研究報告企画として、9月初旬に行われた、中島洋研究室による、大分県の地方新聞社「大分合同新聞社」での研修・コラボレーションについて、全5回の連載をお届けしています。


 「インターネットは、だれでも参加できるメディア」と言われるが、情報発信のメリット・インセンティブが明確でなければ、「だれも参加しないメディア」になってしまう。地方新聞サイトでも、インタラクティブなシステムを用意し、自由に情報交流させる試みは数多くあるが、これらは必ずしも成功していない。
 大分合同新聞のサイトのBBSで、充実した議論が行われているのは、「サポーター制度」によるところが大きい。これは、新聞紙面で募り、面接で選び抜かれた「サポーター」と呼ばれる一般読者が、興味関心に応じて、映画・音楽・グルメなどエンターテイメント系の情報を中心に記事作成を行っている制度である。「サポーター」は、テーマ別BBSでの議論のファシリテートも請け負っている。充実した記事・議論が提供されいるのは、月2,000円という報酬に加え、各々の興味・知識とテーマが明確に結びついていることが挙げられる。紙媒体を窓口として、住民をWEBへと漸進的に移行させるこの制度は、各地方新聞社が見習うべきモデルであるともいえる。
 地方新聞社が「市民記者」を支援する試みとして、他にも、神奈川新聞の「市民記者サロン」、徳島新聞の「おぎゃっと21」、沖縄タイムスの「残さびらな・島くぅとば」などが挙げられる。いずれも、地域に住む特定の分野に深い知識・強い関心を持つ個人を見つけ出し、情報発信を促し支援するモデルとなっている。
 大分合同新聞社編集局から、「地方新聞社の役割は、"権力の監視"という側面に加え、地域をEncourageすることにある。地域の住民と、喜びや悲しみを分かち合いながら、ともに歩んでいる」という言葉が聞かれたが、双方向性が高まるインターネットにおいて、このことはいっそう重要になってくるであろう。