「インダストリアルデザイン」の授業を担当する二瓶・環境情報学部非常勤教員の自主勉強会を紹介する。頭で考えるだけではなく、実際に手を動かして作ることが二瓶研のよさ、という。七夕祭では、小さな籠に入った光る卵、「どんぴか」を販売し、大盛況に終わった。現在は2月の展示会に向けて準備中だそうだ。
 自主勉強会メンバーの牛山達郎さん(総4)、小田周子さん(環4)、中山雄太さん(環4)にお話を伺った。

二瓶研設立のきっかけ -学生の自主的な呼びかけ

研究会が行われるようになったきっかけは?

二瓶先生の授業、「創作過程」(現、「インダストリアルデザイン」)を受けていた学
生が、先生にかけあってゼミを開いていただいたのがきっかけです。今年で5年目に
なります。

二瓶研の活動内容 -七夕祭でどんぴかを、2月には展示会

研究会ではどのようなことをしているのですか?

先生は、秋だけ授業を持っているので研究会も秋学期だけです。毎年2月に、展示会を催しているので、それを目標にして、メンバー作品を作ります。それがメインの活動ですね。
 春学期に活動したのは先学期が始めてで、先生はいらっしゃいませんでしたが、メンバーだけで、模型を作り、スキルアップをはかってきました。それを形にしたものが、七夕祭で販売した「どんぴか」です。120個用意していたんですが、すぐに完売するほどの好評ぶりでした。「どんぴか」は、WASABIグランプリで「WASABI技術賞」をいただきました。主に企業人向けのグランプリです。
 秋学期は、展示会に向けての準備活動が中心ですね。2月に行われる展示会は、新
宿を予定してます。

展示してきた作品

どのような作品を展示しているのですか?

毎年メンバーで決めたテーマにそって作品を作ります。去年は「異空間を遊ぶ」でした。
 僕(中山さん)は、LEDという豆電球みたいなものを使ってスピーカーを作りました。音が鳴ると、三次元的にLEDが光るんです。三次元的に光らせることで音を立体的に表現しようとしました。
 私(小田さん)は、天井に光る丸いボール乗せた布を貼り付けた、「天井照明」を作りました。たたいたり、自分で動かしたりして、光るボールを動かすことで天井の布が揺れます。
 僕(牛山さん)は、「ダッキーライト」というものを作りました。抱き枕のようなもので、照明電球を包んだクッションを抱っこしながら本を読むことができる、というものです。光を抱いてごろごろしながら本を読むことができるんですよ。

展示会では実際にこれらの作品に触って体験することができるのですか?


 部屋全体がテーマに沿って一体となったような作品展示になっています。ひとつの部屋として表現しているんです。一人2m×2mのスペースが分け与えられ、13人みんなで展示会会場を作り上げます。

手でつくることの面白さと大変さ

研究会のよさはどこに?

部屋の中にこんなものがあったらいいな、というものを想像だけではなくて、実際に作って、体験することができるわけです。技術屋になる人もいますね。みんなで教えあいながら作っています。外注することもたまにありますが、基本的には自分の手で作っています。

作品の商品化はしているのですか?

そこまでは進んでいません。でも、先生がいつもおっしゃっているのは、作品になるくらいの完成度を目指せ、ということです。メンバーのうちの一人が「寄りかかる椅子」というのを作ったんですが、それは外部の展示会場から「展示しませんか?」とお呼びがかかりました。でも、結局、椅子が大きすぎて、ドアから運ぶことができず、展示することができなかったんですが・・・。

作品制作は大変でしょうね。

規模が大きいものを作るときは、家に持って帰ることができないので大変です。

材料はどのように入手しているのですか?

ハンズや秋葉原の問屋街まで行ったりします。失敗しながら作り上げていくので、材料費は実際の2倍も3倍もかかってしまいます。はじめ使ってみた材料ではうまくいかない、ってこともありますしね。

ひとつの作品を作るのにはやはり一学期かかるのですか?

アイディア、設計段階を含めるとそれくらいになりますが、実際に作品を作る作業時間は2~3週間かかります。作業工房スペースがないのがつらいです。ぜひ欲しいですね。

メンバーそれぞれにとっての二瓶研

牛山さんはどのようなきっかけで研究会に?

去年の秋に「インダスチリアルデザイン」をとっていで、それを通じて、研究会の存在を知りました。最初に研究会に参加したときは、ちょうどテーマが決まり、それぞれが作りたいものを考えていたときでした。僕もとっさに考えたアイディアを発表したら先輩方が真剣に答えてくれて、「この研究会熱い!」と思いましたね。それまでこれといって何か作ったことがあったわけではなかったんですが、先生のお人柄と研究会の雰囲気に惹かれて参加することを決めました。
 あっという間にお金がなくなったり、単位取得が危ういこともありますが、苦労した分だけ自分の作品には愛着がわくし、学ぶことも多いですね。

小田さんは、二瓶研の活動をとても楽しんでいらっしゃるようですね。

自分がこんなことやりたい、メンバーが意見が言ってくれて、思っていたのとは違った方向まで考えることができて、とても勉強になるし、面白いですね。自分の作品が出来上がったときの喜びを感じると、やはりいいな、と思います。メンバーの人柄がいいのには惹かれます。研究会の活動以外でも、いろいろと勉強になります。
 自分のやりたいことがあるときは、常に行動しつづけなければならない、っていうのはわかっているのですが、ついつい怠けてしまうことがあります。でも、毎週、研究会に行くとやる気が起き、いい刺激になっています。

中山さんは、二瓶研の友達がいたそうですね。

はい。二瓶研に所属している友達がいたので、展示会の手伝いなどしていました。それが入ったきっかけですね。実際に手を動かして作ると、頭で考えていたようには上手くいかなかったりして、作ってみて初めてわかることっていうことがあります。
設計図で完成したと思っても、組み立てる順番によって、違ってきたりもするので。
 SFCでモノを実際に作っているところってあまり少ないですよね。企画を立ち上げるときでも、形になるかどうかはやってみないとわからない、っとことはあります。先生がよくおしゃってるのは、「失敗したとしても、頭の中で考えていただけのとは違う発見があり、手を動かして作るところにこそ面白さと可能性がある」ということ。それを実践的に学べるのは、この研究会の一番いいところかな、と思います。最終的に、誰かに見せるということはプレッシャーもありますが、喜びも大きいですよ。