今年で6回目になるイルミネーション湘南台。湘南台駅の地下広場や東西の大通りを手作りのイルミネーションが飾っている。今回のProject CLIPでは、イルミネーション湘南台の実行委員会で代表を務める姉崎光則さん(総3)と、今年初めて活動に参加した川崎元寛さん(環1)に湘南台駅前の同団体事務所でお話を伺った。その中で姉崎さんは、イルミネーション湘南台がなくなることが私たちの目標、と語った。


まず最初にイルミネーション湘南台の歴史について教えて頂けますか?
姉崎:イルミネーション湘南台は、6年前にSFCの研究会から始まった地域活性化の活動です。活動内容としては、東西大通りにある街路樹でのイルミネーション点灯や、クリスマスツリーの設置、それに付随する様々なイベントや企画を実施している団体です。
6年目を迎えるということで、年々、規模は拡大しているのでしょうか。
姉崎:そうですね。イルミネーションでもそうですし、一番感じるのは、僕達の活動に賛同してくれたり、色々な形で関わり協力してくれる方々の輪が大きくなっていることです。
協力の輪というのは実際にはどんなものですか?
姉崎:僕達の実行委員会は学生が毎年代表をしておりますが、実際にはSFC生を中心とした学生の他に、地元の中高生や一般の地域住民の方、東西の商店街、あるいは行政に関わっているような方々が集まって組織されています。
 具体的にどのような協力の仕方があるかと言うと、もちろんイルミネーションの取り付けに学生だけでは人手が足りないから来てもらうというのもあるのですが、何かイベントをしようとしたときに、学生は企画はいくらでもできるんですけども、物もないしお金もないし、結局学生だけでは頭でっかちになってしまいがちです。そこで、このようなことをやりたいんですが、どうですかという形で、地域の人たちにお話を持っていって、そこでそれぞれの方に自分なりにできることを持ち寄っていただいて、大きいことをしていくという形で行なっていきます。
団体としての1年間の活動のスケジュールはどうなっていますか?
姉崎:毎年、12月の頭頃にイルミネーションの点灯式というのをやっていまして、そこに向けて活動していますが、その企画や広報の戦略などを含めますと、もう4月の新歓が終わってすぐに動き始めています。
実際に参加しているは人数は何人くらいいますか?
姉崎:そうですね。これは凄い難しい質問なんですが、というのも関わり方というのは色々あると思うんですね。僕みたいにコアに運営自体に関わってくれる方もいますし、何かデザインをしたいとか、地域の方が取り付けを手伝ってくれるとか、そういう方々をどこまで含めるかにもよるんですが、一応実行委員としては、学生が30人で地域の方も30人程度、大体60人程度で活動しています。

こちらの事務所はどのような管轄なんですか?
姉崎:イベントの飾り物を作ったりするためには、どうしても作業する場が必要になってくるんですね。ただ先ほどもお話しましたように、僕達は何も持っていないし、どこかお借りするだけのお金も持っていません。そこで、こちらの空き物件をご好意により使用させていただいております。
地域との交流を掲げていても、SFC内に拠点を置く団体もありますが、あえてSFCの外部に拠点を置かれる理由はあるのでしょうか?
姉崎:SFCというのは、とても実践的なことを学ぶ学問の場だと私達は考えています。だからこそ一人一人の学生が小さい街ではあるんですが、学外に出て実際の社会の中で様々な立場の方と関わりを持つということは、とても大切だと思います。
地域の方との繋がりを感じる瞬間はありますか?
姉崎:本当に単純なことなんですが、普通に学校に行くときに街を歩いていると、色々な人が声を掛けてくれるんです。そうやって街ですれ違うだけで挨拶をしてくれる方が増えていくということで繋がりを感じますね。
今年のイルミネーションはどのような予定ですか?
