前号まで連載していた「SIGGRAPH2001」に続き、研究報告企画として、9月初旬に行われた、中島洋研究室による、大分県の地方新聞社「大分合同新聞社」での研修・コラボレーションについて、全5回の連載を行います。


 現在、地方新聞社は、地域に根ざした取材網、地域住民からの信頼感・親近感などにより、その大半が、地域内シェア50%以上を確保している。しかし、 ITの進展・普及によって「地域」の壁を越え情報が流通するなか、コンテンツの面で、全国新聞社など他の情報配信業者と差別化を図ることが急務となっている。
 特に、インターネット部門については、全国紙の先進的な取り組みに比べ、地方新聞社は大きく遅れをとっている、というのが現状である。どこからでも全国・全世界のニュースが閲覧できるインターネットにおいては、地方新聞社の現行の紙面づくり(共同通信からの全国ニュースの再送信が約50%を占有する)の手法は通用しない。インターネットを用いて、地域住民の生活に直結した情報、県外からのアクセスを誘引する地域発の情報を流通させることこそが、地方新聞サイトに求められている。
 今回の研修の目的は、地方新聞社の現状を把握すると同時に、そういった情報流通環境の変化のなか、地方新聞社が既得のアドバンテージを利用し、どのように次世代情報流通のモデルを構築していくか、ということについて、議論・提案することであった。全5日の研修日程の中で、大分合同新聞社の積極的な取り組み、そして、地方新聞社が向かっていく方向を垣間見ることができた。
 この連載では、大分合同新聞社の取り組みを報告するとともに、中島研究室が提案する「地方新聞の未来形-住民マイ・ポータル構想」を紹介していく。