に厳しく力を入れた。


 下田さんは執行代の先輩としてチームを勝たせようとして練習に力を入れていた。先輩や仲間といったチームへの恩返しの気持ちは、優勝して戸村さんを胴上げしようという目標を生み出したのだ。この下田さんの想いに対し、戸村さんは「下田は練習のとき、一番厳しくちゃんとやってくれていたので感謝している」と照れくさそうだ。

 だが、「Slayersは個が強いチーム」と宮坂さんが言うように、初戦のころはチームがばらばらだった。
 それでも、戸村さんの献身的な姿をみんなが目にしていたため、下田さんの気持ちはチーム全体に自然と広がっていった。その強く掲げられた目標が、強豪チームとの戦いを乗り越えた勝利につながった。

「出会えてよかった」執行代の深い絆

 この優勝を最後にして、執行代の3人は引退する。「出会えてよかった」とそれぞれに振り返る3人。
 Slayersは練習量では日吉キャンパスの強豪チームに敵わないからこそ、普段から仲間との絆を大切にしてきた。メンバーはとても仲がよく、気がつけば一緒にいる。ともに過ごしていく中で、自然と連帯感や責任感が芽生えてくるという。

Slayers4(談笑)


 特に執行代の絆は深い。「寝言を何回聞いたことか」というほどだ。そんな3人にとって、良い締めくくりとなった。2回戦では宮坂さんが逆転の適時打、3回戦では下田さんのホームラン、決勝戦は戸村さんの追加点。「執行代の3人が、各試合の打つべきところでちゃんと打てた」と3人は満足そうだ。

出会った仲間を大切にするチームに

 最後に、引退に際し、Slayersの後輩たちへのメッセージをお願いした。戸村さんは「代表をやってみて、楽しいことも大変なこともあった。そういう経験をしているので、後輩たちの相談に応えられるようにしたい。執行代ではなくなるが、最上級生としてチームの一員であることは変わりない。より良いチームになるよう、新しい執行代をサポートしていきたい」と力強く話した。

 宮坂さんは「優勝した後の食事会で、『宮坂さんと野球ができてよかったです』と泣きながら言ってくれた後輩がいた。とても感動した。悩むこともあるけど、後輩たちには、せっかく出会った仲間を大切にしてほしい。最後に、一緒にやってきてよかったなと思える濃い仲間を作ってほしい」と仲間づくりの大切さを強調した。

 下田さんは「野球をやったことがなかった後輩が、『来るのが楽しい』『野球が楽しい』と言ってくれる。そういう声を聞くと、やっていてよかったなと感じる。勝つのが一番うれしいけど、楽しめる雰囲気づくりを忘れないでほしい」と冷静な表情に笑顔を浮かべた。

Slayers5(3人ガッツポーズ)


 Slayersでは途中入部も歓迎している。初心者も多く、野球や仲間づくりに興味があれば気軽に来てほしいとのことだ。戸村さん、宮坂さん、下田さんが大切していた濃い仲間づくりによって築かれた人間味あふれるチームの今後の活躍を応援したい。