weblogって、なに?

 weblogの定義は色々あるが、語源は「webのlog」から来ている。その日webをクロールした中で、このネタ面白かったなー・気になるなーというものを自分のサイトで紹介すること、またはそのサイトがweblogと呼ばれる。

 内容は、更新した日付を記載した上で、セレクトしたネタ元のURLへリンクを 貼り、ちょっとしたコメントや関連リンクなどが添えられる。またweblogサイト の特徴として、更新速度が速いことが挙げられる(たいていは毎日一回)。 新しい記事は、サイトの上から下へと、少しずつ追加されていく。  見ていただくと解るが、シンプルかつ敏捷なスタイルで見た目は「WEB日 記」と似ている。しかしどちらかというと、新聞・雑誌を切り取って貼り付ける 「スクラップブック」のWEB版と考えてもらうといいだろう。  マクロな視点から見ると、weblogにはインターネットに転がっている膨大な情 報の「フィルタリング」という側面がある。例えば、新聞系のWEBサイトを、 ひとりで毎日全部見るわけにはいかない。しかし自分と同じような趣味の weblogger(weblogをしてる管理人)が、あらかじめ「このへんの記事をチェッ クしておけば大丈夫」という風に記事を毎日選別してくれれば、なにより時間 の短縮になるし、WEBのほうが既存メディアよりもスピードが早いため、常 にホットな話題をキャッチアップできる。また、マスコミでは取り上げられにく いような話題・問題を扱うのも、weblogの得意技だ。  いわばweblogger達というのは、DJのような役割を果たしているといってよい だろう。概して有名なweblogというのは、鮮度が高いネタをすばやく紹介した り、まだあまり皆が知らないようなネタを掘り出すのが巧みだ。  また、その取り上げた記事・ネタに対して、ちょっと気のきいたコメントや関 連リンクなどが併せられるところも、weblogの面白いところである。こちら は、ちょっとしたニュースコメンテーターのような役割だ。一般的にマスコミに おけるニュースコメントってのは、どうしてもマスコミという立場を離れたもの はでにくいものだが、weblogは結構自由な空気でコメントがつけられるところ がウケている側面もある。  さらにコミュニティ的な側面もある。weblogには、記事ごとにコメントがつけら れるため、BBSがどんどんぶら下がっていくカタチになっているものが多 い。そこでは、見ているひとから予期せぬツッコミがはいったり、さらなる関 連ネタの紹介がおこなわれたり、発展的議論が巻き起こったりする。  そして、そういったweblogサイトを簡単に公開できるよう支援する目的で、ア メリカのほうでは、movable typeなどのcgiツールなりbloggerなどのサービス がどんどん普及・進化している。もちろん日本でも、weblogという名前こそつ いていないが、「WEB日記ツール」がいくつもある。そういったツールの進化 が、またweblogを中心としたネットワークコミュニティを活性化している。

日米それぞれのweblogムーブメントの背景

 日本には、weblogという単語が輸入される前から、「個人ニュースサイト」と いうきわめて類似した形態のサイトが隆盛していた。  日本のインディーズweb文化の隆盛を見ると、掲示板文化・いわゆる2ちゃ んねるのようなもののの流れと、web日記文化・テキストサイトという潮流の2 つに大別できるが、後者がちょうどweblogにあたるものといってよいと思 う。SFCなんかでは、元々web日記は盛んであり、『SFCAntennaX』という存 在も有名だったし、SFC的にはweb日記は、いまさら特に目新しいことではな いかもしれない。  さておき一般的には、『ReadMe! JAPAN』 などの日記コミュニティサイトを中 心に、去年「先行者」というネタで話題になった『侍魂』や、『ちゆ12歳』と いったサイトのブームが巻き起こり、個人で運営するWEBサイトが非常に 大量のオーディエンスを獲得することが認知され始めていった。  そのテキストサイトの中でも、「個人ニュースサイト」というジャンルがあ る。webの管理人が、いろいろweb上を巡回して廻って集めてきた面白ネタ をクリップするもので、『TechSide』『俺ニュース』などが有名である。weblogと いうのは、まさにこの個人ニュースサイトと、「定義的」には全く同じものだ。  しかしアメリカにおけるweblogムーブメントというものは、たとえば新しいジャ ーナリズム的な文脈で伝えらる場合が多い。NewsWeekで、取り上げられた 時も、「既存のマスコミ・ジャーナリズムvs.weblog」という図式で捉えられたり している。いままでマスメディアによって担われてきたジャーナリズムを超え る、市民ひとりひとりによるジャーナリズムであるとか、ジャーナリズムを チェックするためのものとして捉えられており、blogは革命である、とすらい われているのだ。ここまでweblogが「社会的現象」としてホットに扱われる文 脈は、日本にはない。ほかにもアメリカでは、著名な有名人がweblogをはじ めたということで耳目を集めたり、GoogleがBLOGGERというweblogコミュニ ティを買収したりと、向こうでの話題は尽きない。  日本のニュースサイトは、海のむこうのweblogとは、定義的にはほとんど同 じなのだが、ちょっと「ノリ」が違うところがある。ジャーナリズムどうこうという よりは、自分たちの好きなサブカルチャー領域にアンテナをはり、そこから 面白いネタを探してきて、いち早く紹介するのが単純に楽しくてやっている感 じである。また扱われるネタも、オタク系文化(マンガ・アニメ・ゲームなど)に 関するものが中心にセレクトされることが多いのが、日本の個人ニュースサ イトの特徴といってよい。  日米でそれほどweblogの見た目に大差はないが、社会的ムーブメントとして の規模の差と、そこでの温度差はいくらかあるように思える。

