変化

前回は僕がblogに出会うまでを紹介した。blogを付け始めて、自分が思い出したいことは自分のblog(****.NET 06. BLOG)を検索すれば出てくる、という状況は完成した。するとだんだん、研究会でのミーティングに変化が生まれ始めた。ミーティングではスライドを用意してきて発表し、終わり次第ディスカッションに入る。当然スライドにない内容にまで議論が発展することがあるが、それは口頭でのやりとりになりがちだった。こういうときに「えーと、なんだったっけ…」というのは議論の場では好ましくないし、何より自分でもいやなものだ。
 そんな状況がblogによって改善された。スライドの発表が終わり議論に入ると、議論の流れに沿って、自分のblogを見せながら補足説明をしていく。そこに貼ってあるリンクを辿って情報を見せたり写真が出てきたり、とても密度の濃いセッションになっていく。考えてみれば、当たり前だ。blogには自分の考えや参考にした情報がつまっていて、それを抽出したのがスライドなのだから。スライドが不十分というのではなく、必要な情報を適宜見せられるという意味で、ミーティングでblogを見せながら議論するのはとても良いと感じた。

コメントとトラックバック

「自分のためのスクラップブック」などと称されることもあるblogは、その例えの通り、自分のために情報を集めておくツールであると表現した。一方、 blogは掲示板と同じなのではないかという指摘がよくされているが、そこには設置する意図とスタイルにおいて自分のためのものか議論のために開かれたものか、という差が存在すると理解している。それではなぜ、インターネット上に置くのか、そして他人のスクラップブックへの介入とも取れるcommentと trackback※という機能が存在しているのか。  
 blogは自分が思っていること、趣味、趣向などを一端トピックというまとまりでアウトプットする。ウェブ上に公開されることで、それは公への発言となり、知識あるいは情報として共有される。それに対して追加情報や意見、反論などを書き込むのがcommentだ。commentを寄せるのは、トピック毎にスレッドの立つ掲示板に投稿することと似ているが、あくまで個人の意見や見解、情報収集に対する他人としての意見であり、そこに対等な議論の場が存在しているというわけではない。あくまでblogのオーナーに対する意見である。  
 もし自分の意見をきちんと発表したい場合は、自分のblogに他人のblogの記事へのリンクを貼って、「ここにはこう書いてあるが、自分はこう思う」という記事を書く。このときに参照した他人の記事にtrackbackが送られる。こうして、自分が思ったことが公に発言されたことになる。さらに自分が書いた意見にcommentが付くかも知れないし、他人を刺激して書かれた記事からtrackbackを送られるかも知れない。これは一件バラバラに意見表明をしているように見えるが、リンクとtrackbackによって、パネルディスカッション的な議論がウェブ上で分散しながら展開されている事になる。そんなことから、commentとtrackbackは議論を、ウェブ上で整理しながら進める機能をblogに付加しているものである、と僕は思っている。ただしこれはあくまで自分の考えだ。さまざまなblogによって、とらえ方や意味合いは様々である事は確認しておきたい。blogはなんと言っても、自分のスクラップブックなのだから。
※ trackback TRIGGERS / blognews: TrackBackをSFCでもやってみよう。

blogを付けるインセンティブ性

さて、commentとtrackbackはウェブログを(楽しく)続けていくための一つのインセンティブになっているとも言える。もちろん自分のためのクリップである事には変わりないが、そこから生まれる議論やコミュニケーションはこの上なく楽しい。少なくとも僕はこう思っている。その感覚は別に数量的にカウントできるものではないけれど、commentやtrackbackの数字が増えているとコミュニケーションの発展性が視覚化されているみたいでうれしいものだ。  
 別にこれらのカウントを通貨だとは言わないけれど、情報を起点とした地域通貨的な要素は備えていると思う。良い示唆や良い情報にはcommentや trackbackが付きやすい。それはあくまで自分の情報に対する満足度を伝えているだけであって、commentやtrackbackをあげる側ももらう側も換金性のある利益は直接的には生まれてこない。それは各個人の情報に対する満足感によって発行され、もらった側にはさらなる情報やうれしさといった感情が付加される。このままではとても通貨とは言えないが、情報をベースとした価値観の上に成り立っている点で、一つの考え方になるのではないか。 ※ 初出: ****.NET 06. BLOG: Count of Comment and Trackback

習慣として

ここまでで、個人のためにあるblogによってどのようにコミュニケーションが展開されるのかを紹介してきた。そこで、今後blogによって2つの習慣が生まれると思っている。1つは、自分の考えや情報をトピックでまとめてアウトプットする習慣、もう1つはディスカッションをする習慣。これらは情報社会で役に立つばかりでなく、アカデミックな空間としてのキャンパスの中では活発に行われるべきであると思う。そんなことを考えなくても、単純に楽しいからハマってしまうのだけれど。

ブロガーズミートのお知らせ

Triggers! では毎週木曜日 16:30~18:00、デザインスタジオB棟ドコモハウスにて、SFC Bloggers’ Meetを開催しております。これからウェブログを始めたい人、既にやっている人などで情報交換をしたり、ウェブログ周辺の事情について話し合う研究会です。お気軽にご参加下さい。
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