「メキシコに行くんだ。」と夏休みに入る前の私。友人は「メキシコって何語?」、親戚のおばさんは、「どこにあるんだい?」。スペイン語を学ぶ私にとって、それらは意外な質問であったが、一般にはメキシコはどこにあるのかさえよく知られていない未知の国なのかもしれない。


 そんな未知のメキシコ滞在の様子を、これから何度かにわたり、紹介していく。一ヶ月間では、“覗いた”としか言えないが、もうすぐ二十歳を迎える箱入り娘で好き嫌いが多くてわがままなひとりの大学生のメキシコ観を素直に書いていきたいと思う。しかも、スペイン語は入門レベル、英語は受験英語。発音が聞き取れず、憶測の部分も多い。メキシコ通!はこれを読んで思わず「ちょっと違うぞ・・・」コメントしたくなるかもしれない。読者からの意見は大歓迎だ。
  さて、前置きはこのくらいにして・・・。メキシコはどんなところなのだろう?今回のテーマは「さすがメキシコ!-大雑把なお買い物-」。お世辞にも“几帳面”と言えないメキシコ。お金に関しても“大雑把”で、細かいところにあまり執着がないらしい。
 ある日、ショッピングに疲れた私達は、ケーキのチェーンショップ「La Casa del Pastel OK Pasteria」に入った。「ケーキの家・オーケーケーキショップ」とでも訳すだろうか。日本の「不二家」のようなものだろう。ここでは、ファーストフード形式で店内でお茶することができる。ただ、レジと受け取るところは少し離れたところにあった。
 事件はこの店で起こった。私の友人Sはカプチーノの代金を支払い、2ペソ(約30円)のお釣りを待っていると、アルバイトと思われる店員が、「あらー、お釣りがないわ。ア!」と言って、思いついたかように、貯金箱から2ペソが取り出し、友人Sに笑顔で渡した。
 いくらお釣りがないからって、募金箱のお金を使うなんて!メキシコでは、お釣りのための小銭をあまり用意していないらしいが、だからと言って募金箱から取り出すなんてことあるだろうか。本日の帳簿には、どう書かれるのだろう。閉店後にマネージャーに怒鳴られるこのアルバイト店員の可哀想な姿を、思わず想像してしまう。と、いうかむしろ、この大雑把極まりないアルバイトを育てたマネージャーと、この店の売り上げを思わず心配してしまう。だが、これで驚いてはいけない。
 この話を聞いた後、「あぁ、大きいお金しかない。お釣りもらえないかもしれないな。貯金箱にはあまりお金が残っていないようだし・・・」と少々不安を抱きつつ、私がメニューを眺めていると、商品受け渡し担当と思われる店員に「何にしますか?」と訊かれた。「カフェ・モカをください。」と言い、支払いのためにレジの方へ向かおうとすると、席まで持っていくから待ってろと言われた。「あれれ?まだ代金払ってないんだけどなぁ。レジは売り上げを計算中だから、レストランみたいに席で清算するのかしら?」と考えつつ、言われたとおりに席で待つ。しばらくすると、店員はカフェ・モカを持ってきたが、請求せずに去ってしまった。
 そう、なんということか、私はタダ飲みをしてしまったのである。もちろん、お金を無理やり払うこともできたのだけど、スペイン語初級者の私は、この状況を説明して代金を払うことより、そのまま知らんぷりして飲んでしまう方を選んでしまった。またもや、この店の将来を心配してしまう私であった。そして、ここでお詫びしたい、「ごめんなさい。もう二度できないと思うので許してください。」
 いつも大変お世話になっているコンビニ。メキシコでもセブンイレブンやOXXO(メキシコにあったコンビニの名前)などが、日本ほどではないけれどたくさんある。いつものように私が水とお菓子を買うために、、9ペソ(約130円)支払おうとすると、「お釣りがないからチョコレートでいい?」と、言われ、キスチョコを1個渡された。ここまでくるともう、「さすがメキシコ」の一言。感覚としては、お釣りがもらえないこともあるんだから、チョコレートもらえてラッキー!というかんじ。メキシコの大雑把ぷりには驚いたが、「さすがメキシコ」の一言で許してしまっていた。日本にもこれくらいの余裕とラフさがあってもいいかもしれない・・・