姉崎:4日(日)は雨で会場の変更があったのですが、無事に点灯することができました。クリスマスツリーは今年もクリスマスまでの設置です。例年一月の中旬までだった街路樹のイルミネーションは、今年からバレンタインデーまで点灯しておりますので、学校帰りにお楽しみ頂ければと思います。

将来に向けての展望を伺いたいのですが、イルミネーション湘南台の長期的な目標はありますか?
姉崎:僕達は正式なNPOの資格を持たずに活動しているのですが、NPOの分類で言うと中間支援組織というものに当てはまるんです。様々なNPOや関係する方々を繋ぎ、紹介や仲介をすることで何か新しい場や空間を作ろうというのが中間支援組織です。
 やはり商店街や地域の住民の方々は、普段触れ合う場がないと思うんです。僕達が活動を始める前には色々な地域団体がありまして、その人たちはその人たちで、商店街は商店街で湘南台のために何かできないかと考えていたのですが、立場が違うと目標がで同じでも、うまく連携できないところがあったんです。
 そこで、社会的に中立な立場である学生が間に入って、色々な方々の協力する場を作ったというのが始まりでした。こういう中間支援組織は特に、強力なリーダーシップが必要になると思うんです。そのとき、やはり「通常のNPOのように色がつく」というと言葉が悪いんですが、別の組織に所属する方がリーダーを務めてしまうと、どうしてもそこで生まれる繋がり自体にも、特定の偏りが出来てしまいます。だけど僕達は、学生がリーダーシップを発揮しているので、本当に地域に関わる全ての団体や全ての人々を上手に巻き込んでいけます。その点ですごく意義のある活動をしていると認識してます。
 将来的に、本当に理想とするのは、もうイルミネーション湘南台がなくなるっていうところなんです。逆説的なんですけれども、僕達が目指すのはソーシャルキャピタルの構築であって、もちろんイルミネーションを点けることも大切なんですが、色々な人たちが協力して点けるというその過程も大切にしていきたいんです。だから現状では、イルミネーション湘南台で知り合った仲間同士や団体同士で何か新しいことをやってみようというような、土台作りを提供しています。しかし、5年10年経った時に僕達がわざわざ、ソーシャルキャピタルを新しく構築する場を設けなくとも、自発的に関わる人が有機的に繋がり、そこから新しいことができるような街になればいいなと思っているんです。
 ですから、もちろんイルミネーション湘南台自体はずっと継続してやっていきたいと思っているんですけれども、理念的な意味で言えば「イルミネーション湘南台がなくなっても大丈夫なような街づくり」というのを目標としています。
街づくりを含めて、大きな視野で活動されてるということなんですね。
姉崎:そうです。街づくりというと難しく感じると思いますが、やはり一番目指しているのが1人でも多くこの街のことを好きになってほしいということなんです。本当に僕自身も、活動のモチベーションの源泉というのはそこにあって、どうしても新しい街なので最初この街に来た時、凄く無機質に感じたところがあったんです。ですが、この活動に参加してみて、自分達の気付かなかったところでこの街のために頑張っている人が沢山居ることに気付いたんです。それを僕達実行委員以外の普通の方にも知って欲しいですし、SFCの方にもどんどん知ってもらいたいと思っています。

SFCの他の団体とのコラボレーションについては、どのように考えていらっしゃいますか?
姉崎:SFCに限定はしたくはないんです。ただ、僕達もSFC生中心の団体なので、SFC内でもっと知ってもらいたいという意味では、例えば七夕祭や秋祭の方でイルミネーションを点けさせていただいていますように、SFCの中では活動はしていきたいと思います。ですが、SFCに限らずより広く色々な団体の方々と協力してこの街のために何かできないか、そんな道を模索しています。
湘南台に住むSFC以外の学生との協力もあるのでしょうか
姉崎:以前は文教大学の学生と一緒に活動したこともあるんですが、いまはSFC生メインの活動になってしまっています。学生が中心となっているというのはアピールするのですが、慶應、慶應ということはしたくないんです。というのも、慶應だけが湘南台を代表する学校ではありませんし、別にここからどこか遠くの学校に通っている方も沢山いるんです。そこで、本当にスタッフ募集という形でリクルートをかけていまして、それを見て普通の高校生が活動に興味を持ってくれて参加してくれたり、秋葉台中学校の中学生が僕達の活動の趣旨に賛同してくれて本当に僕達では思いつかないような企画を作ってくれたりとか、やはりまだまだSFC生色が強い団体ではあるんですけど、文教大学や日本大学もありますし、今後は色々な立場の人たちで、イルミが運営されていけばと思っています。
湘南台は通り過ぎるだけという学生も参加していらっしゃるのでしょうか?
