最近消去法で飲む場所を選んでいませんか?


 たまにはいつものところとは違う場所で、違うものを飲みたくなりませんか?
 SFC生があまりいないところで、けれどもSFCからそう遠く無い場所で話をしたいときはありませんか?
 そんな人たちに送る、今回の連載「バーのドアを叩こう」。平野雄大さん(総3)が、導き手の少ない「バー」のドアを叩き易いものにするため、お店の紹介に始まり、お酒の楽しみ方、バーでのマナーなどをお伝えします。
☆こんばんは、平野雄大です。藤沢のバーの話をさせてください
 はじめまして、平野雄大と申します。辻堂に住み、 藤沢駅周辺のレストランやバーに足しげく通う、普通の総合政策学部の3年生です。2年生になったあたりから、私の本格的なバー通いが始まり、何かあった時にはバーに行ってゆっくり考えたり、友人や後輩を誘ってはグラスを傾けつつ話し込んだりしています。
 最近では友人や後輩に「今度またお前が選んだ店で飲もうよ」とか、「またどこかいい場所はないですかね」などと言われるようになりました。湘南台からそう遠くない街のレストランやバーでの楽しみを知っていることで、ちょっと息抜きしたいときには頼りにしてもらっています。
☆便利な場所 藤沢
 SFCの皆さんはわりあいに湘南台の居酒屋で飲まれる方が多いですね。湘南台以外の場所である飲み会というものに、私はほとんど行ったことがありません。しかしそうすると、行くお店限られてきますよね。食彩に行くと別のSFCの団体が…。八田に行くと友達が…。よくある話だと思います。また、学生が行くようなバーの話も寡聞にして知りません。居酒屋なんかで皆で飲み放題を頼んでワイワイガヤガヤ、気の会う仲間と日本酒を飲みながら談笑する。そんな付き合いも素敵だけど、ほかにもまだまだ、お酒の楽しみ方には広がりがあります。
 最近消去法で飲む場所を選んでいませんか? たまにはいつものところとは違う場所で、違うものを飲みたくなりませんか?SFC生があまりいないところで、けれどもSFCからそう遠く無い場所で話をしたいときはありませんか?
 そんな人にとって藤沢は、湘南台から10分で行けて、レストランや飲む場所も湘南台より圧倒的に多くて、SFC生と鉢合わせなんてことは少ないというわけです。いい場所だと思います。ところが、藤沢のバーのことを案外にみんな知らないんです。だから、たまに藤沢で飲むとしても、結局チェーンの居酒屋?それでは湘南台で飲むのと変わりないですよね。
☆この連載で話すこと
 ですからこの連載は、主にはSFC生があまり行かないような藤沢駅周辺のバーを、そこでの楽しみ方のヒントや、エピソードを交えながら紹介していこうと思います。居酒屋にはよく行くけど、バーには入ったことがないな、カクテルやワインが好きなんだけど、なにから飲んだらいいか分からないな。近くで勉強できるお店は無いかなと考えている方に、是非この連載をお勧めします。
 バーなんてカウンターに座ってお酒を飲むだけじゃないか、大人数では入れないところが多いし、バーで飲んで何が楽しいんだという方、バーで飲む楽しさは色々あるんです。食わず嫌いにならずに、この連載だけでも読んでみてください。
 結局私はお酒が好きなんです。この連載をよんだ方が少しでもお酒っていいな、と思ってくれたり、たまには違うところで違う飲み方に挑戦してみたいな、と思ってくれれば、それ以上の喜びはありません。
第一回 人柄のバー「Jay’s Bar HOSOKAWA」

一夏中かけて、僕と鼠はまるで何かに取り憑かれたように25メートル・プール一杯分ばかりのビールを飲み干し、「ジェイズ・バー」の床いっぱいに5センチの厚さにピーナッツの殻をまきちらした。そしてそれは、そうでもしなければ生き残れないくらい退屈な夏であった。
