研究報告企画として、9月初旬に行われた、中島洋研究室による、大分県の地方新聞社「大分合同新聞社」での研修・コラボレーションについて、全5回の連載をお届けしています。


 連載の最終回ということで、大分合同新聞での研修とSFC CLIPの活動の関連性を述べる。研修の成果に準えて、いわば、ローカルメディア(地方新聞)としてのSFC CLIPの位置づけを再確認する。
 今回研修で訪れた大分県は、街頭に中小企業が軒を連ねて生活・産業基盤を支え、温泉街・大自然など観光地としても恵まれた土地柄にある、日本情緒ただよう「豊の国」である(3、4回参照)。そこで、大分合同新聞社は、メディアによって、県民・県全体を励ますと同時に、住民からの情報発信を先導する役割をおっていることは、これまで連載で述べたとおりである。
 これらを踏まえ、SFCという「地方」においてのSFC CLIPを考える。
 今回は、SFC CLIPへの示唆として、以下の3つの事柄を紹介する。
 一つは、編集局文化部での聞いたもので、生活情報を扱う際、後追い型の記事でなく、行動に直結する情報に対する需要が高まっている、ということである。例えば、「東京ディズニーシー」の話題扱うとき、「新しいテーマパークが完成した」という報道で終わらせず、「どうやったらチケットがとれるのか」「大分から最もいいアクセスは何なのか」という情報を提供しているそうだ。これは、住民にとって利便性を重視したコンテンツであるといえる。
 二つ目は、地域住民のメディアへの参加促進についてである。第3回で紹介した、「ぶんぶん」という個人広告は、その実例であり、紙面・ネットで相補的に、多くの人々の参加を促進している。「様々な環境の人にとって、最もアクセスしやすいメディアを」と多様な選択肢を提供することで、住民参加型メディアをコーディネートする試みである。
 三つ目は、連載で繰り返した通り、今後地方新聞社は、インターネットなど情報配信網がマルチになることを念頭に、情報を提供していく必要がある、ということだ。言うまでもなく、インターネットでは、新聞販売店がなくとも、地域外への情報発信が行える。このメディアの特性を活用し、地域外に住む、地域に興味のある人への情報発信を行っていく必要があるだろう。
 上記通り、地方新聞は、「住民にとっての利便性」「住民参加型メディアのコーディネート」「地域外への情報発信」といったことなどを鍵に、その業務を展開していることが垣間見れた。これらは、SFC CLIPにおいても、重要なポイントである。「住民にとっての利便性」については、いままでのSFC CLIPでも重視している点であるが、現状を見る限り、「住民参加型メディアのコーディネート」という点については、不十分であるといえる。2001年中には、システム的な双方向性を強化することによって、アクセサビリティを高める予定である。「地域外への情報発信」に関しても、キャンパス内での情報流通がメインであったが、キャンパス外利用者の拡大に伴い、キャンパス外部へのビジョン提示を行っていく。
 研修中「地域密着」という言葉が異口同音に聞かれたが、地方新聞社は、地域共に歩むことに核があり、そこの人々の生活を活気付ける役割を負っている。SFC CLIPも、情報提供や取材活動などを通して、SFCで活動する人々をサポート・エンカレッジしていこうと考える。