他キャンパス特集第4回目は、山形県鶴岡市にある鶴岡タウンキャンパスを紹介する。鶴岡タウンキャンパスは、義塾、山形県、庄内地域市町村の連携のもと、2001年4月に設置されたばかりの新しいキャンパス。「自然豊かなキャンパス、郊外でこそ豊かな発想を育む」という冨田勝先端生命科学研究所所長の話のとおり、ビーチ、スキー場、温泉、山などに車で15分から30分で行くことができるという絶好のロケーションに位置する。

「IT主導型バイオサイエンス」の拠点を目指す

「IT主導型バイオサイエンス」を目指して、慶應義塾大学は、東北の新拠点・鶴岡タウンキャンパスに先端生命科学研究所を開設した。時代の最先端を行くプロジェクトと、周りを取り囲む雄大な自然環境。研究所の中は、どのようになっているのだろうか。

鶴岡発バイオインフォマティクス -キャンパスセンター

鶴岡タウンキャンパス(TTCK)

先端生命科学研究所キャンパスセンター
 まずは、先端生命科学研究所キャンパスセンターに向かう。SFCの2期生でもある先端生命科学研究所の塩澤明子さんに案内して頂いた。
キャンパスセンターでは、主にバイオのITを使った解析が行われており、協同研究室やビデオの視聴室、コンピュータ自習室や、事務室などがある。学生1人あたり1台のパソコンが用意されている個人スペースもある。

鶴岡タウンキャンパス(TTCK)

コンピュータ自習室
建物の左右をつなぐガラス張りの通路からは、天気が良い日には、鳥海山と金峰山を眺めることができるという。SFC生にはおなじみの湘南台の居酒屋「鳥海山」。1度は本物の鳥海山を眺めてみるのもいいだろう。

リラックスなくして研究なし -バイオラボ棟

鶴岡タウンキャンパス(TTCK)

バイオラボ棟
 キャンパスセンターから、車で10分、自転車で15分行ったところに先端生命科学研究所バイオラボ棟がある。バイオラボ棟では、主としてバイオに関する実験が行われている。バイオラボ棟の周りにも、緑が多く、とてもゆっくりとした雰囲気だ。しかし、中をのぞいてみると、そこには数々の最先端の装置が、ずらりと並んでおり、外の風景とは180度違った顔を見せる。
鶴岡タウンキャンパス(TTCK)鶴岡タウンキャンパス(TTCK)
連なる実験装置(CE/MS)と遠隔授業もできる教室
インターネットを使って、SFCと遠隔で授業もできる。藤沢と鶴岡、距離としては、途方もなく離れたところにあるが、インターネットによって距離を克服。これも、最先端キャンパスの強みである。
 ▼バイオラボ棟リラックス6施設
鶴岡タウンキャンパス(TTCK)鶴岡タウンキャンパス(TTCK)鶴岡タウンキャンパス(TTCK)
卓球台とビリヤード台、仮眠スペース、ジャグジー
鶴岡タウンキャンパス(TTCK)鶴岡タウンキャンパス(TTCK)鶴岡タウンキャンパス(TTCK)
サウナ、マッサージ機、エアロバイク
バイオラボ棟には、数々のリラックスするための施設が存在する。卓球、ビリヤードで遊びながら気晴らしするのもよし。寝るのが一番という人も、オレはジャグジーとサウナでリラックスするぜという人も、マッサージに決まっているじゃないかという人も、私はひたすらエアロバイクこぐわという人にまで対応し、様々な息抜き方法が考えられる。「研究には、息抜きが欠かせない」という、冨田所長の考えも表すものである。また、ジャグジーの利用率が一番高いのは、所長本人だという噂も。

鶴岡タウンキャンパス(TTCK)

バイオ・キャンプなどで使われる実験室
SFCのカリキュラムの中には、バイオ・キャンプというものがある。一定期間鶴岡キャンパスに滞在して、バイオテクノロジーの基礎を体験するというものだ。SFCではすることのなかった、実験を主とするカリキュラムであり、実験器具の取り扱いの初歩から始められる。小・中・高校にあった理科室を彷彿とさせる教室で行われる。