姉崎:半分以上は、そうだと思います。例えばSFCが湘南台駅の西口か東口なのかということが分からなかったメンバーもたくさんいます。「活動を通して、湘南台のことを少しでも好きになって欲しい」というのが僕達が外に向けてのメッセージですが、実行委員内でも、街のことを少しでも好きになってくれればいいなぁと思っています。それに通り過ぎるだけの人がSFC生には多いと思うんですけれど、みんな何らかの形で通り過ぎるだけでも学校の最寄り駅ですから、湘南台のことをもっと良くなって欲しいと思っていると思います。だからこそ、自分達にできることは何かなと考えてくれた学生が、毎年、次から次へと参加してくれています。
いつも夜遅くまで活動していらっしゃるようですが、そのあたりいかがですか?
姉崎:特にイベントの前は本当に忙しくて、事務所に皆集まってきて、最後の人が出るのは明け方だったりとかするんです。他の団体だったらもっと昼間に動くと思うんですが、僕の考えでもあるんですけど、やはり参加している一人一人がイルミだけに居て欲しくないんです。もちろん、実際に掛け持ちしていると急に人手が欲しいと言うときに動けなくて、正直何度も大変な思いはしていきました。ですけれども、やはりイルミが社会を代表しているわけではないので、色々な場に関わってそこで得たことを湘南台という街に還元して欲しいですし、またその逆もありきだと思うんです。それでどうしても活動の中心が夜中になってしまったこともあるんですが…。
さて、ここで少し話題が変わるのですが、個人としてイルミネーション湘南台での活動はどのような経験になっているのでしょう?
川崎:僕は今回、僕らの好きな街というテーマで小学生に絵を描いてもらって、パネルを作って展示をするという企画をさせて頂いたんです。そこで小学校の先生と話をすることや、地域の人達と触れ合うということを、経験することができました。そういう経験が今までは自分には足りなくて、この団体に入ってから、実社会の場で何か活動したりということが増えて、自分が行動力を身につけられたんじゃないかなと思っています。これは先輩の話なんですが、mixiを利用している先輩の方で、湘南台に住まれている方からのコメントがあったそうです。色々な人が僕達の活動を知ってくれて、その中で自分が自分の持っている力というか、自分のできることを社会の中に出していくことができる、というのが良い経験になっていると思います。
姉崎:僕も最初に入ったきっかけというのは、多分「イルミネーションって綺麗だし、折角なんだから自分が住んでいる湘南台で何かやってみようかな」といった興味本意で入だったんだと思います。それが活動をしていく中で、代表としての経験であったりとかアカデミックな活動の意義以上に、もう凄い単純なレイヤーで、この街を自分の街だと思えるように毎年なってきて、それは川崎くんにも少しは感じていて欲しいなとは思うんですが…(笑)
では最後にSFC生に向けてメッセージを頂けますか?
姉崎:クリスマスツリーは25日(日)まで点灯していますし、イルミネーションは2月14日のバレンタインデーまでやっています。クリスマスツリーなんですけれども、オーナメント(飾り)は地元の幼稚園生を中心とした手作りになっています。飾っている柵もこの近辺の高校生が作ってくれた物で、僕達の象徴であるクリスマスツリーは、この街に関わる色々な人の協力で出来ているものです。ですので、駅に立ち寄ったときには眺めていただいて、自分もこの人と人の繋がりの輪に入っているんだなということを実感していただければいいなと思います。