■湘南台と私  
休日の朝、地域のおじさま達とテニスを楽しむことがあります。仲良くさせてもらっているご夫婦のお宅に夕食をごちそうになる日もあります。冬も深まると、鍋を囲んで、夜遅くまで、地域の方々と湘南台の未来について語り合う日もあります。湘南台は、ただ大学4年間を過ごすだけの街だと思っていました。それが、今では私の生活の一部になっています。この地域には、この街の将来を真剣に考える人がいて、熱く夢を語ることができる人がたくさんいます。地域の方々の志の高さに感動した日のことを、今もよく覚えています。こうした地域の人との出会いが、私がこの街に自ら関りを求めるようになったきっかけであったと思います。

■活動内容
 「藤沢市民まつり湘南台ファンタジア」や「湘南藤沢まちかど音楽祭」などという行政の一環事業に関わり、当日そのステージで司会などをやっています。「夢から始める文化創造」というコンセプトのもと、8年前から始まった湘南台ファンタジアの司会は、昨年で3回目でした。藤沢市のメインイベントのひとつで、パレードやステージ・フリーマーケット・移動動物園・抽選会などを、毎年10月の終わりに2日間かけて行っています。このお祭りの司会者とうのは名だけで、その他にタイムキーパーから出演者対応、カンペ出しといった全てのステージ運営をなぜかまかされており、2日間は怒涛のごとく過ぎ去り、最終日の夜には、ヘトヘトになっています。しかし、こうした疲れも、祭りが終わった円行公園で、ファンタジア実行委員の地域の方々と、ひとつ屋根の下ならぬ、テントの下で開く小さな打ち上げ会が、すべて癒してくれます。祭り中は毅然とした態度で交通規制を行っていたおじさまが、やんわりとした顔つきになり、お酒がすすむ時間です。会議や実行委員会とはちがった、和やかな雰囲気の中で、祭りの余韻にひたります。この他にも、商店街の納涼祭で司会をやったり、地域の運動会に借り出されたり、極寒の湘南台公園にて開催されたお祭りで、コートをまくりあげて餅つきをしたりしてしまうのも私です。「遊びに来て」と言われて行ったはずが、気がついたら、お客さんのいないカラオケ大会で、それでも歌う応募者のために、寒空の下、前奏に合わせて演歌の曲紹介をしていた時は「私は何をしているのだろう。」とさすがに一瞬、迷いが生まれましたが、どれも基本的に楽しんでやっています。こうした地域の方々との小さなつながりの中から、湘南台が抱えている問題や、逆に潜在している湘南台の可能性などを学ぶことができ、湘南台の街づくりについて真剣に考えるようになりました。知り合った地域の方々とは、行政へ働きかけたり、小学校・中学校・高校を訪問したりと、より良い湘南台を目指し、地道な活動を続けています。ちなみに、現在、湘南台公園に野外ステージを設置することを地域の方々と企画しています。

■湘南台ビジョン "住む街から学ぶ街へ、そして創る街へ"
 学生が地域と協働して何かアクションを起こす。この関係は、学生が研究フィールドとして地域を有効利用できると同時に、地域にとっても、学生と協働で事業を進めることで、地域に学生の新しいアイデアや活気を導入できるという、双方のメリットが考えられてきました。湘南台は、学生が在学中の4年間、ただ住むためだけの街ではなく、そこで実際にアクションを起こすことができ、学べる街であると思います。学べる環境が湘南台にはあり、SFCができて以来、学生が行う活動を地域・行政が支援するという体制が、確立されてきたように思えます。さらなる街の進化のため、今後は、行政の事業を学生が支援する日が来ればと私は思います。自分たちのやってみたいことを実行するフィールドワークの現場として街を捉えるだけで終わらず、それらの経験を活かし、もっと積極的にそして長期的な視野で湘南台の街づくりに目を向ける、といったような学生や団体がでてきたらおもしろいのではないかと思います。学生が「住む街」から「学ぶ街」へ、そしていつの日か「創る街」へ、これが私の描く湘南台ビジョンです。
文章:錦見綾 / 政策メディア1年