環境問題や、放置自転車・駐輪場不足の問題を解消するために、昨今注目されているシステムに、「コミュニティサイクル」(共有自転車システム)があります。


 共有自転車システムとして有名なのはオランダの「DEPO交通共有システム」で、これは「白い自転車」としても知られています。白く塗装した自転車を街頭に置き、ある一定の地域内であれば誰でもが好きな場所から場所へ利用して乗り捨てることができるシステムです。一台の自転車を複数の人が自分の自由に使い、共有することで、「自転車を駐輪しておく」必要がなくなり、駐輪スペースの確保などの問題の解消に一役買っています。
 日本でも、放置自転車を再利用して共有自転車とし、街頭に置いて自由に使ってもらう、あるいは街中に共有自転車専用のポート(乗り捨てる場所)を複数配置しその間で使ってもらう、というような試みが各自治体などを中心に実施されています。
 また、アパートやマンションなどで自転車を置く場所を確保できないところでは、集合住宅単位で共有自転車を用意し、住人の間のみで共有するようにしているケースも最近では増えてきているようです。
 しかしながら、前者のような街中で誰もが利用できるようにしている共有自転車に関しては、日本ではことごとくが失敗しているというのが現状です。盗難されたり、利用が許された地域以外まで使われてしまったり、利用の仕方に偏りがあって自転車が一箇所に集中してしまいマネジメントが困難になって失敗していくケースが多いようです。とくに盗難の問題は深刻で、共有自転車として用意したもののほとんどすべてが盗まれてしまったケースも少なくありません。
 共有自転車以外の自転車(一般の個人所有のもの)に関しても自転車の盗難は大きな問題です。自転車盗難があとを絶たない背景には、自転車の価格が非常に安価になっているため盗む側にも罪悪感があまりないし、盗まれた側もあまり打撃を受けず簡単に新しい自転車を購入してしまうという状況があるようです。また、盗んだ自転車をそのまま所有するというよりも、イレギュラーに交通手段が必要になったときに軽い気持ちで無断借用(使用窃盗)して行き先で乗り捨てるということが多いようでそのために放置自転車も増えています。価格も安くて、乗り方も簡単で免許いらず、老若男女誰もが使える自転車は非常に手軽な乗り物ですが、その”手軽さ”という長所が逆に、自転車盗難の問題を引き起こしています。
 しかしながら、「気軽に(無断で)利用して、気軽に乗り捨てる」という自転車泥棒の心理は、実は共有自転車を利用する感覚と非常に近いものがあるのではないかと思います。共有自転車も自分の物ではない自転車を使いたくなったときに使って好きなところに乗り捨てるもので、とくに多くの窃盗犯が直面しているであろうイレギュラーに交通手段が必要になった状況にこそ必要なシステムであるようにも見えます。こう考えると、自転車盗難があとを絶たないところでこそ、共有自転車のシステムは浸透しそうなものですが、どうも現実はそううまくはいかないようです。
 前述した「白い自転車」のシステムを実施しているオランダでは、人々の身近な当たり前の公共交通手段として、共有自転車のシステムが普及しています。オランダでは成功しているのに、日本ではことごとくが失敗してしまうのはなぜでしょうか?
 そもそもオランダは国土の1/4が海抜0m以下という切迫した自然条件もあり、あらゆる環境問題に関して真剣に進んだ取り組みが行われています。幼いころから環境教育が行われていて、環境問題に対する意識が高いという国民性も挙げられます。環境にやさしい交通を浸透させるための交通政策も多く、国民の意識を高めています。こういう姿勢が国民の自転車の利用状況にも大きく影響しているのでしょう。交通政策のユニークなものには、「1日10km以上自転車を乗る勤労者は、年間所得から日本円にして4万円弱が控除される」というようなものもあります。また、有名なことではありますが自転車専用道路に関しては、日本とは比べられない規模で整備が進んでいるなど自転車を優遇する社会背景があり、自転車を環境問題や社会問題と結びつけてよい効果をあげていく土壌が整っているのです。
 最近では日本でも、自動車以外で通勤をする社員に特別手当を与えるなど環境への配慮を見せる企業が増えてきました。これにより、自動車の代替ツールとして自転車を利用する勤労者もでてきたようです。このような取り組みが企業や自治体を中心に増えていけば、自転車の利用が社会問題や環境問題に良い効果を及ぼすことも望めるのではないでしょうか?
(文責:総合政策学部3年 松田麻希) 
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