SFCはどうも座る場所が少ない。学生が授業中に食事をするのは、時間がないからではなく、教室しか座る場所がないからではとさえ思えてくるほどだ。学生はどこに集まればいいのか。後編は日常生活に焦点を当てる。


■もう地面に座るしかない
 ネットを使ったコミュニケーションに長けた未来からの留学生たちは、インスタントメッセンジャーやSkypeを使って先進的なコミュニケーションを行う。今日の会議は遠隔で、そんな会話が聞こえて来るのはSFCならではだ。しかしながら、バーチャルな空間でのコミュニケーションがFace to Faceのコミュニケーションに取って代わることは出来ない。それは動画配信の講義が生の講義に取って代わらないのと同じである(講師には画面の前に学生がいるのかすらわからないのだから! )。
 実際、講義には「対人コミュニケーション」や「集団コミュニケーション」といったコミュニケーションをテーマに掲げたものや、グループワークを行うものも少なくない。SFCはバーチャルとリアル、その両面に重きを置いている。と言いたいところだが、如何せんキャンパス内ではそれを実践する場が少ないように思える。要は、学生の集まる場所がないのだ。
 学生の集まる場所と言えば、メディアセンターがある。ビスタルームやグルワルームがあり、オープンスペースはいつも賑わっている。だが、メディアセンターでは自由な飲食が出来ないという問題もあり、歓談のためにある場所とは言えない。他を挙げれば、学食や学生ラウンジがある。しかし、学食は「ちょっと集まる場所」には適していないし、ラウンジだけではキャパの問題がある。昼休み、生協で買ったパンをどこで食べればいいのか。その答えが「授業中の食事」なのかもしれない。ご存知だろうか、生協前にある椅子とテーブルは、地面に座る学生がいたために設置されたものなのだ。
■オメガ館前に机と椅子椅子を置いてみた
 2006年のハロウィンパーティーはオメガ館前でラウンジを背にしてステージが組まれた。この時を利用して、いつもはラウンジの2階に置かれている机と椅子をオメガ館前に移動させてみた。

いつもと違うオメガ館前

お昼頃には満席となった
 今までオメガ館前では立ち話をするしかなかったが、ここに机と椅子があれば食事をすることも出来る。学校はなぜそうしてくれないのか。SFC CLIP編集部の取材に対し、冨田勝環境情報学部長は「学生が集まる場所は多いほうが良いことは間違いないと思いますが、オメガ前やメディア前に椅子テーブルを置くことを躊躇する理由として、(1)景観、(2)通行の妨げ、のほかに(3)学生のマナーの悪さ(吸殻など)があるようです」と話す。
 10年以上経ってやっと改良された正面階段や、雨が降るたびに水浸しになる排水設備など、SFCはいつもデザイン重視で実用性を無視している。オメガ館前やメディアセンターの近くで地面に座っていれば、机と椅子を設置してくれるだろうか。
■いつもの学校のいつもの研究室
 学生は現在、自分の所属する研究室かクラブハウス棟など、「いつもの場所」に分散されて過ごしている。これが「自律分散協調」というものらしい。文系と理系が出会い、個性と個性が出会う場で創造されるものこそがSFCを優位付ける価値ではないのか。その出会う場がない現状で、SFCの理念が実現されるのかはなはだ疑問である。
 新たな施設を作るのは時間もお金もかかり難しい。しかし、机と椅子の設置は比較的簡単に実現しうるはずの話である。SFC生のためのキャンパス作りが行われることを望むばかりである。