湘南台地区のお店で使える、ユニークな割引クーポン提供サービスが2004年4月5日(月)にスタートを切った。これは『湘南台では、早く打てるやつが得をする』というキャッチフレーズの通り、携帯電話の文字入力の早打ちゲームと組み合わせた、携帯WEBサイト上で発行されるクーポンのサービス。お店の広告文を入力し、その文字入力にかかった時間によって、クーポンの割引率が変化するというシステムだ。


 この「クーポン打!」のビジネスプランは、2004年3月の「さがみはら青年アントレプレナービジネスプランコンテスト」において、最高の賞を獲得している。
 今回のProject CLIPでは、印南研究室チームAmaltheaメンバーの桐原大輔さん(環4)・武田英明さん(環3)・伏見和哉さん(環3)・平尾丈さん(環4)にプロジェクト内容や、始めたきっかけ、今後の展望などについて伺った。
【「クーポン打!」サービスについて】
—-このサービスはお店とは、どのような約束になっているのでしょう?

スポンサーのお店には月額5000円を広告費としていただき、ユーザーは完全に無料でサービスを使うことができます。湘南台では4月、5月の2ヶ月間を「無料お試し期間」にしてスポンサーのお店にお願いしています。今クーポンが使えるのは11店舗ですが、この2ヶ月間で、お客さんの入り具合など結果を見てもらって、6月から、有料で契約を継続するかどうか、判断してもらいます。プロジェクトは、有料契約になった時点で、会社を立ち上げようと思っています。
—-とてもユニークなサービスですが、特許はとっているのですか?
 はい、特許の準備にも時間をかなり時間を取られたのですが、結局、今は断念といった所です。特許をとるのにはお金も、手間もかかるんです。
 慶應義塾に学生の特許取得を代行してくれるような機関があるんですが、それを利用すると特許が慶應のものになってしまうんですよ。だから、将来的に、これをビジネスとしてやっていく、ということを考えると、自分達で考えたプランのに、特許の使用料を慶應に払わないといけないってのは、馬鹿馬鹿しいなと思って、やめました。
—-サービスの一番のポイントはどこにありますか?
 ビジネスプランとしては広告文を打ってもらうというのが、最大のポイントです。
 ユーザ側には携帯電話の早打ちというゲームを通じて、能動的にメッセージを打たせる仕組みになっています。普通の広告っていうのは、ついつい見過ごしてしまうんですよね。それで目を引く看板と言うのはあまりないんです。店が知らせたいメッセージを確実に伝えることができる広告媒体はなにか、と考えたときに、この「広告文を打つ」というのが効果的だと考えたわけです。
 実はこれが、かなり刷り込み効果があって、自分たちでテストしてる時なんですが、「『このお店のおすすめメニューは・・・』とか携帯で一生懸命入力しているうちに、本当に食べたくなってきて、そのまま皆で、その店に食べに行ったり、なんてこともありました(笑)。
【チームAmaltheaについて】
—-印南研究室に所属しているということですが?

はい、印南研究会には「医療政策」と「インターネット上の意思決定とサイバービジネス」という二つの研究会がありますが、「チームAmalthea」は、後者に所属して「クーポン打!」をやっています。他に印南研でやっている先輩プロジェクトとしては、中古教科書の取引を支援するサイト「にのきん」やWEB絵本のポータルサイトである「Story Cube」などがあります。
—-このプロジェクトを始めたきっかけは何だったのでしょうか?
 みんな研究会に入ってくる時点で、何らかのビジネスアイディアを持ち寄っていて、そのアイディアの中から、既にビジネス化されているものもあったし、技術的に無理なものもある、と選別していって。ビジネスのアイディアを出してはつぶしての作業を一年間ぐらい皆でやって来ました。それで、印南研の課題として最終的に思いついたのが、この「クーポン打!」だったんです。調べてみても、やっている所がない、できない理由もないと判断して、プロジェクトを開始しました。2003年の2月頃から1年間かけて練り上げ、サービスのスタートに漕ぎつけました。
—-プロジェクトを進めているのは、どのようなメンバーの方々なのでしょうか?
 チームAmaltheaは全員で5人です。メンバーの全員が、大学に入るときにはもう既に、何らかの形でベンチャーをやるのに興味があったんです。世の中に何らかの仕掛けをして行きたいなと思っていた人とか、そもそもテレビでニューロンの山田育矢さん(環4)を見て、SFCに入学してきた人とか。営業のほかに、デザイン担当もいて、WEBなどの技術担当は院生の塚田真之介が担っています。
【ビジネスとして】
—-以前にも、SFC発のクーポン「SPAプロジェクト」がありましたよね?

提携店にお願いに行く際に、「前もSFCで、そういうのやってたけどすぐやめちゃったよねー」と言われることはよくあります。ですが、SPAプロジェクトとの大きな違いは、ボランティアではないと言うことにあります。SFCの学生の役に立ちたいという気持ちは、もちろんありますが、ビジネスとしてきちんと成り立つようでないと、続けていくことが凄く難しいですよね。だから「クーポン打!」は、あくまでもビジネスとしてやっていくつもりです。
 店舗数が11店舗と少ないのもそのためで、お店側が、『お客を呼べている』という実感を感じてもらえないとビジネスとしてはダメだと思います。ひとつひとつの店舗に、ある程度、お客さんが入るようになったという成果が得られないといけない。あまり店舗数が多いと、お客さんが分散してしまうんです。だから、あえて店をしぼってお願いしています。でもこれからは、飲食店以外でもお店は増やしていくつもりではありますけど。
—-営業について、これが一番苦労した、ということはありますか?
 やはり店に入って行った時に、お客さんだと思われて「いらっしゃいませ」と言われた時に話を切り出すのは辛いですね。でもそれも徐々に慣れてきました。
 店ごとにモデルケースを作って、シュミレーションして、利益獲得の予想について出した数字があるので、それをもっていって見せたりして営業に行きましたね。でもそうやって、数字を持っていっても「本当にやって欲しい、という気持ちが伝わってこない。学生なんだから、熱意を見せてよ」とか、厳しいことを言われたりということもありましたね。結局その店には、最後にはOKしてもらえたんですが。
—-今後の展望について
 今後は、飲食店以外にも湘南台のビリヤード場とか、サービスを拡大していく予定です。湘南台の次に出す地域として考えているのは、日吉ですね。全国で、大学の周辺地域で展開していければと思っています。
 それと、新しいメンバーも募集してます。携帯のコンテンツを作れる人から早打ちのテストができる人まで。ビジネスをやろうとすると、色々やらないといけないことがあるんですよね。そういういずれかの、何かやりたいことがある人を求めています。