『風の歌を聴け』村上春樹 講談社文庫
 「Jay’sBar HOSOKAWA」は、藤沢駅南口オデヲンから海岸のほうにちょっと歩いたところの、順天堂病院の脇にあるバーです。昔鵠沼に住んでいたという村上春樹の小説に「ジェイズ・バー」というバーが出てきますが、マスター曰く、まったく関係は無いとのこと。ピーナッツの殻も転がっていませんし、店には中国人のジェイではなく、日本人の渋いマスターがいます。
 店の扉を開けると、ジャズが聴こえてきます。すぐ目の前から右にかけてカウンターが広がっています。そのカウンターに大体いつもひとりでついている、マスターの細川さんが、挨拶をしてくれます。
 カウンターと、テーブル席がいくつかの、あまり広い店ではないので、大人数には向きません。多くても、3人が限度でしょうか。それ以上の人数ではカウンターを占拠しかねないので……お店にも、ほかのお客にも迷惑がかかると心得ておいたほうがいいかもしれません。ですが、あまり広くない分、静かに飲みたい時、仲間と二人で語らいたい時には、うってつけです。
 おいしいカクテルが飲みたいけれども、カクテルの知識もないし、かといってバーで飲もうにもどういう風に頼んだらいいかわからない。バー入門者に立ちはだかる、ひとつの壁ですね。細川さんは、そんなバー初心者のお客さんにもとても丁寧に接してくれます。さあ今日もなにかおいしいものが飲みたいな、とジェイズバーの扉を開けます。
 「こんばんは、今日は疲れちゃったので何かすっきりしたいものが飲みたいんです」「柑橘系のフルーツが使ってあるとうれしいですね」
「ラムは苦手なので使わないでほしいです」
 細川さんは丁寧に相槌を打って、おもむろにカウンターの中で作業を始めます。氷を砕いたり、しゃかしゃかとカクテルシェーカーを振ったりして、そのうちに気分にあったお酒が出てきます。どんなお客さんに対しても、丁寧な応対、細やかな気配りを忘れません。細川さんがカウンターの中でお酒の飲むときの仕草、タバコの吸い方からも、接客態度が伝わってきます。
 そんな細川さんの人柄のためか、ジェイズバーにはいつもいろんなお客さんがいます。常連の方、お酒を最近飲み始めたという風情の大学生、仕事帰りの会社員の方、待ち合わせをしているカップルなどなど。こういう小さな規模のお店だと、大体来る人の年齢層や雰囲気などが定まっていることが多いのですが、この店ではいろんなお客さんが一体となってお店の雰囲気に溶け込んでいます。
 お酒のことに詳しくなくても結構。最低限のマナー(大人数でいかない、ほかのお客さんに迷惑をかけないなど)と、お酒を楽しみに来たんだという気持ちと、正直に相談する素直さがあればきっと細川さんはあなたをバーに通う人間として育ててくれるはずです。
「Jay’s Bar HOSOKAWA」
TEL : 0466-26-1400
神奈川県藤沢市鵠沼橘 1-17-11 順天ビル1F
営業時間:19:00-27:00 月定休
予算 : 1,000-3,000円
–平野雄大 略歴–
総合政策学部3年
学内での活動:学生ガイド、クラブ「D」メンバー、KEIO SFC REVIEW編集委員。
・1984年
 長崎県諌早市生まれ 現在20歳。
・2003年
 福岡県 筑紫台高校を卒業。
 卒業記念に友人にコーヒーミルをもらう。コーヒーに凝り始める。
 SFCに進学のため藤沢市に転居。辻堂在住。酒類量販店までチャリで5分。
 藤沢駅周辺のレストランやカフェなどを巡り始める。
・2004年
 ウイスキーに開眼。藤沢駅周辺のバーに通いつめる。
 夏に銀座の某社にてアルバイト。帰り道に東京-横浜周辺ホテルのバーを探索。
 友人にレストランやバーのアドバイスを求められるようになる。
現在、「ウイスキーエキスパート」取得に向け勉強中。