人の良いところを見つけるのがSFCの良いところ。企画されるイベントも、コラボレーションを掲げたものが多い。そして、今年はSFCに新たなイベント「湘南ダイナミック」が誕生した。その企画者の立場からSFCらしさを語ってもらった。


「強みを集めて思いを形にする」大辻健太郎さん(総4)

大辻健太郎さん

【水滸伝のごとく】
 11月16日(日)θ館に一つのつながりが生まれました。様々なジャンルで活動するSFCのサークルと湘南地域の団体が集まり一つのストーリーを作り上げた舞台「湘南ダイナミック」。(詳しくはウェブサイトをご覧下さい)
舞台を作り上げたメンバーのバックグラウンドは皆バラバラでした。舞台経験のある者、看護経験のある者、力自慢の人間、客観的に物事を見ることのできる者、高校生など、この舞台がなければ絶対に会うことのなかった者達が、この舞台に集ったのです。
 終わってみて感じたのですが、この状況を中国四大奇書の一つである「水滸伝」に例えられないでしょうか。
 108人の豪傑が一つの場所に集い悪徳官吏を打倒し国を救う事を目指そうと動くシーンがあります。この108人も又、様々な理由、バックグラウンドを持って集ったのです。
 私はこの部分にSFCらしさを感じます。ご存知の通り、SFCには様々学問が存在します。建築、地域政策、教育、文学、バイオ、それぞれの興味にあわせて学問を選択できます。もちろん一人ひとりの長所も変わってきます。
 違ったフィールドで経験を積み、その得た経験を発揮できる場として皆が光っていました。

湘南ダイナミック

【一人の子供が自分のやりたいことを教えてくれた。】
 4年前の春、私は18年間育ってきた広島から飛び出し上京しました。何がやりたいのかよくわからず、東京にはやりたいことがあると胸躍らせて飛び出したのですが、見出すことができないでいました。
 既にやりたいことに邁進する友達が羨ましかったです。SFCはやりたいことに向かってどっぷりとはまる人が多い印象を持っていたため焦りは人一倍感じました。
 これだ!と思うことが見つからないまま3年生の後半を迎えました。2007年10月に行われたSFCの秋祭で一人の子供がぼそっと言った言葉が後の私を大きく動かしてくれることになります。
「この踊り、僕もやってみたい。」
 大学近くの地域に住む子供と保護者でしょうか。目の前でかっこよく沖縄民謡を踊る大学生を前に子供は釘付けになっていました。食い入るように演舞を見る子供が一言つぶやいたのです。
 しかし、すぐに隣にいた母親が「でも、どこで練習できるの? お勉強があるから時間もないよね。」と子供の声を掻き消しました。
 一つの疑問が生まれました。この会話はどこかがおかしい。子供がやりたいことを見出したのにできないという状況が私にはどこか納得いかなかったのです。
 「子供達が色んなことを体験できる、そんな環境を作りたい。」
 体に電気が走り、頭で考える間もなく体が動いていました。慣れない企画書を書いて、私はエイサーサークルにお願いをして、地域でエイサー教室を一度行って欲しいと打診をして、結果的に喜んで了承をもらい、地域の方の協力の下、寒い師走の体育館でエイサー教室を実施しました。
 エイサーを楽しむ子供達を見て、10年前の自分の姿を思い返していました。
 小学生の時、純粋にやりたいと思ったことを学校の先生は進んでやらせてくれました。スピーチコンテストの時に近所の皆さんや先生が応援に駆けつけたりしてくれたりもしました。当時はそれに何の意識も働いていなかったのですが、10年後、太鼓を楽しそうに叩く子供達を見て、「私は地域に支えられて育ったのだ。」と実感が沸いてきました。
【強みを集めて思いを形にする】
 湘南ダイナミックは、私一人では絶対に作り出せませんでした。むしろ私の及ぼした力は一粒の砂程の小さいものに感じます。そのくらい多くの人に支えられながら、一緒に舞台を作らせてもらったという感覚が強いです。
 子供達が色んな体験ができるよう、少しでも貢献したい。そして自分の地域で育ったことにいつか誇りを持ってもらいたい。
 自分が唯一もっていたといえる強みは、その思いだけです。その思いを形にしてくれたのは、紛れもない、私の大切な仲間と地域のみなさんなのです。
 私は演技力もなければ、舞台を統率したことなど一度もありません。かけた迷惑は計り知れません。しかし、この思いだけは皆に伝えたいと思ってやってきました。この場を借りて皆さんに感謝の意を伝えたいと思います。本当にありがとうございます。
 SFCにはそれぞれの強みを集めて思いを形にできる力があると感じます。社会に飛び出しても、ここで学んだことを忘れずに頑張っていこうと思います。