7月10日(金)17:15より、SFC研究所イスラーム研究・ラボと奥田敦研究会は、断食明の夕食会「ラマダーンナイト」を開催する。当日はイスラームや奥田研のプロジェクトに関するパネルディスカッションが行われ、イスラーム圏の料理が振る舞われる。断食をしていない人の参加も歓迎しているため、興味のある人は積極的に参加しよう。

参加の申し込みは以下のWebページから行う。

  • 奥田敦研究会―2015/07/10 ラマダーン・ナイト@SFC
     

    ラマダーンとは?

    イスラーム暦第9月の名前である。イスラム教徒はこのラマダーン月の間は、夜明け前から日没まで、飲食、争い、性行為などを行わないことが教えられている。これをサウム(斎戒)と呼ぶ。ラマダーン月のサウムはイスラームの義務の一つであり、基本的にすべての信徒に課せられる。
     日没後、初めての食事をイフタールと呼ぶ。今回のラマダーンナイトではイスラームや奥田研の活動に関するパネルディスカッションに加え、斎戒明けの夕食を味わうイフタール会が行われる。
     

    イスラームをもっと身近に! プログラム詳細

時間 内容 場所
16:45- 受付開始 Ω21
17:15- 開会 パネルディスカッションなど Ω21
19:15- 断食明の食事会 生協サウス

パネルディスカッションのテーマは「シリアに平和を 〜学術交流にできること〜」だ。イスラーム教徒ではない学生にとっては、深い理解を得る機会がないラマダーン。イスラーム教徒と一緒に身をもって学ぶことができるプログラムとなっている。

ラマダーンナイト2015のポスター

参加費は無料! 募金への協力を

パネルディスカッションなどの学びだけではなく、カバブやカレー、ビリヤニなど、イスラーム圏の料理も楽しめるこのイベント。多くの学生にイスラームへの理解を深めてもらうため、参加費は無料となっている。一方で、奥田研のプロジェクトへの募金を呼びかけている。ラマダーンナイトで集まった募金は、以下の2種類の奥田研のプロジェクトで使用される。

■シリア支援プロジェクト

現在シリア国内に残る約1820万人中、約65%にあたる約1200万人が人道支援を必要としている。そのうち持続的な支援を受けられず、深刻な状況に置かれている人々は約457万人とされている。4人に3人が貧困という状況である。なかでも激戦地となっているシリアの都市の一つ、アレッポでは、十分な食糧、水、電気にアクセスできない人も多く、子どもたちは十分な教育を受けることができていない。
 SFC研究所イスラーム研究・ラボでは、これまでに培った学術交流ネットワークを活かし、現地の慈善活動者たちと協力しながら、シリア国内、特にアレッポに残る国内避難民や現地貧困層に対して、食糧・物資支援、教育・就労支援などをおこなっている。

(奥田研より提供)

今回は特に、貧困家庭の子どもへの教育支援や職業訓練のための寄付を募集している。小中学生が1ヶ月学校に通うのに必要な金額は1人あたり500円、高校生・大学生が1ヶ月学ぶための費用は1人あたり700円だ。なお、集めた募金は一旦、慶應義塾の学校会計に指定寄付として計上し、その後、全額をアレッポもしくはトルコの現地パートナーに渡す。寄付金は全額、おもにシリア国内で教育支援活動に使われる予定だ。

■アラブ人学生歓迎プログラム(ASP)

2002年から例年11月ごろに奥田研が開催しているアラブ人学生歓迎プログラム(ASP)。アラブ諸国の日本語学習者をSFCに招聘し、アラビヤ語を学ぶSFCの学生のサポートのもと、日本語レポートの作成やスキット撮影をはじめ、ホームステイや旅行などの幅広い学術交流、日本文化体験を行う。「ASP」とは「アハラン・ワ・サハランプログラム」(Ahlan wa Sahlan Program)の略称であり、「アハラン・ワ・サハラン」とはアラビヤ語で「ようこそ」という意味だ。
 このプログラムは、アラビヤ語の現地研修でお世話になった人々への感謝の気持ちをきっかけにして始まった取り組みであり、招聘者であるアラブ人学生の渡航費、生活費などの費用は様々な寄付や学園祭模擬店の売上金などから拠出されている。

(写真は関係者様からの依頼により削除させていただきました)

「ラマダーンはみんなで共感できる」 主催者インタビュー

SFC研究所イスラーム研究・ラボ代表である奥田敦総合政策学部教授とラマダーンナイト学生幹事を務める戸田圭祐さん(政・メ博士課程)に話を聞いた。

—— ラマダーンナイトの目的はなんですか?

奥田教授:
 イスラームやラマダーンに対する理解を広げるということが目的です。ポイントは、参加者がイスラーム教徒であるかどうかを問わないということです。そうすれば、イスラーム教徒とそうではない人の交流の場にもなりますよね。

過去のラマダーンナイトの様子(奥田研より提供) 過去のラマダーンナイトの様子(奥田研より提供)

—— イスラーム教徒にとってラマダーンはどのような存在でしょうか?

奥田教授:
 日本の人は厳しい修行のように思うのかもしれません。確かに、夏だと起きているときに16時間以上も何も食べられないということがあります。ですが、断食が明けたあとのごはんが非常においしいんですよ。達成感や生きている実感というものを感じます。このような達成感は、例えば勉強やスポーツのように相当練習した一部の人にしか味わえないと思います。
 しかし、食べたときの喜びは人種や民族は関係ないですよね。人間として、その人の人種とか、お金があるとかないとか、そういったものを乗り越えて、みんなで共感できるということが大切だと思います。自分の気持ちを試されているし、誰かの命令でやっているわけでもなくアッラーの命令でやっていますからね。だから、やれば楽しいし、うれしくもあります。

戸田さん:
 過酷と言われてしまうのですが、イスラーム教徒はみんなこの期間を待ち望んでいます。やはり良い事をしようという月なので、断食以外に礼拝もするし、困っている人がいたらもちろん助けます。サダカ(自由喜捨、人間の義務として困窮者に施すこと)も出します。そういう期間でもあるので単純に苦しい期間ではないのです。

—— ラマダーンナイトに関心のある一般の学生にひとことお願いします。

奥田教授:
 ラマダーンナイトの日は、できれば昼ごはんを抜いてきてください。さっきまでたらふく食べていて、また食べてしまうのであれば、ありがたみも何もありません。一食抜いて、それでみんなでおいしいごはんを食べましょう。そこが出発地点になります。

戸田さん:
 今年のパネルディスカッションのテーマは「シリアに平和を~学術交流にできること~」になっています。参加者の方も一緒に、平和を改めて考えてもらえるとうれしいです。

(写真は関係者様からの依頼により削除させていただきました)

ラマダーンナイト当日のレポート記事も乞うご期待!

奥田教授と戸田さんの話から、イスラーム教徒にとっての「ラマダーン」を感じることができた。
 SFC CLIP編集部ではラマダーンナイト当日に実際に参加し、取材を行う予定だ。レポート記事をお楽しみに!