■公示まで、残り一週間急転直下の決定


 参議院選挙公示が迫る6月初め。「やめろ(辞職)コールはたくさんあったが、要請はないし、私自身考えていない」と政界出馬を否定していた竹中氏が、公示をわずか1週間後に控えた16日、急転直下参議院選挙に立候補することを発表した。
 竹中氏の政界入りは早くから噂されおり、前回総選挙でも比例代表候補として取りざたされていたのは記憶に新しい。参院選は昨年の秋頃から週刊誌が観測記事をあげていたが、5月末にはマスコミや国会審議で既定路線として取り扱われるようになる。今回の出馬は、その上での決定となった。
■竹中氏が出馬する参議院「非拘束名簿方式」とは
 参議院選挙に比例代表で出馬と聞けば、名簿順位の高い絶対当選圏に竹中大臣が滑り込むと想像しがちだが、今回で2度目となる非拘束名簿方式では、竹中氏は自身で相当数の得票を獲得しない限り当選することはできない。
 「非拘束名簿方式」の仕組みを簡単に説明すると、有権者は比例代表において、「××党」(党名)ないし「××太郎」(個人候補者名)のどちらかを投票用紙に書き込む事ができる。
 それらを合算し政党全体の得票数を求め、その上で各政党の当選人数を決めた上で、各候補者の得票数によって各政党内での順位を決め、最終的な当選者が決まる。
 前回投票での個人最高得票は舛添要一氏の158万票。さらに当初100万200万と皮算用された大橋巨泉氏はふたを開けてみれば41万票という、個人候補者にとって厳しい選挙となった。比例代表の投票用紙に「××党」以外の個人名を書かせるためにはどうすればいいのか、各党模索中のなかの出馬となる。
■出馬後、即座に設定された竹中氏のノルマは100万票
 出馬宣言から一夜経ち、自民党幹部は「前回は2100万票で20人」と述べ、100万票獲得が事実上のノルマになるとの見解を示した。官邸からは「独自の調査に寄ると竹中氏は文句ない数字が出た」とのコメント。参院幹部からは「都市部の無党派層に支持を得られる質の高い候補。100万票だ」などとの声が聞こえてくる。
 しかし、公示直前の出馬準備期間は全くなく、支持団体を今から割り振るには限界があり、割り振られたところで支援の実行力は期待できない。前回100万票超えた実績を持つのは舛添氏のみ、また期待値が高いといっても一度しか新方式で選挙は行われておらず、経験的な根拠および事前調査の精度は低い。
 さらに、竹中氏の得票層と期待されている都市無党派層は相対的に与党に批判的であり、竹中氏が都市無党派層を掘り起こせば起こすほど、選挙区選挙での投票と比例区での投票が捻れるというジレンマを抱える可能性がある。
 竹中効果を30万程度とみる連立与党幹部の厳しい視線に晒されるなかの船出となる。
■7月11日に生まれて
 自身の得票数が少ない、ないし落選という結果の場合、竹中氏は大臣に仮に留まることができたとしても、影響力の低減は避けられず、郵政事業の民営化での活躍も望めない。
 よしんば100万票を軽く突破しても、「自民党1回生の参議院議員」という枠組みから果たしてどこまで自由でいられるのか。小泉政権以後も国会議員として留まるのか。様々な問題が立ちはだかる中、竹中氏はどのような道を思い描きながら選挙戦を戦うのだろうか。
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