Movable Type

 熊坂研、network styly *で使っているツールは、Movable Typeというもの だ。それには数々のweblogのための機能が実装されているが、なかでも TrackBackと言う機能があるので紹介する。これは、weblogの記事を投稿す るときに、他のweblogの記事に言及したりその記事から引用するとき、それ を明示的に相手側に知らせるものである。既存のもので例えるなら、学会 論文の世界にあるcitation indexに近い。TrackBackによって自動的に記事 の間にリンクが生成されるので、「リファラー」と同じようなものとも言えるが、 それよりも強く、「引用しましたよ!」という意味が込められることになる。結 果、weblog間をまたがる議論のつながりを追いかけるのに便利であるし、ま たTrackBackの多い記事というのは、それだけ周りから参照されているんだ な、ということが分かったりもする。相手にメールで「リンクしていいです か?」と聴いてからリンクするよりも、気軽にできるところが利点である。こ の機能は、他のweblogツールにどんどん移植されてる動きが現在見られ る。  また、weblogの管理ページにログインした時、新規に受け取ったコメントや TrackBackがいくつあったというのが、まとめて自分に見える仕組みになって いる。それをログインのたびにチェックするのが、なにげに楽しい。はじめて TrackBackを受けると、「おお」と、ちょっと感動して、いっそうweblogにハマっ たりする。このへんは、ちょうどRPGゲームの、パラメータをチマチマあげて いく感覚に似ているかもしれない。

weblogコミュニティを取り巻く関連サービス

 weblogコミュニティ全体の情報の流れをマクロに把握できるweblogポータル 的なサイト・サービスもいくつもある。  たとえば、自分がいつもチェックしているサイトを登録しておくと、自動的に WEBサイトの更新チェックしてくれる、「はてなアンテナ」や「blogrolling」とい うサービスがある。特に「はてなアンテナ」が面白いのは、はてなアンテナに 登録するしている人どうし、登録しているサイトのカブりぐあいを比較するこ とで、「あなたと似ている傾向のひと」というのを表示してくれる所だ。それに よって、自分がまだ見ていないけれども、自分にあっているかもしれないサ イトに出会えるかもしれない。いわばamazonのレコメンデーションシステム のようなものである。  他にも、weblogたちが、いまどのネタをもっとも取り上げているのかを常に チェックして表示してくれるサイトもあり、これを毎日見ていると、どんな話題 が一番注目を集めているかが手っ取り早くわかる。日本だと、「せかいのまんなか」「webで話題のモノ – blogmap」。アメリカで は、「blogdex」「Popdex」「Daypop」あたりが有名です。アメリカのweblog界隈で、いまなにが話題なのか、手軽に把握できるのでけっこう重宝する。

weblog、その背景にあるダイナミクス

 weblogはよく喧伝されるように、それが流行することで社会がどんどん変わる、という側面ももちろんこれからでてくると思うが、現時点ではその逆、情報社会が進行しつつあるからこそweblogという現象が隆盛してきているんだ と考えられる。  熊坂賢次の「ネットワークはねむらない」によれば、今までの消費社会段階 までの情報の流通のモデルというのは、みんなが知らないんだけど知りたい、という「希少性」が高いものほどパワーを持つというものだった。たとえ ば新聞やテレビなどのマスメディアが、情報を受け取る側へと「発信する」という一方通行的な流れがメインだった。それがインターネットが普及してしばらく経つと、誰でも簡単に情報にアクセスできるような環境が整ってくる。そこでは情報というのはアバンダンスな存在になり、情報の稀少性には意味 がなくなってくるだろう、というわけである。  一昔前、「インターネットでは誰もがHPをもって、情報の発信側まわることが できる」というような主張がよく見られたが、熊坂賢次はそれは間違ってい る、という。発信というコンセプトは古い。情報は「発信する」ものではなく、そこかしこに偏在する「共有する」ものになるだろう、と。ただ、溢れかえるよう になってくると、逆に情報の海におぼれがちになってしまう。そこで、「よい」 情報にアクセスするための情報流通プロセスがますます重要になってくる。 その新しい情報流通プロセスとしてweblogは位置づけられるだろう。  一方、現状を見渡すと、「よい」情報というものは、まだまだアバンダンスとい うには程遠い。ネットワーク社会はまだまだ過渡期の段階だ。そこでweblog というのは、情報の渇望の現れ、「もっと情報欲しい!」という意思に突き動かされているようにも見えるダイナミクスがある。ともあれ、今後も注目が必要なのは間違いなさそうだ。

weblog関連サイト