今回のProject CLIPでは、徳田英幸研究室のユビキタス実証実験拠点「uPlatea」を紹介する。義塾を中心に、複数の大学・企業が参加しているプロジェクトで、有楽町のビルの一室に実験スペースを設けている。徳田研究室ではこれまでに、Δ館SSLab、τ41などの実験スペースを構築してきたが、今回有楽町に新たに拠点を置くことで、より空間的粒度の大きい実験が可能となる。いよいよ「ユビキタス」が実験室から、現実世界へと飛び出そうとしている。


 キャンパス外部の空間で実証実験を検討した際、ここ有楽町を選んだ理由として、「丸の内」「銀座」という東京の中でも魅力的なスポットに隣接しており、様々なタイプの人が訪れる場所だったからだという。一般人がわかりやすくユビキタスを体験してもらう、という目的にも合致している。また、Plateaとはラテン語で「広場」の意味で、別々のところで研究しているグループが、集まる場所としても有用だという。


 この部屋は4つの異なった空間を模擬している。プロモーションスペース、ミーティングスペース、公共スペース、リビングスペースだ。24時間、人間が起きてから寝るまで、その空間が必要なデバイス・ネットワークが揃えられている。また、将来の生活環境をイメージしているので、目に見えるコンピュータを極力排除しているほか、家具など生活空間との親和性も考慮されている。
 
 このようなことから、技術系はもちろん、デザイン系・建築系の仕事を持つ人など、IT・非IT系問わず、様々な人より関心が寄せられているという。以降は、代表的なデモンストレーションを紹介する。
 
■uPhoto

uPhotoは、操作したい機器をカメラで撮影することにより、画面上にリモコンが現れ、別の機器との連携操作を簡単に行うことが可能になるシステムだ。具体的には、機器にはそれぞれユーザーが判断しやすいアイコンが付けられており、カメラはそのアイコンの情報を認識し、機器を判別する。利用者があらかじめ撮影した別の機器との間で、ネットワークの問題を意識することなく、安全で直感的に、仮想的なネットワークを形成することができる。
 
 例えば、自宅のホームサーバの映像を、オフィスのプロジェクタに映したい時などに使える。将来的には、このサービスを、カメラ付き携帯電話やデジタルカメラにつけたい考えだ。

■uTexuture

uTextureはユビキタスの家具で、コンピュータと液晶ディスプレイ、様々なセンサーが内蔵されたパネルだ。これらを複数で自由に組み合わせて協調動作をさせることができる。パネルは自分の組み合わされた位置を自己認識し、その形状から自動的に利用できるサービスを、利用者に提供することができる。「家具は長い間進歩していない。家具をどうIT化していくかが、今後の家具メーカーのポイント」だそうだ。今回は、ミュージックプレーヤーや、お絵かきソフトを体験することができた。

ただ単に画面が複数あるだけではなく、それぞれを行き来することができる。

■その他デモ

これは、超小型センサー。3ヶ月ほどの寿命で、30秒に1度、温度や光度などの情報をビーコンで発信できる。これらを部屋などにばらまくことにより、環境ののコンテクストをより詳細に認識できるようになる。今後新宿御苑にこのセンサーを撒いて、実験を行う予定だという。

未来の照明空間。今までの照明は明るく照らすだけだったが、これらは意味や感情を持たせている。人の属性や株価、外の天気などの例があった。慶應の関係者が来たときには、慶應カラーなど。
 
■ユビキタスとは? 
 取材で、最後に徳田研が目指すユビキタスとは何か、と尋ねたところ、以下の図が示された。
 


 「H」は人間(Human)で「O」は物(Object)である。徳田研究室では、これらを相互的に結ぶ基盤を構築していくトータル的なサポートをしていくという。
 
 uPlateaは、一ヶ月に一度ほど事前予約制にて、一般公開を行っている。未来のユビキタス空間を体感したい人は、是非足を運んでみてはいかがだろうか。