SFC卒業生が中心となる集団「シネチュウ」 ライブイベントを開催
2月7日(金)、SFCの卒業生が中心となった集団「シネチュウ」がプロデュースしたイベント「PAPER MOON ~溶けない謎が浮かんだ夜に~」が開催される。シネチュウが空間演出を手掛け、気鋭のアーティストであるヒグチアイのライブを行う。シネチュウは、福田研の卒業生が在学中に立ち上げた、雑誌制作を行う団体。近年は雑誌という枠を飛び越え、イベントのプロデュースなど、様々な分野で活躍している。
今回、シネチュウの編集長である三栖かおるさん(13年総卒)にインタビューを行った。
–シネチュウというのはどういう集団なのでしょうか?
もともとは福田和也研究会の雑誌製作プロジェクトの一つでした。私は映画が好きだったので、映画雑誌を作ろうと思い、卒業までにVol.5まで制作しました。
もともとのメンバーはもう私だけになってしまっているんですが、その活動のなかで知り合った人たちと、活動を続けています。ほぼ社会人の集まりでみんな仕事の合間に時間をつくって活動している感じですね。
–もともとは福田和也研究会のプロジェクトの一つだったとのことですが、今回のようなイベントを企画するようになったのはなぜでしょう?
シネチュウを最初にやっていた時は、紙に強いこだわりがありました。紙で自分の作ったものを読んでもらう、ということに喜びを感じていたんです。紙への興味が高じて、出版社に転職もしました。
でも卒業プロジェクトとしてVol.5をつくり終えた頃から、紙へのこだわりは薄れていき、もっと色々なメディアを活用していきたいと考えるようになりました。
一貫したテーマがあればそれを、紙というメディアで伝えても、映像というメディアで伝えても、空間演出という方法で伝えてもいいと思うようになったんですね。
–シネチュウ編集部が制作した雑誌やプロデュースしたイベントに、なにか一貫したテーマのようなものはあるのでしょうか?
今回のような空間演出をするときは、シネチュウ編集部ではなく、「The ORDINARIES」という名前で活動しています。
「The ORDINARIES」っていうのは日常のモノやコトっていう意味で、日常から離れすぎないような「ちょっと背伸びした日常」というニュアンスを込めています。それがシネチュウ編集部のテーマです。
私は今25歳なんですけど、齢を重ねるにつれて、昔とは求めるエンターテイメントのタイプというのが変わってきたんです。昔は、悲しみから救ってくれるとか、人生を変えてくれるようなエンターテイメントを求めていました。ただ、いま求めるのはそれほど大げさなものではなく、なんとなく仕事で疲れた金曜の夜に見て、また頑張ろうっと思えるようなエンターテイメントなんです。
なのでフラッと入ったカフェで知らない女の子の歌を聞いてなんか良かったなって思う、いい夜だったなって思い返せるようなイベントをつくろう。そういうイメージで私たちは今回の企画をしたんです。
–素晴らしいテーマだと思います。しかし、それを空間演出という手法でやろうと思ったのはなぜですか?
シネチュウのVol.5をつくって、巻頭企画として歌手の安藤裕子さんインタビューをしたんです。安藤さんがインタビューの中で、地方でのイベントの話をして下さったことがきっかけの一つです。安藤さんは東京だとかなり大きな会場でライブを開いているんですが、地方だと200人も入らないくらいの小さな場所で歌ったりもするんです。そういう小さいハコだと普段会えないような人と会うことができて、コミュニケーションを取ることができる。パフォーマーとお客さんの間がすごく近い、そういう空間を大事にしたい。そんなお話を聞いて、あっそういう気持ちってなんかわかるなって思ったんですね。
また、去年の7月に「CINECHU FILM DISCUSSION〜今だからしたい映画のはなし」と銘打って女優の藤谷文子さんやミュージシャンの大槻ケンヂさんを招いて、その二人が映画の話をする夜、みたいなイベントをプロデュースしました。そこで、すごくアットホームで居心地の良い空間を作れたんです。テレビを見るでもなくラジオを聞くでもなく、その空間にいて相互的にコミュニケーションするっていうのがすごく新鮮で、満足度も高かったんですね。
そういう共感や、体験がもとになって「ちょっと背伸びした日常」というテーマを表現するのにぴったりだと思ったんです。
–今回のPAPER MOON ~溶けない謎が浮かんだ夜に~も、「背伸びしすぎない日常」というテーマにもとづいたものになるのでしょうか?
当日はミュージシャンのヒグチアイさんがライブを行います。以前、仕事の関係で、偶然ヒグチアイさんのライブを見させていただく機会があったんです。普段はどんなコンテンツを見聞きしてもすぐに忘れてしまうのに、ヒグチさんのライブだけは、忘れられなくて。それがきっかけで、ライブ演出をやらせてほしい、という依頼をしました。
PAPER MOONというのは、昔、家族写真を取る時の一番典型的な飾りが紙の月だったことに由来しています。家族写真を取るっていうのは日常の中のことなんだけど、ちょっと背伸びした日常ですよね。テーマの象徴として、ステージの飾りに紙の月を設置したり、いろいろな演出をします。
今回のイベントにはいろんな方に協力をお願いしているのですが、その方々にもこのテーマを意識していただくようにしています。
研究会時代から、イラストを提供してくれているイラストレーターの安藤晶子さんに「あまり背伸びしすぎない日常」というテーマでイラストを書いてもらい、過去の作品と一緒にライブに先立つ、2月1日から7日まで会場の「RAIN ON THE ROOF」にて展示をしています。
また、「紙の月」というテーマでヒグチアイさんが舞台で履く靴下のデザインを「ituka ituka」という靴下のブランドにお願いして、過去の作品と一緒に販売したりもしています。
会場をお借りする三軒茶屋のカフェ「RAIN ON THE ROOF」では、特別メニューとして「PAPER MOONプレート」というランチを販売して頂けることにもなりました。
–今後は空間演出をメインに活動を続けられるんでしょうか?
いえ、空間演出に専念するつもりは全くなくて、これからも紙の雑誌として「シネチュウ」を出していくつもりですし、新しくWebサイトも作りたいと思っています。
卒業後も変化を続けるシネチュウ。新しいメンバーを募集中とのこと。連絡先は [email protected] 、興味がある方は連絡してみよう。
PAPER MOON ~溶けない謎が浮かんだ夜に~@三軒茶屋RAIN ON THE ROOF
ヒグチアイSPECAL LIVE
まやかしの月明かりの下、
温かい飲み物と心地よい光と音楽を。
OPEN 18:30 CLOSE:19:00
チケット: ADV2500yen / DOOR 3000yen(1D別)
出演: ヒグチアイ
演出: 三栖かおる(総卒)
美術: 安藤晶子
映像監督: 石井ソウタロウ(総4)
録音: 尾崎裕哉(環卒)
制作: 山口勇貴(総卒)
協力: 平井薫子(環卒)、小野真莉菜(総卒)