鶴岡タウンキャンパス(TTCK)

キャピラリー電気泳動-質量分析計(CE/MS)
バイオラボ棟の目玉装置と言えるものが、キャピラリー電気泳動-質量分析計(CE/MS)である。とても高価な装置なので、普通は学部生は触らせてもらえないのだが、ここでは学部生も使用することができるという。この装置の導入により細胞内のエネルギー代謝物質の一斉分析法を世界で初めて確立し、その論文は、米化学会の雑誌に最注目論として掲載された。多くの日本の新聞の紙面にも、世界初の手法確立のニュースは掲載されている。

先端研究を支える施設

鶴岡タウンキャンパス(TTCK)研修棟
 鶴岡タウンキャンパスは、庄内地方を治めていた酒井藩14万石のお城「鶴ヶ岡城」跡地に位置し、周りには、致道博物館などの観光名所も多い。緑がとても多く、散歩にはとても適した場所だ。キャンパス内には、お城の堀を再現した、新百間堀があり、ビオトープも設置されている。また、4つの研修棟は、DNAの4種類の塩基、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)にちなんでそれぞれA棟、T棟、G棟、C棟というように呼ばれている。
鶴岡タウンキャンパス(TTCK)致道ライブラリー
キャンパスセンターと同じ建物のガラス張りの通路の1階部分にある「致道ライブラリー」。生命科学を中心とした自然化学系の資料約8000冊が並ぶ。ビデオ、DVDの貸し出しも行っている。義塾、鶴岡市、東北公益文科大学の3者の協同運営で、誰でも利用することができる。訪れたときも、市民の利用者の方が数人、文献を探していたり、読書をしていた。
鶴岡タウンキャンパス(TTCK)東北公益文科大学鶴岡サイト
同センターの1階部分にある「東北公益文科大学鶴岡サイト」。ここでは、国際会議なども催されており、2002年のノーベル医学生理学賞を受賞したシドニー・ブレナー氏も講演を行ったことがある。SFCのθ館の縮小版といった感じで収容人数は120名。講演、会議などには、ちょうどよいサイズということで評判だという。

地元で採れた安心、健康食材を使った料理

鶴岡タウンキャンパス(TTCK)鶴岡タウンキャンパス(TTCK)
水の食卓百けん濠、地鶏ランチ
 お昼ごろ、ちょうどお腹も減ったところで、鶴岡タウンキャンパス内に位置する、「水の食卓百けん濠」に立ち寄ってみた。ここでは、お店の席から新百間堀の水辺の風景を見ながら、食事を楽しむことができる。
注文したのは、地鶏ランチ(1000円)。TTCKキャンパスカードを提示すれば、2割引になってお得だ。おかずには地元で収穫された有機野菜、ご飯にははと麦、大豆、玄米胚芽などを白米とブレンドした穀物米を使っていたりするなど、手が込んでいて、大変おいしい。

鶴岡タウンキャンパス(TTCK)

いきなりの取材にも丁寧に応じてくれた優しい店長
「いつも多くの学生さんに利用してもらっています。体にいい食材、安心して食べられる食材を使っていますから、気軽に来て下さい」と大川義雄店長。 手にしているのは、鶴岡市の名物だだちゃ豆。枝豆の一種類だが、これが枝豆かと思うほど、味が濃く、うまい。鶴岡に行ったら、一度は試して損はないだろう。

自然に囲まれたバイオ先端研究のメッカ

今春、国の構造改革特区として、鶴岡市は「鶴岡バイオキャンパス特区」に認定された。先端生命科学研究所のバイオ研究に対する地域の期待は大きい。同研究所では、市民の方や地域の高校生に対する講座も開催している。研究成果の1つとして、鶴岡キャンパス初の特許を利用した、大学発バイオベンチャー企業「ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社」を設立するなど、順調である。鶴岡という場所のメリット、雄大な自然環境、地域の協力などを生かして、どれだけ多くの成果をあげることができるのか。計り知れない可能性を、このキャンパスは秘めているだろう。